設楽のり子の生保営業暴露日記

第二部 第12話 二人

二人設楽のり子の生保営業暴露日記
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第二部 第12話 二人

「あ、のり子ちゃん、久しぶり」

「どうしたの? 最近会社来てないじゃない」

「あ、私会社もう辞めたよ」

「──え? 聞いてないよ」

「やっぱりね~。とりあえず、お茶しよっか」

 

<喫茶店にて>

「どうしたの? いきなり辞めちゃうなんて」

「私、もう辞めて1ヶ月になるよ」

「──え?」

「後、前藤さんも辞めたよ。あとは──」

数人の名前が畑口さんの口から次々と出てきた。そういえば最近見かけないなぁ、とは思っていたのだが……

「誰も辞めたなんて話、聞いてないよ」

「だろうねぇ。そんなもんだよ、あそこは」

……よく考えたらその通りだという事に気付いた。通常の会社だと誰かが退職する際、お別れ会等開いたりしたりするものだが、営業所では少なくとも私が知る範囲では一切そういう事は行われていない。

「営業部長の班はどうだったの?」

「あぁ、あの人? 口ばっかだよ。一応言われた通り、設計書をうって説明して、とやる事やって結果がでなかったのね。そしたら何っていったと思う? 「お前の話法が悪い」だって。で、どうしたらいいか聞いたら「自分で考えろ」だよ。やってられなかったわよ! で、彼がいた前の営業所の子に聞いたのね。そしたら案の定、かなりみんなに無理させてた、ってさ。のり子ちゃんも早いとこ辞めた方がいいよ」

……何かがはじけた気がした。畑口さんに将来の自分を見ている気がした。彼女は元々私よりも成績を取っていた。早くから小橋リーダーに見初められて……結果は……

「あ、私は運よくいい時期に辞めたからマイナスにならなかったけど、他の子は辞めて後からマイナス請求がきたみたいだから、のり子ちゃんも気を付けてね」

──?! マイナス? どういう事?

 マイナス・控除について実際に見に沁みて理解するのは、翌月の事であった。

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