第二部 第11話 誰が為に…
重大月は基本的にノルマがいつもの倍となります。この月に保険に入って何かメリットはあるかというと──ないんですよね。せいぜい御中元等ちょっとした物が貰えるだけ。保険の値段は変わりません。何故7月が重大月かというと──うちの創立記念月だから、だそうです。
コンサルティング? 普段ですらそんな事しないので、皆同じモデルプランの設計書です。で、唯一の設計といったらこんな感じです。
『保険料、いくらだったら出る? 1万でどう、ん~、じゃぁ9500円!』
えぇ、バナナの叩き売り状態みたいなものです。必要性等へったくれもないです。
当時は「会社の主力商品モデルパターン」ばかり販売促進していました。理由は単純です。同じ保険料で一番数字・件数になったからです。
支社にノルマの数字があり、各営業所にノルマの数字があり、各チームにノルマ があり、そして私達個人にノルマがかかってくる。
『営業所一丸になって目標へ向かってGO!』
などと言っているが、別に営業所がノルマを達成したからといって、個々の給料 が変わるわけではないので、訴求力が弱いです。かといって、成績をあげないと給料があがらないので、数字はあげなくてはならない訳です。
支社の都合、営業所の都合、そして私達だけの都合で重大月というのは進行していきます。
誰が為に保険を売っているのか……
会社の為?
営業所の為?
給料の為?
プライドの為?
お客さんの為?
きっと、現場の人にしか分からないでしょうね。上の人なんて、数字だけ見て「おい! 数字があがってないぞ!」と言っているだけでしょうから……
な~んて言っていても白紙分は探さなきゃ……誰か5000万に入ってくれる人、いないかな?
……あれ? 何かが違う……
──その時、携帯に着信が入った。畑口さんからだった。
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