#1 ウエイトレスと占い師
一人の少女と一人の謎の中年男の出会い、それは映画やドラマの様な運命的な出会い方でもなく、ごく平凡なものであった。いや、少しだけ変わっていたかもしれないが……
──昼下がりのとある人気のない喫茶店
「幸せの形は一つではありません。きっとあなたに未来は微笑みますよ」
「──うぅ、ありがとうございます、先生……またお願いします」
──5分後
「カチャカチャカチャ……フゥ~~~……」(タバコを吸いながらパソコンを弄っている図)
「あの~、ちょっといいですか?」
「(ビクッ!) は、はい?」
「あ、いきなり声掛けてすいません」
「あ、あぁ……ウエイトレスさんか。どうしました? あ、やはり不味かったですかね、ここで占いしてたら。コーヒー2杯で2時間もいましたし……」
「あ、やっぱり! 占いされていたんですね? そのカードって何ですか?」
「ん? タロットカードですよ。これ使って、タロット占いやってたんです」
「へぇ~~~、占い師さん、初めて見ました。当たるんです?」
「ま、他の占い師よりは、かな?」
「じゃ、私を占って下さい♪ コーヒー代サービスしますので♬」
「えっと……俺の鑑定料、それじゃ足りないけど……」
「初回サービスって事でお願いします♪」
「じゃ──触りだけ、ね。ただ、接客しなくて大丈夫?」
「あ、大丈夫です♪ この時間はまずお客さん来ないですから♬」
「あ、そうなんだ……じゃ、早速やろうか」
「はい、お願いします♪」
「じゃ、占いをする前に、ちょっと質問するね」
「は~い」
「まず、ウエイトレスさんの名前と年齢教えて」
「私、幸せと書いてユキって言います、高校3年生です♪」
「──! こ、高校生? ……平日じゃん、今日」
「あ、期末試験の時期なので学校は午前中だけなんです♪ ほら、ちゃんと勉強道具も持って来てますし」
「あ、なるほど。──で、何を占えばいいかな?」
「あ、え~っと……私について♪」
「──ん? どういう事?」
「私について、当てて下さいって事です♪ 占い師さんだったら分かるかな~って思いまして♬」
「……そう来たか。ま、いいでしょう。じゃ、両手をテーブルの上に乗せて、俺がいいって言うまで目を瞑って」
「??? こうですか?」
「あ、それでいいよ。──じゃ、ユキさんの心の中、視ていくね」
──30秒後
「──はい、もう目を開けていいよ」
「はーい♪」
「じゃ、カードを一枚引いて、それを俺に見せて」
「はーい♪ んしょ……これでいいですか?」
「ん、いいよ。──吊るされた男、か……なるほど、なるほど、そっか~……」
「……何か分かりました?」
「では、ズバリと。……ユキさん、周りの人には言えない事、しているね?」
「──!」
「ちょっと信じがたいけど──援助交際か風俗か……」
「──!!」
「それでもって、高校は異様に進学校でそこでもかなりの優等生──かな」
「ど……どうして……?」
「ん? その反応は──ズバリだったかな?」
「私と……会った事あります?」
「ユキさんは俺を見た事ある? 当然、初対面だよ」
「……私の裏の顔、ズバリ当てた人、初めて……です」
「ま、占い師ですから」
「占いってそんな事分かるんですか? ちょ、ちょっと怖いです」
「そうだよ、何でも視えるよ。──っていうのは嘘で、これは単なるプロファイリングかな」
「???」
「まず、勉強道具。ぱっと見だけど、薄い参考書にチャート式だよね。その参考書を使っている高校、この街だと●●高か●▲高しかない筈、かつ双方ともかなりの進学校だから、そこは確定出来る、と」
「……!」
「更に言うなら、試験中にバイト入れるくらいだから、余裕あるかバカの二択。バカならそもそも勉強道具持ってこない筈だから、そこでも優等生である可能性が高い、と」
「……!」
「で、その腕時計、ティファニーだよね。確かそのタイプだと値段は50万くらいだったかな。その持ち物に対して、服はノーブランドもの、ちょっと不自然だな、と」
「……!」
「仮に家が金持ちの場合、衣服やバッグもある程度のモノで揃える筈だけど、そうじゃない。という事は、自分で買ったものである事が濃厚。じゃ、その高価なものをその年で買えるにはどんな仕事か? と推測していくと、ね」
「……!」
「更に言うなら、腕時計なら隠しやすいしから──かな? 最悪見つかっても貰ったとか中古で買ったとかごまかし効くし。ただ、見る人からみれば分かるけどね。それ、確か去年くらい発売のタイプだし。ま、そこまで分かる人はレアだと思うけど、一応気を付けた方がいいかもね。俺みたいに読む人、いるかもしれないから」
「……占い師って皆、そんな観察力と知識持ってるんですか?」
「さぁ……他の占い師知らないし、完全オリジナルかな? そもそも俺、タロットなんぞ分からんし、ね」
「──え?」
「最初に今回みたいに一発かますと、大抵の人は異様に信用するのね、凄い占い師だ~って。そうしたら、後は言い方悪いけど、テキトーに相談相手になってれば、勝手に満足してくれるよ、と。──って、何ネタバラシしてるんだ、俺……」
「す、凄いです! 思わず感動しちゃいました! これだけの会話で頭が良い──いえ、頭がキレるっていうんでしょうか、それを雄弁に語るって尋常じゃないです。おじさん、何者なんですか?」
「ん? 単なるその日暮らしのフリーの占い師だよ。一応、名刺渡しておこうか、はい」
「ありがとうございます。……上杉さんですね、覚えておきます」
「じゃ、また会う機会あったら、ね」
「はい♪」
補足?
いきなり新しいカテゴリ作ってこんな話を掲載して、たくみ氏、狂った? と思う人、続出かもしれませんね笑
実はこの話、某小説投稿サイトで名を隠して掲載していたものです。が、この作品はともかく、もう1つの作品があまりにもダークだったが為か、いきなりアカウント停止処分を喰らってしまったという・・・
本業と全く関係ない話かつ、本業に支障が出る可能性すらあるのでこのまま闇に葬ろうかとも思いましたが、埋もれさせるには勿体ないかな、という事でupする事にしました。
ま・・・出だしからは「え?何でアカウント停止処分になるの、これで?」と思う方も多いでしょうが、ラストを読み終えた後は「その処分は妥当だったんじゃね?」と誰もが思うかも。
ちなみに・・・
これの続きみたいなものですね。たくみの営業暴露日記を読んでいない方は、
ここらから読むと「はえ~」となるかも。
この作品は、とある作品の序章的内容で19話程度で終わるショートものです。既にラストまで書き切っているので、更新は早いです。1週間ちょいでラストまでいくかな? ちょっと変わった現代小説を読みたい方にはうってつけでしょう。一部の人に「これは赤川次郎の探偵物語に通ずるものがある傑作だ!」なんて評価を受けていたりするくらいなので、それなりに楽しめるかと。
最後に、この話は「異様にリアルなフィクションもの」としてお読みください。間違ってもノンフィクションじゃないですよ~。
コメント