たくみの営業暴露日記

たくみの営業暴露日記 Last Epilogue #1 運命の少女(1)

#1 運命の少女(1)たくみの営業暴露日記
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#1 運命の少女(1)

 決死のダイブをする事を決め、この世で過ごす最後の3日間が始まった。限られた時間を有意義にかみしめて過ごす……事はなく、日中はネットカフェで時間を潰し、夜22時にいつもの路上へ出向くというここ最近のライフスタイルと変わらない何とも自堕落な時間を加藤は過ごしていた。

 いつもの様に例の路上に座り込み、心の中で九重と会話していると──

■10月中旬、死を決めた翌日の夜中、例の路上にて

「おじさん……わ、私を……か、買わない?」

「……いい度胸してるね。こんな危ない男に声かけるなんて。俺、失うモノ何もないから……滅茶苦茶しちゃうよ?」

「(ビクッ)……い、いいよ……」

「フッ……そんな怯えて……慣れない事はやめときなって。酷い目にあってからじゃ遅いから」

「どうなっても私は構わないから! 滅茶苦茶にしてよ!」

「何か自暴自棄になってるねぇ。……ま、いいや。んじゃ、買おうか。……いくら?」

「に、2万……」

「ふ~ん、そんなもんでいいんだ。じゃ……100回分買おうかな。はい、これでいい?」

「──え?」

「3ヶ月くらい監禁して滅茶滅茶にしてあげるから。……じゃ、いこっか」(グイッ)

「──嫌ッ!」

「……っていう目に合っても知らないよ? 世の中、ホント危ない変態って多いし。これに懲りたら、こういう事はもうやめな。2万はタクシー代って事であげるから」

「…………」

 夜遅くにいきなり声を掛けてきた援交少女をちょっと脅して軽くあしらっただけ……こんな出来事から全てが始まった。

■翌日(先日と似た様な時間)

「おじさん、私を買わない?」

「……懲りないねぇ。ホント、酷い目に合わせちゃうよ?」

「そんな事、出来ない癖に……」

「大人の男を信用しちゃダメだって……昨日は今日の為の布石だって分からない? 最初は甘い顔して──」

「そんな事する人なら、こんな地べたに座ってないで身なりもちゃんとしてるよね。そうしてた方が騙しやすいし」

「……中々聡明だねぇ。で、何が目的?」

「え? だから、私を買ってくれないかな~って♪」

「……他の人に買って貰えばいいじゃん……」

「あ、昨日言ってたじゃないですか~、危ない人が多いから気を付けなって。だから、どうせだったら優しそうで知ってる人のがいいかな~って♪」

「……知り合いって、昨日会っただけじゃん。で、俺が優しそう? ま、いいけど……何か初めてこういう事する様な口ぶりだね」

「え? 初めてですよ? こういう事するの」

「……そもそも、君、いくつよ? 何かヤバそうな年齢に見えるけど」

「え? 15歳ですよ?」

「──?! じゅ、15歳って……買う筈ないじゃん! モロ犯罪だし!」

「え? 失うもの何もないって言ってたじゃないですか。だったら良くありません?」

「……何かよく覚えてるし。とにかく! ホント危ない目にあってからじゃ遅いから! またタクシー代あげるから、帰りなよ」

「……は~い」

 2日連続で声を掛けてきた15歳の援交少女……この時ですら「世の中、荒んでるなぁ……」と感じた程度であった。

■さらに翌日(ダイブ決行当日)

「お・じ・さん♪ 私を買わない?」

「……この非行少女が。こんな時間にこんな場所に来たら危ないって何度言ったら分かるかね……俺、今日お酒飲んでるから、理性なくしてホントに襲っちゃうよ?」

「www 私にもく~ださい♪」

「……安心しきってるし……ほれ」

「キャー、ありがとうございます♪ ゴクッゴクッ……ぷはぁ~、意外に美味しいですね。あ、もう1本く~ださい♡」

「……これ、意外に度数強いから、酔っぱらうよ?」

「い~の。じゃ、カンパーイ♪ ゴクッゴクッ……」

「……何かこの現場を押さえられただけで、俺、逮捕される様な──」

「い~じゃないですか~。失うもの、何もないんですよね~? ここに住んでるみたいだしw」

「いや……別にここに住んでる訳じゃない──いや、別に帰る家がある訳じゃないから、似た様なものか」

「www 私と同じだ~」

「ん? 家出中なの? 親と喧嘩でもした?」

「い~じゃないですか~、何でも。あ、もう1本いいですか~?」

「……異様にハイピッチだし。この年で飲み慣れてるし……」

「え~? お酒飲んだの初めてですよ~。意外にお酒って美味しいですね~。あ~、なんか頭がクラクラする~」

「……何か凄いいけない事してる気になってきた……俺は一体何をやっているんだろう……」

「気のせいですよ~。キャハハハハ──」

「……完全に酔っぱらってるし」

──1時間後

「──れね、こんなことあったんれすよ~。聞いてますか~」

「あ~、はいはい、聞いてますよ。その話、3回目だし」

「キャハハハハ──」

「……俺はホント一体何をやってるんだ……」

──さらに1時間後

「おじさ~ん、気持ち悪~い……オェッ!」

「あぁ、もう! やっぱり! 背中摩ってあげるから、思いっきり吐きな」

「……オェェェェ……」

「ちょっと待ってて。ポカリそこで買ってくるから。──はい、これ飲んで」

「(ゴクッ……ゴクッ……)ハァハァハァ……うぅ、頭がズキズキ痛い~、死んじゃう~……助けて~……」

「……単なる二日酔いだから。お酒飲み過ぎたら誰でもそうなるから……」

「うぅぅ……横になって寝たい~……」

「ほら、またタクシー代あげるから、これで家に帰りなよ」

「家は絶対イヤだ~」

「……じゃ、そこのホテルの部屋とってあげるから。そこでゆっくり寝なよ」

「キャー、ありがとうございます~……オェ……」

「もう! ほら、俺が連れて行ってあげるから。ちゃんと立って歩いて」

……気が付いたらダイブ決行予定日は謎の非行少女の介抱にすり替わっていた。加藤の運命はこの少女によって劇的に変わっていく事になる。この時は当然、それに気付いていなかったが。

補足?

正直補足が必要かどうか不明ですが、少しだけ。

飛び降り自殺や投身自殺、ちょくちょくメディアを賑わせますが、その背景って人それぞれだろうな、と。

特に躊躇なくフッと逝けてしまう人、自身を奮い立たせて気合で逝く人・・・前者の心境になった事は分からんですが、後者の心境は痛い程分かります。多分ですが、第二次世界大戦時の神風特攻隊に挑む人達の心境はこんな感じだったのだろうな~と。

単純に怖いんですよね、、ビルの屋上の柵を超えて真下をみたら。実際は途中で意識途切れて痛みも何も感じないとか言いますが、ホンマかいな、と。。

「よし、後追い自殺するぞ~」とかなりの決心で「色々と整理した後、少し(?)の現金のみという身軽さ」で現場まで来たものの、中々実行できず・・・あ~だこ~だ心の中で覚悟を決めようと現場で感情を高めようとしていたら~という話です。

今ではスマホの普及・ネカフェの24時間化等の為にこういうケースは限りなく少ないかな? が、一昔前は普通にある程度の街には夜遅くに若い子がフラフラしていました。皆さんも一度くらいはこんな風に声をかけられた事、あります・・・よね?

次回は・・・自分が今までの人生で犯したある意味一番の罪なできごとの話。

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