第6話:見えない苦労
履き替え
「あ、次の人、ストッキングとパンツねー」
「はーい。……んしょ、うんーしょ」(真横でスカート捲り上げ、パンツとストッキング装着する図)
「……ふぅ──」(隣で生着替え中にも関わらず、我関せずタバコ吸いながらPCとにらめっこの図)
「シュッシュー、わっクサッ!」(念入りに股間部分と足にスプレーしてその匂いにしかめっ面する図)
「フッ……」(いつもの光景に、思わず鼻で笑う図)
「ふー、用意出来ましたので、行ってきまーす!」
──5分後──
「ただいまーー。ついでに唾も売ってきましたー。はい、お願いしまーす」(貰ってきたお金を差し出す図)
「お! お疲れー。(スッ)」(伝票にお金を挟む図)
「あ、また来たよ。今度はストッキングだけだって」
「えーーー、またですかー、りょーかい。……んしょ、うんーしょ」
「……あ、ごめん。パンツだけだって」
「うぅ、了解」(速攻でストッキング脱ぐ図)
「いっその事、ストッキング履いてったら?」
「いーえ、パンツ売った後、ノーパンでストッキング履かなくちゃいけないじゃないですか。 それじゃ変態ですよ!」
「ま、確かに。って、先日パンツ在庫なくなってその恰好で過ごしてたじゃん」
「えぇ……あの経験で分かった事は、私は露出の趣味を持ち合わせていないと分かった事です。二度とあんな恥ずかしい思いしたくないです!」
「……なるほど、了解」
「じゃ、行ってきまーす」
──お互い恥も外見もないカップルシートでのごく当たり前の風景です、これが。
隣に……?
「あ、次の人来たって。カップルシートとって、92-93の部屋だって」
「──! それ、隣ですよ!!」
「──!! (息を潜めるように小さな声で)じゃ、気をつけて……」
「(囁き声で)行ってきまーす」
──20分後──
「ガチャッ(囁き声で)ただいまー」
「(同じく囁き声で)お疲れ様、大丈夫だった?」
「(囁き声)はい。次はどうなってますか?」
「(囁き声)ちょっと時間空いて1時間後かな。隣、まだいる?」
「(ドアに耳あてて)今ゴソゴソしてますのでもう帰ると思います」
──5分後──
ガチャッ
「(音が鳴って数秒後、そーっとドアを開け覗きこみ)今出てきましたー!」
「ふぅーーー、なんか不思議な緊張感漂ったよ」
「バレたらどうなったでしょうね?」
「んーーー、お父さんという事にしとく? 娘がお世話になってます、とかいって」
「娘にパンツ売らせたりオテテさせる父親、イヤダー!」
「wwwwww」
「wwwwww」
──基本カップルシートでやっていたのでお客さんの近くというケースは少なかったですが、中にはわざわざカップルシートを取って待機しているお客さんも。隣にお客さんがいたケースは、これを含めて3回程ありました。その度、この様にドキドキを経験していたものです。
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