#12 異端児同士
「取りあえず、例の募集掲示板を使ってフェチさんを募集するのは分かったのですが……たくみさん、女の子の文章って書けます? 役割分担として、たくみさんにアポ取り任せたいんですけど」
「ん? 多分大丈夫。チャットレディもやった事あるし」
「……は?」
「いや~、悪徳サイトとかでやり取りするだけでアホみたいにポイント消費する所とかってあるじゃん? こういう所って実際に会うまでには至らず、みんなサクラでしょ? 実は儲かるんじゃないかな~って思ってやった事ある訳」
「……ま、もう驚きませんけどね。大分、たくみさんの性質が分かってきました」
「ま、そこは潰れちゃった訳だけど、一応ログは残してあるよ。ほら、見てみて」
「──! こ、これは……まさかの設定資料?」
「そ! いわゆるペルソナ戦略ってヤツだね。出来るだけ細かくキャラ設定して、性格も言葉遣いも言い回しも完璧に、ね」
「ぅわぁ……この文とか、誰がみても女の子が書いたとしか思えないですよ。ここまで徹底してやるのは、ある意味凄いです!」
「っと、そんな反応が返ってくるとは予想外だ。ネカマおじさん、キモイw という笑い話のつもりだったから、さ」
「いえ、どんな事でも本気で真剣に取り組んで努力する人って想像以上に少ないですから、尊敬に値します!」
「あ、ありがと。……ま、どんな事でも全力で取り組むからこそ面白くもあり、成果も出る訳だからね。ユキさんの援ビジネス案だって、本気で取り組んだ結果でしょ?」
「そう! その通りです! 真剣に本気で取り組むからこそ、面白いんですよね! スポーツや勉強だけが評価されて、こういう事は評価されないで批判されるのはおかしいと思いません? 私にとってはどちらも同じに思うのですけどね」
「ま、それが世の中だからね。例えば悪徳商法というだけで悪と決めつけて何から何まで否定するのは俺はおかしいと思う訳。中には凄い斬新なアイデアや手法だってある訳で、良いものは良いと認めて学んで取り組む姿勢って必要だと思うんだよね」
「ホントですよね! そんなたくみさんを見込んで、ちょっと相談にのって下さい」
「ん? いいよ」
「私の場合、あるアプリに募集かけてやってるのですが、実際に来てくれるのはやり取りした人の10%くらいですので、見えない労力も大きいんです。どうやったら効率よくアポ取れると思います? こないだなんて250人にアプローチかけて来たのはたったの8人だったんですよ」
「えっと、やり取りちょっと見せて。──ん~、俺だったらかくかくしかじか、こんな感じにするかな。後、単純にスマホでやり取りするよりPCでやった方が例え同じ量やるにも作業時間は1/3には出来るかな」
「なるほど~。後、ネカフェに誘導するまでで失敗する事も多いのですが、何か改善点ってあります?」
「これは実際やってみないと何とも言えないけど、最初からネカフェに来てくれ! ではなく、駅前とかコンビニ前とか普通の待ち合わせ場所を設定して、当日何か理由付けて結果的にネカフェに来てもらう様にとかすればある程度改善するかな?」
「なるほど~。ではこのケースの場合は────」
──決して人から褒められる事はない、むしろ批判される事でもやるからにはとことん全力でやるという姿勢の異端の2人は、さらに計画を加速させていく。
補足?
この時の事はよく覚えています。ちょっとこじゃれたカフェで、数時間も熱心に話し込んでいましたかね。傍から見れば「やる気のある新人に熱心に指導する上司」という感じである意味微笑ましく見えていた事でしょう。……内容は決して褒められる事ではないですけどね。
ユキについて。これは別物語で詳しく書いていますが、ぶっちゃけこの時点で普通の営業の世界に飛び込んだとして、既に全国レベルになれる器でした。異様に研究熱心で、かつトライアンドエラーの手間を嫌がらず、足を止める事をせずにひたすら動ける……目的の為に外見を磨き、更には礼儀作法や言葉遣いまで身に着けていたりとか……
年齢関係なく、素直に尊敬していました、この点に関しては。
自分について。これはすっかり後回しになっている「独立後の軌跡」に詳しく書く予定ですが、ホント何でも興味ある事はやりました。アダルトネタ(HP運営やチャットレディ)に関しては畑口の影響が大きかったです。(どこまで正しいか分からんですが、最先端はアダルトに集まる、そこから学ぶべき事は非常に多いよ、と)
で、あまりに色々やっているので「たくみさん、本業はちゃんとやってるの?」とツッコミを受けそうですが、自分の場合「仕事が趣味」みたいになっているので……(通常の人が息抜きしている時間を他事の仕事している、という感覚。他事を含めると、年がら年中仕事している様なものとも)
とまぁ、ごちゃごちゃ書いていますが、取りあえず「何事にも他の人がドン引きするくらい真剣に取り組む」という点で、自分とユキは馬があったよ~という感じですかね。
あ、こんな事書いていますが、繰り返しこの話はフィクションですので~。
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