#2 ウエイトレスと現場仕事のおじさん
■1ヶ月後の8月某日
──カランコロン♪
「いらっしゃいま……せ? ──あれ? 上杉……さん?」
「あ、こないだはど~もね。いや~、暑い! 取りあえずお冷2杯持って来て。その後、ホットね」
「……な、何やってるんですか? 作業服着て……」
「ん? 今日はたまたま近くで現場仕事あったからね。その帰りにちょっと寄ってみただけよ」
「い、いや……何で現場仕事してるんですか? 占い師じゃなかったんですか?」
「あ、その日暮らしっていったじゃん。占いだけじゃ食えないから」
「……凄い苦労されているんですね。あれだけの才能──というか頭のキレがあっても、やはり占い師だけじゃ食べられないんですか……私の友達や知り合い、紹介しましょうか?」
「お! 優しいねぇ~。ありがと、気持ちだけ貰っておくよ」
「──え?」
「あ、いや……ん~、ま、いっか。仮に俺がホントに占いだけで食べていきたいと思っているなら、その話は喜んで乗るけど、実際そうじゃないからね」
「──え??」
「趣味の一環というか本業の為の訓練というか、ね。色んな人を観察する事が意外に大切で、ね。それで、現場仕事もやってるのさ」
「……全く話が見えません」
「ま、色んな人の生態観察とでもいえばいいのかな? 言い方悪いけど、現場までいかないと、ああいう人達に触れ合う機会ないし、思考も読めないから──あ、ちょっと待って、電話だ」
「……」
「もしも~し、はい、森岡です。えぇ、先ほど現場出てます。……えぇ……えぇ……ではお疲れ様でした、失礼しま~す。──と、ごめん、何の話だったっけ?」
「えっと……上杉さんじゃなかったでしたっけ? 今、森岡って……」
「あぁ、上杉は占いの時の名前、森岡は現場の時の名前ね」
「よく分からないんですが、なんで名前を使い分けているんですか?」
「まぁ、本業の兼ね合いでこんな事してるのがバレちゃいけないからね」
「……おじさん、ホント何者なんですか?」
「ん? 単なるその日暮らしのフリーの占い師兼現場仕事しているおじさんに過ぎないよ。──ふぅ、ごちそうさま。じゃ、また」
「は、はい……」
補足?
自分を知っている人ならご存知かと思いますが、自分は本業以外にホント色んな事やってます。今回書いた現場仕事も、その一つですね。
物語では如何にもカッコいい事言ってますが、一番の理由は「自分の事を誰も知らない世界で普通に生きれるか知りたかった」からですね。
もしFPで食べていけなくなったら果たして自分は他の仕事ができるのだろうか、なんて思った時があり、な~んか不安でしょうがなくなった時があったんですよね。(ま、20年も今の形で食べていけているので、こんな事考えなくてもいいかもですが、仕事のリスクヘッジは常にしておきたいな、と)
なら、試しにやってみるか! という事でやり始めたのがきっかけでした。
「いやいや、営業やればいいじゃん! 何で営業じゃないのさ!」
というツッコミがありそうですが、本業に支障がでない週1-2(かつ、本業が忙しい時は休める)という条件だと、営業はNGですからね。(流石にこの条件で雇ってくれるところは皆無であろう)
最初は苦労しましたよ。まず、作業服に抵抗ありました。何かみじめな気分になるというか、他の人の視線が気になるというか。次、年下の監督等にどやされるとかも。俺、何やってるんだ? と何度思った事か。他には極端な話ですが、敬語を喋ったらなめられる、タメ語で怒鳴るのがデフォみたいな環境とか笑 色々対策練りましたよ。話題作りの為にパチンコやパチスロ雑誌読んだり、スマホゲーを触ってみたり、今まで読まなかった雑誌・スポーツ紙読んだりetc…
が、慣れとは恐ろしいもので、気が付いたら休憩所でタバコ吸いながら現場の人達とぎゃははと普通に混じっている自分がいたという。。。(最悪、FP業を廃業してもこれで食べていけるくらいには慣れました。・・・そんな気、サラサラないですけどね)
ちなみに、もう一つの目的「現場仕事すれば体力ついてダイエットにもなるじゃん!」は、全くアテが外れました。えぇ、確かに体力はつきましたが、現場仕事の後は飯や酒が旨くて旨くて・・・笑
あ、ちなみにこの物語はフィクションですからね~。勘違いしない様にー!
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