たくみの営業暴露日記

たくみの営業暴露日記 Epilogue Asuka #7 あすかの真実

#7 あすかの真実たくみの営業暴露日記
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たくみの営業暴露日記 Epilogue Asuka #7 あすかの真実

──車の中

「……お兄ちゃん、ちょっとホテル寄っていこっか」

「──は? い、いや……さっき言ったのは冗談だって。美子ちゃんに手出したら、それこそ人間のクズになっちゃうって……」

「あ、そういう事は当然ナシだけど……ちょっと長い話になると思うから」

「ん? 何か相談? かなり深刻そうだね。……いいよ、今日俺もあんな事、付き合って貰ったから。じゃ……そこのホテルにでも入ろっか」

「……うん」

──ホテルの一室にて

「──で、話って何?」

「私と幸子しか知らない……あすかさんの真実の話。多分……お兄ちゃん、誤解している事、多いと思うから……」

「え? あすかの真実の……話? な、何で美子ちゃんと幸子ちゃんが……?」

「あすかさんの病気の事……知ってる?」

「え? 精神患って……だよね?」

「じゃなくって……ずっと抱えてた病気の事」

「……は? ど、どういう事?」

「あすかさん……難病だったの。筋ジスっていう病気。知ってる……よね?」

「知ってるも何も……伊織さんが……え? あすかが? ま、まさか~。そ、そもそも、何で美子ちゃん達が──」

「偶然だけどね……幸子が大学の病院の神経内科であすかさんを見かけて……それで色々調べて……」

「け、けど……あんなに元気だった……じゃん……ま、まさか──」

「誰にも知られたくなかったんじゃないかな……」

「…………」

「あすかさん、高校どこ行ってたか……知ってる?」

「い、いや……商業高校行ってて馴染めずに中退したってのは知ってるけど、どこに行っていたかは……」

「私と同じ……〇△高校だって」

「……は? 商業高校って聞いてたけど……な、何で……ま、まさか──」

「高校2年の時……知ったって……言ってた」

「…………」

「それから自暴自棄になって……夜の街で働いて……退廃的な日々を送ってた自分の目を覚ませてくれたのが……お兄ちゃんだったって」

「……は?」

「寿命が分かっているのは考えようによってはラッキーだって。他の人より時間を有効活用できるから、命を燃やしやすいからって。人生なんてものは、濃度を高めてナンボだって……ダラダラ生きるよりよっぽどかマシだって……言ってくれたって」

「──?!」

「俺が命の燃やし方の見本をみせてやるから、うちに来いって……誘ってくれたって」

「ぜ、全然記憶にないんだけど……」

「それから……会社でボロボロになっていくお兄ちゃんを見続けて……心に触れて……絶対この人を助けるんだって決めたって……生まれて初めて心を動かされた人だからって……素の私を受け止めてくれた人だからって……」

「な、何それ……」

「あすかさん、凄い数の男の人と付き合ってきたって言ってたみたいだけど……理由って知ってる?」

「……少しでも条件の良い男と一緒になりたいからって……婚活は戦争だからって……聞いてたけど。裕福な生活送りたいからって……」

「あすかさん、そんなタイプだと思う?」

「意外にそんな事なくって、俺と一緒の時は貧乏でも文句ひとつ言わず……ま、まさか──」

「軽くて酷い女だって見られたかったって。恋愛対象に見られないように……あくまでも親友として……ずっと一緒にいられないからって……」

「…………」

「お兄ちゃんの仕事の役に、中々たてなくって……伊織さんのがって……消えようとしたって……」

「……ここからは……知ってる」

「多分……知らない事も多いと思う。あすかさん……いつ離婚したか知ってる?」

「──え? 伊織さんの携帯メールを見ると……旦那さんの転勤で九州行ってそれから上手くいかなくて……一昨年くらいでしょ?」

「24歳の4月だって。わずか3週間で同居する前にスピード離婚したって……言ってた」

「──は?」

「お兄ちゃんがピンチの時……助けたいからって……面倒見たいからって……少しだけの間でも一緒に……思い出作りたかったって……」

「な、何だ……それ……」

「お兄ちゃんと一緒に過ごした時が……人生で一番楽しかったって……幸せだったって……ただ、離れなくっちゃって……元気なうちにって……」

「……────ッ」

「伊織さんだったら……お兄ちゃんを幸せにしてくれる筈だからって……伊織さんの事も大好きだったからって……」

「────ッ」

「お兄ちゃんが幸せになる事が……あすかさんの夢だったって……生き甲斐だったって……全てだったって……」

「────ッ」

「お兄ちゃんが家に来た2ヶ月くらい前……あすかさんが突然来て……伊織さんの死を知って……私達もあすかさんの真実を知って……」

「────ッ」

「あすかさんには絶対お兄ちゃんに真実を伝えないでって言われたけど……それは間違ってると思ったから……お兄ちゃんに伊織さんの手紙や携帯を……」

「────ッ」

「ごめんなさい! 私が余計な事しなければ……お兄ちゃん、幸せになってたのに……あすかさんの願い通りになってたのに……────ッ」

「いや……美子ちゃん、ありがと。もし知らないままだったら……それこそ一生後悔したと思うから。……どんな形でも……最期に一緒に……────ッ」

「最期は……あすかさん、元に戻ってたと思う。お兄ちゃんにこれ以上迷惑かけない様に……異常者のフリして自ら命を──」

「あの……バカ! どこまで……バカなんだよ! ホント……────ッ」

「お兄ちゃん……ごめんね。────ッ」

補足?

この話を聞いた時・・・無性に腹が立った記憶があります。美子ちゃんに、ではなく、何も知らなかった、気付けなかった自分自身に対して。

九重に対しても腹を立てたかな? 何で教えてくれなかったんだ、俺はそんなに頼りないのかよ、とも。

ただ、、よくよく考えると自分自身も似た様なものだよな~っと。自己犠牲愛が強いというか何というか・・・

それはそうと、、この時期はかなりヤバイ思考回路していました。自分自身、本当に死神なんじゃないだろうか、疫病神なんじゃないだろうか、と。

美幸、畑口、そして九重・・・自身と深く関わった人、3人も亡くしましたから。。

この悪夢の連鎖を断ち切るには・・・というのが、次回エピローグ最終回の内容です。

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