たくみの営業暴露日記

たくみの営業暴露日記 最終章 第1話:捨てる神あれば拾う神あり

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第1話:捨てる神あれば拾う神あり

4月中旬。

加藤は窮地に立たされていた。相変わらずの営業所内での扱い、それをバネに飛び込みというこれまでの黄金スタイルが……できなくなっていた。

美幸の死後、まるで両足に重しが付けられたかの様に前へ進む事が困難になり、1日数件の訪問がやっと……という体たらく。それどころか、言葉がまるで慣れていない外国語を話すかの如く出てこなくなり、会話もロクにできなくなっていた。

(何で……足が動かないんだよ! 言葉が出てこないんだよ! 俺は……まだやらなくちゃいけないのに。どうなってしまったんだよ、俺は……!)

心の傷が大きすぎて全く癒えていないからくるもの──非常に簡単な理由であるにも関わらず、加藤はその答えに気付く事が出来なかった。

──加藤君……悪い事言わないから、ちょっと休んだら? あんな事があったんだから……ここに来るのも辛いでしょ? あの子の事、想い出しちゃうだろうし……もう、無理して来ないでもいいから。

喫茶福井のママさんの、誰が聞いても気遣いの言葉も、加藤にはマイナスの解釈しかする事が……できなかった。

加藤は喫茶福井という拠点も、家も、何もかもなくし……一人もがいていた。

(もう……俺、終わりだな……常連客の所に挨拶して……もう消えるか)

この時、もし最初に訪れる場所が違ったら、未来は大きく変わっていたであろう。……一つの出来事が、加藤の運命を再び動かす事となる。

「おう、加藤君。どう? 調子は。そういえば、桃田さんの話、どうなった? 転職する事になった? ハハハッ」

相変わらずの調子で話す北さんに、精一杯の愛想笑いを返す加藤。その様子を見て、北さんが表情を変えて話しかけてきた。

「……何かあったか? 何か死にそうな顔してるけど。……良かったら俺に何があったか聞かせてよ。もしかしたら俺、何か力になれる事、あるかもしれないしさ」

いち顧客として、ではなくいち人間として、友として、とでも言わんがばかりの北さんの気遣いに、思わず加藤は全ての出来事を話していた。

「────という感じで、気が付いたら1人になって……飛び込みも出来なくなってしまいました。……ハハハ、もう俺、終わりですわ」

限りなく一方的に話まくる事、30分。全ての話を聞き終えると、北さんは腕組みをして何とも複雑な表情を浮かべながら熟考に入った。時間にして1分くらいであろうか、何とも不気味な沈黙の時間に耐え切れず、加藤が喋り出す。

「あ! す、すいません……こんな暗い話しちゃって。らしくなかったですよね、今の話、忘れて下──」

という加藤の言葉を無視するかの様に、北さんが目を見開いて突然喋りだした。

「加藤君、俺が住んでるマンションの隣の部屋、事務所にしていいよ。丁度空いてるし」

「──は?」

全く予想だにしなかった発言に、思わず間の抜けた反応をする加藤。そんな加藤の反応を無視し、北さんは更に続ける。

「丁度こないだ、パソコン買い換えたところだから。俺のお古になるけど、そのPCも使っていいし。ネットも使える様にしておくから」

「え、えっと……全く意味分かんないんですけど……ど、どういう事……ですか?」

この様に思う加藤、ごもっともであろう。この疑問に対し、北さんは次の様に応えた。

「何も飛び込みだけが営業じゃないって。他の手段考えればいいだけじゃん。これからはネットの時代だし。加藤君の体験談とか、滅茶苦茶面白いから、上手くやればネット上で活躍できるんじゃないかな~って思ってね」

「い、いや……それ以前に、何で俺なんかの為……に?」

「んなもん、親友が困ってる時に助けるのに理由なんかいるかよ。俺がそうしたいと思ったからに決まってるだろ。……どうせ今、他にいく所、ないんだろ?」

「た、確かに今、いく所はないですが……や、家賃っていくらです? 北さんの住んでるマンションって……あのビルの……最上階の4LDKでしたよね。ここら辺の相場で考えたら安く見積もっても20万超──」

「あ、光熱費だけ入れてくれればいいから」

「──?!」

「取りあえず今の所、パソコンくらいしか置いてないけど、色々家具入れて貰っても構わないから。……はい、これ鍵ね。今日から使って貰って構わないから」

「──?!」

「ま……これからパソコンやネットの事、1から教えていくから。将来2人で伝説でも作ろうや」

「──?!」

数時間後──北さんの隣のマンションに加藤はいた。最上階に位置する部屋から見下ろす光景は圧巻で、豆粒の様な下界の人を見下ろすのはちょっとした優越感を覚える程だった。

──捨てる神あれば拾う神あり……か。要するに俺はまだやる事がある……って事か。何か分からんけど……運命に流されてみる……か。

何とも数奇な運命に導かれ、加藤の営業物語が再び動き出した。

挿話?

時期は微妙に違いますが、紛れもないリアルな出来事です。

「北さんの嫁さんの実家が地元で有数の不動産持ちで、たまたま隣が所有物で空いていたから」

こんな理由で、事務所……というか住まわせてくれてました。……数年も、家賃ゼロで。(立地的に、20-30万/月くらいであろう、仮に普通に借りるならば)

どこかで書いた記憶ありますが、特に退職後の極貧時代、北さんのご厚意がなければ花開く前に終わっていたでしょう……というか、生きてすらいなかったかも。

リアルではちょっとしたサイドビジネス(着メロ本手掛けたりとかごにょごにょと)等一緒に手掛けたりとかしてましたかね。ちなみに、メルマガ時代は、文章は自分が書いてその他のPC絡みは北さんが、という感じでやってました。

ホント、お世話になりました。

さて……外伝あたりから「意味分かんねーよ。何の参考にもなんねーよ」という内容になってきている感ありますが、この最終章ではある程度参考になる内容になるかと思います。

……人によっては前回以上に「絶対無理だよ! この化け物めが!」となるかも、ですが。

次回は……ちょっとクズな話に近いかな?

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