第二部 第3話 ツケの代償
突然ですが、25日って何の日か知ってますか? そうです、みなさんも一度は聞いたことがあると思いますが、締め切りの日なんですよね。
だいたいの書類が25日には揃ってなくてはいけないんですが、診査や保険料の集金、書類上の不備などが出る場合があります。そういった不備は翌月の10日ぐらいまでの間に、解決をしなければいけないのです。
私達の支部は、内勤さんや支社泣かせで、『絶対行きたくない支社ナンバーワン』らしく、不備が非常に多いらしいのです。その根源は、もちろん小橋リーダーにあるのですが、彼女のおかげで支部全体がだらだらしていました。……この失態を”出来る男”横田支部長は、見逃す筈はありませんでした。
ある日の朝礼の時間の事です。
「ここの支部は、非常に不備が多いようであるが、私が営業部長になったからには、この問題点を大いにに改善しようと思っている。みんなも知っているように、不備が改善されないと、成約率が下がってしまう。これからは、朝礼の時間に確認していくからな!」
──しーーーーん……
今までは各自、営業部長や支部長に呼ばれて確認を行っていました。みんな各自、この言葉で、色々な不安がよぎったのではないでしょうか……
(えーっ。また朝礼が長くなるの?)
部長「ではまず、番号005番。水野さん。この契約の、申込書の印漏れは、いつ提出だ?」
水野「……明日です。す、すいません」
部長「次、番号032番。設楽さん。この契約の、口座引き落とし書類、申込書は?」
設楽「え、えっと……あの……」
(まずい! あれ、小橋リーダーに、ツケてもらった契約だ。っていうか、また白紙入力? 書類が全然揃ってないじゃん……)
小橋「明後日です」
設楽「次、番号051番。神田さん、申込書!」
神田「……お客さんに確認します」
小橋「明日です」
朝礼が終わってから、設楽は営業部長に呼ばれた。
部長「小橋チーム、不備が非常に多いけど、なんでお前達の代わりに、小橋リーダーが応えるんだ?」
設楽「……あれは、小橋リーダーに、ツケてもらったものです。他の子の契約については分かりません」
部長「つけてもらったら、いつ書類が揃うのか確認しておけ。俺は不備が嫌いだからな。確認は、不備がなくなるまで毎日行うから、班の者にも伝えておきなさい」
みんな暗黙の了解をえていた小橋リーダーのつけの契約が、少しずつ明るみに出てしまい、班全体の雰囲気が怪しくなりつつあった。
……小橋リーダーもまた苦悩していく事になる。
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