設楽のり子の生保営業暴露日記

第二部 第15話 今月も…

今月も・・・設楽のり子の生保営業暴露日記
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第二部 第15話 今月も…

 9月になった。先月の給料は雀の涙。今月こそは頑張らなくてば……そんな事を考えていると、支部長からの呼び出しがかかった。

「設楽さん……先月マイナス件数多かったけど、今月も多いぞ」

「──へ?』

「今月はマイナス4.5件。一体どうなってるんだ?」

「ちょ、ちょっと見せて下さい」

そこには4人の名前がのっていた。

(えっと、これは……弟の契約は、もう私立替えるだけのお金がないからダメだし……えっ、こっこれは?)

リストを見ていると、さらに支部長が話してきた。

「設楽さんは11月が昇進月だけど、これでは今の位だけじゃなく、営業部に存続するのも難しいぞ。一番下の階級を狙うか、今の位の一つ下を狙うか、だ。きちんと確認して落とさないにこした事はないけど、どんどん契約もとらなくちゃ』

「──?!?!」

……私はがっくり肩を落とした。またまた小橋リーダーにつけてもらった契約だ。今月の給料もろくに貰えない事も心配だが、もっと心配なのが存続不可能になるかもしれないという事。今までいつも上位の成績をキープしていた私にとっては、存続不可能、一番下の位という言葉が胸に響いた。

(あ~……このままでは、私の生保営業人生もこのまま終わってしまう)

……私の、普通ではない顔つき&オーラにみんなが歩み寄ってきた。

「のり子さん、先月、今月と、どうしたんですか~? のり子さんが、こんなに契約を落とすなんて、おかしいですよねぇ~。みんな心配してますよ~」

「実はね……────」

 私は少しでも気分を落ち着かせる為、今までの経緯を一気に話した。私の話を聞き終わった後、珍しくどんよりした表情を浮かべ、神田さんも重い口を開いた。

「実はね……私も、他の子も、みんな契約落ちてますよ。それも小橋リーダーにつけてもらった契約。位落とした子もいるし、私も頑張らないとやばいですよぉ」

「!!!!」

……みんな(小橋チームのみんな)契約が落ちた事から、肩を落としているらしい。

(私……だけじゃないの? って……これってどういう事? 何か、何かが……おかしい!)

心の中で生まれた疑問を解決する為、勇気を出して小橋リーダーに聞いてみる事にした。

「すみません、今月の契約も落ちるようなんですが、どうなっているんですか!」

「あっ、ごめんなぁ。この契約も先月インシュアランスが入って、ちょっともめたらしいのな。よって、契約続行は無理みたいだから。この頃インシュアランズ厳しくなってきてるでしょ? 私のお客さんの所にも結構まわっているみたいだし。のり子も気をつけた方がいいからな」

※インシュアランス……まぁいわば契約確認が本部より入る事。不正な契約がないかどうか、お客さんに確認するもので、通常は殆どこういうチェックはないが、問題アリだと疑われる職員の所には頻繁にこのチェックが入る。

(インシュアランス……そういえばこの頃、私のとった契約、結構来てるみたいだよなぁ。……というか、小橋リーダーの班員を中心にまわっているとしか思えないよね……)

「すみません、私も続けてこれだけの契約を落とすわけにはいかないので、お客さんの家に訪問したいんですけど、いいですか?」

神田さんより他の人の事情を聞いていた為、ちょっと小橋リーダー系の契約に疑問を抱いていたので、こう切り出してみた。そしたら……小橋リーダーの顔つきが一気に変わった。まるでヤバい事がバレた、というような表情に──

「だ、大丈夫だから。もう一度私の方からお客さんに確認してみるから、な。の、のり子はとりあえず、今月の契約を頑張りな。し、心配しないでいいから……」

……今月の契約を頑張れって、マイナス4.5件じゃ、重大月なみの契約をとらなくてはいけないじゃない……

(ただえさえ11月戦の準備もしなくてはいけないのに……っていうか、私このままだと、控除がなくならないと……営業部に存続できないじゃん!)

……私は頭を抱えた。

『私達なんか、今までつけてもらった契約全部2~3ヶ月で解約になったり減額になったりばっか。おかげで給料も下がりっぱなしで夜もバイトしてるんだから!』

前に畑口&前藤から聞いた話が、また私の頭の中をグルグル回り始めた……

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