#20 お兄ちゃんがしてくれた事
──7年前 美子16歳、幸子15歳(3月下旬)
「幸子、〇△高校合格おめでと。本当に受かるとは思わなかったわ。幸子、頭良かったんだね」
「ホント凄いよ、幸子。お姉ちゃんと同じ高校に受かるなんて」
「……お兄さんに勉強のコツ、教わったから。頑張れば出来るって何度も励ましてくれたし……」
「あの人の話、しないで! それにあの人の事、お兄さんなんて呼ばないでよ! あ~、気分悪!」
「ご、ごめんなさい……」
「忘れた訳じゃないでしょ? あの人のせいでお姉ちゃんは死んだんだから。今頃、お姉ちゃんの事はなかった事にして例の花屋の女とイチャイチャしてるんだから、きっと」
「…………」
「置いていったお金が何よりの証拠じゃない。要するに手切れ金って事でしょ。……毎月仕送りするとか言ってたみたいだけど、どうせ暫くしたらそれもなくなるんだから。……私達の事、なかった事にしてすっかり忘れちゃうんだから」
「美子、まだそんな事言ってるの? 加藤さんが美幸や美子達にしてくれた事、忘れた訳じゃないでしょ? 今こうやって普通に暮らせるのは──」
「知らないわよ! お姉ちゃんさえ生きてたら……それで充分だったんだから! もう知らない!(バタンッ)」
「…………」
「幸子、加藤さんから手紙預かってるけど、見る?」
「……え? お兄さんの? ……ぁ……」
「加藤さん、幸子の事、ちゃんと見てたんだね。合格おめでとうって……頑張ったねって……」
「…………」
「幸子なら……分かるでしょ? 美幸の死は加藤さんに何の関係もないって……生半可な気持ちで一緒にいた訳じゃないって……加藤さんを恨むのは筋違いだって」
「……うん」
「あなただけでも……少しは感謝しなさいよ」
「……はい……」
──7月15日 (美子17歳(高2)、幸子15歳(高1))
「誕生日おめでと、美子。はい、プレゼント」
「ぅわ~、ありがと! 新品のラケットにシューズまで! 丁度欲しいと思ってたんだ~。でも、大丈夫? これ、高かったでしょ?」
「それくらいの蓄えくらいはありますから、うち。あ、シューズは3足あるから、いくらでも履きつぶしていいからね」
「ぅわ~、ありがと! 早速今から試し打ちにいかなきゃ! いってきま~す」(ダダダッ……)
「あの、もしかしてあのプレゼント、お兄さんが……」
「……そうよ。昨日、宅配で送ってきたの。そろそろいいラケット欲しいんじゃないかって……シューズも痛んでるんじゃないかって。私が買った事にして、誕生日プレゼントとして渡してくれって……」
「……お兄さん……」
「美子は加藤さんが他の人と一緒になって幸せに暮らしてるって言ってるけど……多分そんな事ないと思うな、私は……」
「……え?」
「正確な額は言えないけど……ちょっと尋常じゃない仕送り額だから。いくら仕事ができる人っていっても……これだけの額を仕送りなんて、1人じゃなきゃ出来ない筈だから……」
「…………」
「後、美子と幸子にって……予備校のパンフレットまで送ってきて……」
「──?! え、えっと……丸がうってある金額、びっくりするくらい高いんだけど……ま、まさか……そ、そんなに?」
「……2人行かせても余裕で余るくらいには……ね。大学費用の足しにって……」
「ぁ……」
「……幸子、あなただけでも感謝しなさいよ……」
「……はい」
──11月19日 (美子17歳(高2)、幸子15歳(高1))
「……あ……伊織さんのメールだ……結局例の花屋の子はシロだったって……あの女と一緒になってたんじゃない……の?」
「……だから言ったじゃん、お兄さ……加藤さんはそんな人じゃないって。ずっと1人で私達の為だけに頑張ってるって……」
「け、けど……」
「お姉ちゃんの手紙だって……見たでしょ? 加藤さんを恨むのは筋違いだって……お姉ちゃん、幸せだったって……書いてあったじゃん」
「……私も……そろそろ本腰入れて勉強頑張らなくちゃ……お姉ちゃんに叱られちゃうから。……予備校も通わせて貰ってるし……」
「…………」
──美子18歳(高校3年)、幸子16歳(高校2年) 7月
「え~っと……予備校の夏期講習だけど、これとこれと、これ……行っていい?」
「遠慮しないで。ホントはもっと行きたいんでしょ? 例えば、これとか、これとか……これとか」
「──?! お、お姉さん……よく分かったね。大学受験の事、実は詳しかったんだ……」
「い~え、私は知りませんよ。……ちゃんと、丸で囲ってあったのを言ったまでです」
「……そ、それって、まさか──」
「加藤さん、ホント美子達の事、真剣に考えてるのね。まるでホントの親みたい……あ、手紙もみる?」
「──! ……ぁ……」
「……夏期講習いっただけで勉強した気にならない様にって……律儀に勉強スケジュールまで作って……凄い手間かけて、凄い細かい所まで……」
「……もしかして、お金……も?」
「……これだけして貰ったら……ちゃんと頑張らないと、ね」
「……うん」
──美子18歳(高校3年)、幸子17歳(高校2年) 12月
「ぅわ~、最悪! 最後の模試、第一志望D判定じゃん! これじゃ絶対受験失敗するじゃん!」
「……はい、赤ペン先生からまた手紙」
「──! ……ぁ……」
「加藤さん……ホント、美子の事、よく分かってるのね。まるで実際に見ているみたい。……最後の模試の結果が出るタイミングまで……何て書いてあったの?」
「……私は大器晩成型だからって。今からグンと伸びる筈だからって。諦めずに頑張れば絶対志望校に受かるって……また勉強スケジュールまで……もぅ、この通りにやったら死んじゃうよ……やるけどさ……」
「www 頑張って♪」
「……スパルタなんだから、お兄ちゃんは……」
「wwwwww」
──美子18歳(高校3年)、幸子17歳(高校2年) 2月末
「──! う、受かった! 合格したよ、私! 奇跡が起きたよ! ……手紙、来てる?」
「……はい、先走って昨日来てたわよ」
「──! ……ぁ……」
「どうせ合格おめでとうって書いてあるんでしょ? 結果はみるまでもなく分かってたからって……」
「……うん……卒業旅行楽しんでって……部活とクラスと友達と3回程行ってらっしゃいって……春休みの間に車の免許取れって……」
「あ……それで仕送り額がいつもより多かったんだ……」
「え、えっと……大学の費用は、奨学金でこれだけ出るけど、残りは──」
「奨学金は借りなくて大丈夫よ。それくらいは余裕であるから……もう美子の大学卒業までの学費に困らないくらいには、ね」
「──?! うちって意外にお金持ちだったんだ」
「そんな訳ないでしょ! ……加藤さんに感謝しなさいよ!」
「……あの、お兄ちゃ……加藤さんの連絡先は……?」
「……宛名だけでいつも連絡先書いてないから……」
「…………」
「もしかしたら、美子の合格祝いで来るかもしれないから、その時はちゃんとお礼言うんだよ」
「……うん!」
──美子19歳(大学1年)、幸子17歳(高校3年) 7月
「あ、あの……お姉さん、相談があるんだけど……」
「ん? 何?」
「大学進学先の事なんだけど……私、お姉ちゃんと同じ大学・学部に行こうと思ってるんだけど」
「へぇ、幸子、ホント頭いいんだね。美幸の行ってた所っていったら、国立の医学部じゃん。大変だと思うけど、頑張ってね」
「あ、い、いや……受かるかどうかは分からないけど……もし受かったら本当に行ってもいいのかな~って……」
「ん? どういう事?」
「学費の事、調べたんだけど……大学ってあんなに授業料かかるなんて知らなくて。しかも医学部だと6年で長いし……お姉ちゃんも大学行ってるから、お金……大丈夫かな~って」
「……十分過ぎる程、仕送りして貰ってるから。あ、幸子宛に手紙来てるけど、見る?」
「──! ……ぁ……」
「美子の時もそうだったけど、きっと幸子が心配しそうな事、書いてあるんでしょ?」
「うん……学費の事とか余計な事は心配しないでいいから、目標に向けて勉強だけ頑張ればいいって……予備校の夏期講習も遠慮せずにいけって……どうしてここまで……」
「……そんな事、あなた達の事を本当の家族の様に大事に思ってるからに決まってるでしょ! ホント、感謝しなさいよ……普通の家庭でもここまで恵まれてない筈だから」
「……はい」
──美子19歳(大学1年)、幸子18歳(高校3年) 3月
「……受かった……やった……!」
「凄いじゃん、幸子。お姉ちゃんと同じ大学に受かるなんて。よく分かんないけど、医学部って難しいんじゃないの?」
「……私、一杯、頑張ったもん。お兄さんに言われた通りに……コツコツ自分を信じて……」
「あ……お兄ちゃんからまた手紙来てたよ。……見る?」
「──! ……ぁ……」
「なになに、合格おめでとう、結果は見ないでも分かってるよ、幸子ちゃんは誰よりも頑張ってた筈だから……? これからはちょっとおしゃれにも気を遣って……? 素材はいいんだから……? 美子ちゃんを見習ってもう少しハメを外して遊んで……? な、何これ? ……し、失礼ね! これじゃ私が遊び惚けてるみたいじゃない! 私だって──」
「お、お姉ちゃん……続き、あるよ? ……全てお見通しみたい、この手紙、お姉ちゃんが見てる事も……」
「なになに……誤解しないで、美子ちゃんが遊び惚けてるなんて思ってない? 影で凄い頑張ってる事も知ってる? 無理しすぎないで? 1人で抱え込まないで? な、何よ……もう……」
「お兄さん……お姉ちゃんの事、ホントよく理解してるね。……まるでずっと見てたみたいに……今年こそ、来てくれる……かな?」
「……幸子、一緒に家、出ない?」
「──え?」
「で、一緒にお姉ちゃんの家で住もうよ」
「い、いいけど……どうして?」
「……お兄ちゃんがいつ来てもいいように……帰って来てもいいように……あの場所で待っててあげなきゃ」
「……うん」
──美子19歳(大学2年)、幸子18歳(大学1年) 4月初旬
「ぅわ~、懐かしいな~。やっぱここが私達の家って感じでしっくりくるな~」
「……けど、2人だと広く感じるね。昔はあんな狭く感じたのに」
「そりゃ、豪もいたし、お姉ちゃんもいたからね」
「……後、短い間だったけど、お兄さんも……」
「昔はこの狭い家を一刻も早く飛び出したいって思ってたけど……何とかいって楽しかったな~」
「……そうだね」
「また……昔みたいに賑やかな家にしないと、だね。……お兄ちゃんの為にも」
「……うん」
「よ~し! 今日は新たな門出を祝って、パーティするよ! 幸子、お酒買ってきて!」
「お酒って……お姉ちゃん、お酒殆ど飲めないじゃん。……チューハイでも買ってこればいい?」
「何いってるの? お酒っていったら……日本酒でしょ! 今から飲み慣れておかないと。……お兄ちゃん、酒豪だから。これから毎日鍛えるわよ、幸子!」
「(うちら、未成年だけど、いいのかな……)」
──美子19歳(大学2年)、幸子18歳(大学1年) 5月
「幸子、ちょっとこっち来て手伝って~」
「いいよ~。……な、何、お姉ちゃん、その豪華な着物……」
「例のあしながお兄ちゃんが、送って来たの。成人式用の振袖にって。卒業式とか結婚式にも着れるから、レンタルするより持っておいた方がいいって」
「よ、よく分かんないけど……ちょっとモノが良すぎない? こないだ見に行ったレンタル着物がちゃっちく思えるんだけど……」
「確か、お兄ちゃん、着物好きだったから。ほら、お姉ちゃん前に言ってたじゃん。お姉ちゃんの着物姿に見惚れてたって」
「……お兄さん、着物フェチなんだ。それにしても、この時期に成人式用の着物って……気が早いなぁ」
「何言ってるの? 着物レンタルするなら今の時期から探さないといいのなくなっちゃうってのはこないだ行って分かったでしょ? ……そういう事情を知って、レンタルしなくてもいいようにって送ってきたんでしょ?」
「──!」
「着物持ってれば、撮影もラクだし、美容院の予約は今からとっておきなって……メモ書きまで。……ホント、過保護の親でもここまでしないよ」
「…………」
「お兄ちゃんに……私の晴れ姿、見せてあげないとね。いつでも見せてあげられるように、着付けマスターしなくっちゃ。幸子も、ね!」
「……うん!」
──美子20歳(大学2年)、幸子19歳(大学1年) 3月19日
「……もう美幸が天国に旅立って4年か……時が経つの、早いね……」
「あの……お兄ちゃんはまだ仕送り……を?」
「……もう美子や幸子の大学費用分は十分貯まってるのに……ね。連絡先が分かれば、もう十分だからって言えるんだけど……」
「……手紙は?」
「来てるけど……見ない方が──」
「いいから見せて! ……? な、何これ……これ、ホントにお兄ちゃんの手紙? 平仮名ばかり……」
「ちょっと……体調が良くないみたい。約束、守れないかもって。……身体が持つ限りはどうにか仕送り続けるけど、万が一の時はごめんなさい……って」
「な、何考えてるのよ……お兄ちゃん……そんなに無理してた……の?」
「……無理しないと、あれだけの仕送りは……普通の人が20年かかっても貯められるかどうかという金額を、たった4年で……」
「……それって……いくら……くらい?」
「……絶対に言わないでくれって言われてるけど……ちょっとしたマンションが買えるくらいには……」
「……は? な、何それ……私達の学費どころじゃ……」
「……2人とも、3回程大学にいける分には……ね」
「ちょ、ちょっとおかしいんじゃない? ここまでしてくれなくてもいいじゃん。だって、お兄ちゃんは本当の家族でもないのに……血も繋がってないのに……」
「それだけ……あなた達の事を大事に思ってたって事でしょ。……律儀というか人がいいというか……それにしても、どんな壮絶な生活送ってるのかしら、加藤さん」
「……私達が原因なのかな。あの時、凄い酷いこと言っちゃって……凄い傷つけちゃって……お兄ちゃんだって辛かった筈なのに……お兄ちゃん、何も悪くないのに……お姉さん、どうしよう……私達のせいで、お兄ちゃん……────ッ」
「……加藤さんが来たら、ちゃんと謝るんだよ。感謝するんだよ。……きっと、加藤さん、あの日から時間が止まってる筈だから。……時計の針、動かしてあげなきゃ」
「……うん」
──美子21歳(大学3年)、幸子19歳(大学2年) 7月
「幸子、ちょっと来て~」
「どうしたの? ……な、何? お姉ちゃん……スーツなんか着て……」
「どう、似合う? ……お兄ちゃんがまた送ってきてくれたの」
「え、え~っと……就職活動って流石に早くない?」
「インターンに参加しろって事……かな? ……丁度インターン申込しようと思ってたところだし」
「あ……そういうもんなんだ、知らなかった」
「……女性用スーツのマナー集のプリントまでつけて……ホント、もう子供じゃないんだから……」
「ホント、マメだね、お兄さん」
「……ありがと、お兄ちゃん……私、頑張るからね」
「…………」
──美子21歳(大学3年)、幸子19歳(大学2年) 11月19日
「今日はお兄ちゃんの誕生日だね……もう30歳になったんだね。あれからもう5年も経ったんだね」
「お兄さん……大丈夫かな……7月の最後の手紙……何書いてるか分からなかったけど……」
「成人式の振袖なんて、私のお古でいいのにね。……わざわざ2人分用意しなくてもいいじゃない……ホント、非経済的なんだから」
「あ……お姉ちゃん、あの手紙、何書いてあるか読めたんだ……凄いなぁ……」
「お兄ちゃんが言いそうな事くらい、読めなくても分かるから。きっと一字一句間違えてない筈だよ」
「……仕送りがあるって事は、まだ生きてる……んだよね」
「ホント、飽きずによく続けるよね……そろそろ5年だよ? 仕送りする事が趣味になってたりしてw」
「お姉ちゃん! そんな風に茶化さないで!」
「ここまでして貰ったら……一生かかっても返せないじゃない。ホント、いい加減にして欲しいよね……私達を置いてお姉ちゃんの元にいったら……許さないんだから!」
「…………」
「立派に成長した私達……早く見に来てよ。頑張ったねって……褒めてよ。感謝の気持ち……直接言わせてよ!」
「…………」
「お願いだから……もう自分の幸せの為に歩いてよ。あすかさんの所に……一緒になってよ。もう私達の事も、お姉ちゃんの事もいいから。お姉ちゃんも望んでるから!」
「…………」
「早くしないと……2人共……────ッ」
「…………」
「あすかさんがいなくなった後は……私達……私が一緒にいてあげるから。それまでは……私は待っててあげるから!」
「…………」
「お酒だって付き合ってあげるし、おいしいご飯だって一杯作ってあげるから!」
「お姉ちゃん……」
「早く……来てよ……────ッ」
「……────ッ」
──美子21歳(大学3年)、幸子20歳(大学2年) 1月9日
「お姉さん……お兄ちゃんの仕送り……来た?」
「11月の中頃からないよ。きっと、もう十分お金貯まったって判断したんじゃない?」
「……そんな計算する人じゃないよ、お兄ちゃんは。もしそうなら、とっくの昔に仕送りやめてたよね。……お姉さん、何か隠してる?」
「い、いや……隠してないよ?」
「……11月の仕送り、いくらだったの?」
「──! い、いや……いつもと変わらない額だったよ」
「お姉さん……私に嘘は通用しないから。……通帳見せて!」
「──! ちょ、ダ、ダメだって!」
「……! な、何これ……いつもの10倍くらい? しかも凄い細かい額まで……これって……今あるお金、全部送金した様にしか思えないんだけど……」
「……多分、何かの操作間違ってその額になったんだよ。だから、10ヶ月は仕送りしないって事じゃないかな」
「そんな操作ミスある筈ないじゃない! お兄ちゃん、もうこれ以上は──」
「操作ミスって事にしときなさい! 縁起でもない事、言うんじゃないの! 言霊って本当にあるんだから!」
「…………」
「今頃、お金を送り過ぎて困ってる筈だから。……暫くしたら、顔出しに来るわよ。きっとそうよ!」
「……うん。きっと……そろそろ来てくれるよね。……いざ来るとなると、ちょっと緊張するな~。……今から心構えしておかなくちゃ!」
「加藤さんがいつ来てもいいように、美幸の残したレシピ、早くマスターしないとね」
「……うん!」
……────
──結婚式までやったのに婚約破棄しちゃうなんて……我ながら酷い事したなぁ……自業自得だけど、もう大学に行けないかな……友達もみんないなくなっちゃうかな……しょうがないか……
──いい年してお兄ちゃんお兄ちゃんって……私でも普通じゃないって事くらい分かってるわよ……
──けど……ここまでして貰ったんだから……あしながおじさんが霞んでみえるくらい……ここまでされたら、私じゃなくても──
──ま、いいや……他の人がどう思おうが、私は私だから……
──私はもう……お兄ちゃんしか見えない様になっちゃったんだから……
──待ってるから……何日でも何ヶ月でも何年でも……何十年でも………
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