設楽のり子の生保営業暴露日記

第22話 彼女の営業方法(?)

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第22話 彼女の営業方法(?)

 2月に入りめでたく諸苦戦をクリアした私は、なんだかんだいっても心はうきうきしてた。固定給も8万から10万に上がったからだ。……とはいっても2月は重大月になるので気を引き締めてこのまま波をつかみたいものだ。

 営業時、車を使用していた私は最近足を運ばせていなかった遠くの会社に出かけていった。

「今月は重大月なので是非ともお考え下さい」

この言葉、耳にする人も多いと思うが、結構この話法、有効だったりする。

「あと1件だけ足りないんです」

とか、ね。なじみのお客様になるととても親身になって考えてくれる。例え契約に至らなくても、保険について真面目に考えてくれるだけで、私たち職員はとても嬉しく思うものだ。

 ある会社で、ある人物(このお客様とは今でも続いてる大事なお客さん)に保険を勧めた。あともう一押し、という所までこぎつけたので小橋リーダーに同行をお願いした。彼女は快くO.Kしてくれ、二人で会社に向かった。

「今日はリーダーも一緒に同行してもらったんです。もう一度改めてお話ししたいんですが……」

その人は嫌な顔一つせずO.Kしてくれた。

 他社から保険を切り替えるチャンスだったので、緊張しながらタドタドしく説明する私。そこに小橋リーダーが一言。

「今月は重大月なんです。のり子の為にお願いできませんか?」

「う~ん……考えてはいるんですけど……」

「実は重大月という事で会社から今月ご契約頂いた方に施策が出ているんす。このパンフレットの中から商品を選んで頂く様になってるんです」

(へっ? そんなものあったっけ?)

……結果、契約は成立した。

 帰りの車の中で。彼女は私に言った。

「のり子、契約を頂くにはこんなやり方もあるのよ。施策がでていなくても、自分の自腹をきって商品をわたすの。お客さんも喜んでくれるしね」

私はこんなやり方もあるんだとびっくりした。……でも複雑な気分だった。

「大丈夫、私がお金を払ってあげるから。安心して明日契約もらってきなさい」

私は少しホッとした。……自分の給料ではこんな事まず出来なかったので。

──翌日。

「本当は自分のお金でこれ買うんじゃないの? 僕こんなことしなくても契約するつもりだったけど」

「(ちょっとつまりながら)だ、大丈夫です。会社からの施策ですので」

……このお客さんや小橋リーダーに後ろめたさと、とても悪い事そしてしまったという複雑な思いで一杯になった。

──小橋リーダの営業のやり方を少し垣間見た気がした。契約頂く為になんでも利用する。

 お金、時間、義理・人情。

 保険の営業って? お金を稼ぐ為ならこれって当たり前?? これって……

 政治家とかが、ふっと頭をよぎった。

(私って保険の仕事、向いていないのかも……)

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