第14話 彼女の事情~宗教~
ここで小橋リーダーの怪しい宗教の話についてふれておきます。そう、明らかにこの人、何かやっているのでは? と思った出来事。
ある日、ふと小橋リーダーの手帳をみて『あれっ?』と思った。なんか怪しいシールが貼ってあったのだ。
(なんだこれ……)
たまたま彼女がいなかったので改めて彼女の机の上を見てみると、物という物あちらこちらにこのシールが貼ってあった。
(うわぁ~、なにこれ……)
暫くすると彼女が会社に帰ってきた。私はこのシールの事がとても気になったので思わず聞いてみた。
「こ、小橋リーダー、このシールなんですか?」
そしたら彼女、目を輝かせながらしゃべりだした。
「これね、私が信仰している宗教のありがたいものなの。♪────」
30分ぐらい、しゃべりまくっていた。私は無宗教なのでとても苦痛だった。
……それにしても、宗教やってたんだ、彼女。
後で聞いた話ですが、気の毒なのは新人の野平さん。彼女は他社生保からきたバリバリの生保レディだったが、この頃ちょっとスランプ気味。それを見かねた小橋リーダーが彼女に歩み寄った。
「このシール知ってる? これを貼ったら運気が良くなるわ。嫌な邪気も祓う事ができるし、成績も上がるわよ。普通だったら手に入らない神聖なものなんだけど、野平さんは私のかわいい組織員だから特別に○○円でわけてあげるわ」
「えっ? 本当ですか?」
「ええ、私の言う事は間違いないわ。でもこの事は誰にも内緒よ。このシール、みんな欲しくてしょうがないんだから。あなただけ特別よ」
「ありがとうございます!!」
私達営業職員って結構運やゲン担ぎを気にする人多いんです。ましてや誰でも家庭内や私情で悩みの一つぐらい持ってますもんね。
ワラにもすがりたい野平さん、さっそく自宅に帰ってシステム手帳に貼ったらしい。毎日怪しいお祈りまで教えられて……
ところが、まぁ当然といえば当然だが1ヶ月、2ヶ月……なかなか彼女の成績は波に乗らない。そんなところに同期の神田さんの極めつけの一言。
「ねぇ野平さん、私、小橋リーダーにこのシールを特別にとかいって貰ったんだけど、気持ち悪いよねぇ。処分したいんだけどどうやったらいいのかなぁ?」
その事が原因かどうか定かではないが、この数日後彼女は会社を辞めていってしまった。……ショックだったのかなぁ?
実はこのシール、いろんな人が貰っていたらしい。私は貰えなかったので小橋リーダーに聞いてみた。
「のり子は現実主義だからそういうのに興味がないと思ったの。欲しかった?」
あ~あ、私も欲しかったなぁ、なんてね、まる。
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