#16 看病
──8月末 ~寝室~
「お兄ちゃん、中々熱下がらないね」
「……ハァ……ハァ……」
「お仕事辞めて次の日から体調崩して……余程気を張ってたんだね」
「……ハァ……ハァ……」
「リサさんっていう人と嘯いて別れて帰って来てからこないだまで2ヶ月、何かに取りつかれた様に仕事してたよね。ちょっと普通じゃなかったよ、怖いくらいだったよ」
「……ハァ……ハァ……」
「あんな風にお兄ちゃんは仕事してきたんだね……生きてきたんだね。馬鹿と天才は紙一重って言うけど、お兄ちゃんの為にある様な言葉だよね」
「……ハァ……ハァ……」
「そんなに無理して無茶して、限度ってものが……そういえばお兄ちゃん、そういうのが分からないんだったね、ごめん」
「……ハァ……ハァ……」
「お姉ちゃんもそうだったな~。どんな事でも何でも出来て、平気な顔でこなしていって……自分を犠牲にして私達の面倒みてくれて……ホント、2人そっくりだよ」
「……ハァ……ハァ……」
「知ってる? 私、お姉ちゃんと同じ23歳になったんだよ。立派に成長したでしょ?」
「……ハァ……ハァ……」
「お姉ちゃんやお兄ちゃん程じゃないけど、私だって私なりに精一杯生きてきたんだよ」
「……ハァ……ハァ……」
「あの私がだよ? 立派に大学までいって、成績もずっと優をキープして……友達もたくさん作って、恋人も作って、もうすぐ結婚まで……信じられる? 凄いと思うでしょ? お兄ちゃん……褒めてよ」
「……ハァ……ハァ……」
「ずっと……ず~っと、よくやったねって褒められたかったんだから」
「……ハァ……ハァ……」
「一杯いい子いい子して貰って……一杯甘えたかったんだから」
「……ハァ……ハァ……」
「その為に……ず~っと頑張ってきたんだから」
「……ハァ……ハァ……」
「これからも……ずっと私の成長見守っててよ。一杯、褒めてよ、甘えさせてよ。それを楽しみに……私はこれからも頑張って生きていくから」
「……ハァ……ハァ……」
「そうしてくれたら、私は……お兄ちゃんにとびっきりの幸せをあげるから。何でもしてあげるよ? 毎日ご飯も作ってあげるし、毎日一緒に寝てあげるし、何だったら毎日一緒にお風呂も入る? お兄ちゃんが望むならいいよ?」
「……ハァ……ハァ……」
「毎日一緒にお買い物に出かけて、毎日一緒に散歩して、毎日……キスをして、ハグをして、愛し合って」
「……ハァ……ハァ……」
「色んな所出かけて、旅行して、色んな景色見て、経験して……」
「……ハァ……ハァ……」
「毎年誕生日会やって、記念日を祝って……そんな日々を楽しく送って気が付いたらおじいさん、おばあさんになってたって……いいと思わない?」
「……ハァ……ハァ……」
「今死んじゃったら、出来ないよ? 勿体ないよ、これから誰もが羨む幸せな人生、経験しなくちゃ」
「……ハァ……ハァ……」
「私は……妹のままでいいから。愛人でも何でもいいから。他に恋人作っても結婚してもいいから。お嫁さんにしてくれなくてもいいから。……私の為に生きてよ」
「……ハァ……ハァ……」
「今日も一緒に寝よっか。また裸のまま抱きしめてあげるね。……ひんやりして気持ちいいでしょ? 落ち着くでしょ?」
「……スー……スー……」
「一杯私を感じてね、覚えてね。……同じ夢、見ようね」
「……zzz」
コメント