#12 間違えない為に
──九重あすかの死から約5ヶ月後
「────ってな感じだったかな、あすかとの生活は。ちょ～っと大変だったかな、ま、しゃーないけど」
「……そっか……」
「どうにかなる、絶対元に戻してやるって思って、出来る限りの事は自分なりにしたつもりだけど、ダメだったな～。……今思えば入院させた方が良かったのかな～。……後の祭りだけど」
「……そっか……」
「介抱自体も大変だったけど、一番キツかったのは、無反応のあすかに延々と話しかける事だったな～。特に誕生日会、滅茶苦茶キツかったな～。1人で歌うたって、ローソク消して、ハイテンション維持して……凄い惨めな気分になったよ、ホント」
「……そっか……」
「結局最後まで無反応のままで一言も喋らなかったな～。……いや、最後だけ涙流してたかな……俺、酷い事言っちゃってね……」
「…………」
「戻ってきてよ、笑顔見せてよ、声聞かせてよ、俺の事またたくみ君って呼んでよって……無神経だよね、俺。あすかだって好きで壊れた訳じゃないのに……凄い傷つけちゃって……次の日に……ね」
「…………」
「何であの日に限って寝ちゃったんだろ……しかもいなくなったの気付かない程……ホント、これほど自分に腹立ったことなかったよ……」
「…………」
「美子ちゃんに伊織さんの形見渡されて……即それを見ていたら、間に合ったのかなって……いや……美子ちゃん達にもっと早く会いにいっていれば……要するに俺が悪いよね……ホント」
「……そんな事ないよ……そういう運命だったんだよ……」
「運命……か。だとしたら、一体誰がシナリオ決めてるんだろうね。神様？ だとしたら、神様って絶対性格悪いよね。美幸の時といい、伊織さんの時といい、そして……あすかの時といい……何でこんな……」
「…………」
「ま……もう今更何言ってもしょうがないけどね……これからはもう間違わないようにしないと……」
「そうだよ、まだ先は長いんだから、間違えなければいいだけだよ」
「だよね。……で、無理を承知で美子ちゃんにお願いがあるんだけど……いいかな？」
「ん？ 私にできる事なら何でもいいよ。何？」
「俺の愛人のフリ、して貰えないかな」
「え？ な、何それ？ 別に愛人のフリじゃなくてもいいよ？」
「あ、いや……フリでいいから。で……一ヵ所ついて来て欲しいんだけど……いい？」
「別にいいけど……何する気なの？」
「……過去の清算。もう間違わない為に──今のうちにやっておかなくちゃいけない事、あるから……さ」
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