たくみの営業暴露日記 grand finale ~リサ~
■旅行中(美子と結婚する1カ月前)
「あ……美子、旅館にいく前にちょっと1か所寄っていいかな」
「……やっぱり。こっち方面に旅行っていうから、こんな事だと思ったよ」
「ごめん……会う訳じゃないから、さ。様子見るだけだから……これで」
「……バードウォッチングするからって双眼鏡持ってきたけど、まさかこれが目的だったの?」
「あ、い、いや……た、たまたまだから……」
「はいはい、じゃ、バードウォッチングいきましょ」
■リサの家から離れた所、車内より
──観察から30分後
「あ……」
「ん? どうした、美子? まさか見つけた? ……どこ?」
「あ……え~っと……お兄ちゃん、見ない方がいいかも……」
「いいから! あっち側ね。……あ……」
「あの人だよね……隣に男の人とベビーカー……凄い幸せそうに笑ってる……あ~あ~、あんなに肩寄せ合っちゃって~」
「……ホントだ……」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「……じゃ、もう行こっか」
「え? 寄っていかないの? 私は大丈夫だよ、別に」
「もう目的、達成したから……じゃ、車動かすよ」
「──! ちょっと待って! こっち見てる! あ……手、振ってる……」
「──! あ……やっぱりバレたんだ……前から凄い勘鋭い人だったから……変わってないな~……じゃ、行くよ?」
「え? まだ手、振ってるよ?」
「だからだよ。俺が行かないとずっと手、振ってるから」
「……あ、ホントだ。お辞儀してるよ?」
「美子にも気付いたんだ。……俺の事、よろしくって意味だと思う」
「え? あ、あそこから見える筈ないじゃん!」
「そういう人だから……試しにサムアップしてみて」
「(グッ!)……! あ……サムアップで返して来た……な、なんで?」
「だから、そういう人だから。……後5秒後にこっちに一礼して家に入ってくよ、多分」
「ま、まさか~……! ホ、ホントだ……」
「ね? じゃ、スピードあげるよ」
「う、うん……」
■旅館に向かう途中の車の中
「…………」
「ご、ごめん、美子……やっぱ怒ってる?」
「別に~……ちょっと嫉妬してるだけ!」
「──え? な、何で? 旦那さんも赤ちゃんもいたじゃん」
「……以心伝心そのものじゃん。あんなに離れてたのに心で会話してるというか何というかさ~」
「あ……い、いや……前から何となく分かるだけだから……」
「もし結婚してなかったら、どうする気だったのよ!」
「あ、それはないから。結婚はしてると感じてたから、もしもは絶対ないよ」
「……感じてた? 何それ……あ~、何か悔しいな~」
「ご、ごめん……」
「今日は記録更新するからね! それで許してあげる!」
「──え? む、無理だって! 俺、もうそんなに若くないから!」
「大丈夫! その為に3日間お預けしてたし、滋養強壮の料理出してくれる旅館選んだ訳だし。栄養ドリンクも……ね♡」
「……死ぬって!」
「今夜は寝かさないんだから!」
「……それ、男が言う台詞だって、多分」
「wwwwww」
「wwwwww」
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