#1 退職から2年後
退職から2年後、加藤は畑口の元を訪れていた。……あの時約束したとある事の目処が立った為、その報告として。
──退職から2年後
「たくみちゃん、久しぶり。元気だった?」
「よく分かりませんが、取りあえず今のところは倒れる気配ないですね。って、いつも倒れる直前まで分からんのですけどね」
「……大分、やつれたね。ちゃんとご飯食べてる? 寝てる?」
「ま、最低限は、多分……」
「そっか……やっぱりかなり無理してきたんだね……じゃないと、たった2年でここまでなれないか……たくみちゃんは今や業界で一番知名度あるって言っても過言じゃないしね」
「流石にそれは言いすぎですよ。せいぜいネット上ではに過ぎませんから。……ま、それでも正直出来過ぎですけどね。かなり運にも恵まれましたし」
「去年会った時は驚いたな~。あの雑誌持って来たと思ったら、ドン!と10ページ近くたくみちゃんの特集組まれてて……ネット上でも人気爆発しているのが手に取る様に分かって……ドキドキしたな~。ね、今日はどんな話、聞かせてくれるの?」
「……当初の予定とはかなり狂いましたが、ようやく業界一新の目処が立ちました。……これも伊織さんがヒントをくれたおかげですよ」
「何やるつもりなの? あ、ちょっと待って……私に当てさせて? たくみちゃんは応用力の天才だから……私の話からヒントを得たという事は……複合代理店の全国チェーン店化?」
「それも構想して、大まかな設計図もできていたんですが、立ち上げ直前の所でアイデアだけパクられてドロンされました」
「そ、そう……それは悲惨だったわね……」
「いえ、これが資本主義の世の中なんだという事がよく分かりましたので、ある意味感謝ですよ。……銭に汚いこういう人達もひっくるめて業界をぶっ壊す必要があるって分かりましたから」
「そ、そう……やっぱり分かんないな。……私の話からどう発展したか教えて?」
「……簡保と手を組んで、海外料率の保険を日本で発売しようかな、と」
「──?! どういう思考回路したらそうなるのよ……原型が全くないじゃない。それにいくら何でも、それは無理じゃない? 業界の反発も半端ないだろうし、法律だって──」
「俺が時の人になれば、どうですか? 例えば……自民党をぶっ壊す! 感動した! というお方のお墨付きがあったりとか」
「……は?」
「実は今、郵政向けの雑誌に連載している小説があるんですが、密かに人気になってるみたいなんですよ。で、どうやらそのお方も愛読しているみたいで、俺のファンみたいなんですよ。で、今度面談する事になったんです」
「……は?」
「www その顔、ずっと見たかったです。俺、伊織さんが驚く顔が一番好きでしたから」
「そんな話はいいから、続けなさいよ」
「はいはい。……そこの編集長もノリノリで、これを機に俺の小説を出版化してドラマ化して~とか鼻息荒くして言ってましたね。確かにあのお方の宣伝があれば、爆発的ヒットしそうですよね」
「な、何……その絵に描いた様なシンデレラストーリーは……」
「よく分からんですが、こういう話、ちょくちょくありましたよ? 某金融雑誌のお抱えFPになって、そこからメディア進出の話とか、営業講演で全国を巡る話とか。そういえば、公〇党から出馬依頼の話もありましたかね。……全部断りましたけどね」
「な、何て勿体ない事を……どうして断ったのよ、そんな美味しそうな話を……」
「いや、それやったら業界一新は無理になっちゃうじゃないですか。伊織さんとの約束もありましたし」
「私とのあんな約束、本気にしなくても──ごめん……たくみちゃんはそういう人だったね……私があんな事言ったばっかりに……」
「ま、結果オーライですよ。じゃなきゃ、ここまでたどり着けませんでしたから」
「……たくみちゃん、ホント凄いね。確かに海外料率の保険が簡保経由で流通する様になったら……既存の生命保険会社は全て……けど、既得権益の事を考えると相当な妨害が……もし実現するとするなら──ま、まさか……」
「www 元々そのつもりですよ。安いものじゃないですか、たかが俺1人の犠牲で業界一新できるなら。きっと、一時的に限りなく時の人になって、世論も味方して、あのお方が意地でも動いてくれますよ。改革ネタとしても申し分ないですし、ね」
「……けどそれ、たくみちゃんに何のメリットも……」
「www 元々未来なんて考えてませんから。伊織さんとの約束を果たせれば、他に何もいりませんよ」
「…………」
「独立系FPになるって夢は……業界一新された後、誰かが叶えてくれるかな? できれば俺がやりたかったけど……ま、二兎を追う者は一兎をも得ずですから」
「…………」
「ちょっと遅くなりましたが、もうすぐ約束果たせそうですよ。恐らく数年以内には──」
「もう十分だから……」
「──え?」
「もう十分、爽快な未来見させて貰ったから。ホント……ありがとね」
「い、いや……まだ全然実現してないですよ? あくまでまだ計画段階の話であって、時の人にすらまだなれてないですし」
「たくみちゃんならこの後の未来は手に取るように見えるでしょ? 私にそれが見えない訳ないじゃない」
「け、けど……今、俺がやらないと……こんなチャンス、きっと二度とないでしょうし……俺にしか絶対できないですし……伊織さんの希望──」
「────♡」
「……え、えっと……今の……は?」
「これが私の望みだから。たくみちゃんなら、もう分かったでしょ?」
「い、いや……全然分かりません。お、俺の事、死ぬ程恨んでた筈じゃ──」
「何言ってるの? そんな事ある筈ないじゃない」
「だ、だったら、あの時、何で……ま、まさか……」
「www 漸く気付いた? 試練って言ったでしょ? 全てたくみちゃんの為に決まってるじゃない」
「な、何で……? い、いつから……?」
「ん~、かなり前からだけど……具体的にはマルチの時くらいから……かな?」
「──?!」
「www その顔、ずっと見たかった~。私もたくみちゃんが驚く顔が一番好きだったから」
「そんな話はいいですから、全て教えて下さいよ!」
「はいはい。この際、全て話すわよ。……え~っと、初めてたくみちゃんの事を知ったのは……確か6年前だったかな?」
「──?!」
少し遠い目をしながら穏やかに話しはじめる畑口。加藤はこの後、全てを知り、そして大きな衝撃を受ける事となる。
挿話?
暫く間が空いてしまいました。
はい、ある意味今までで一番意味不明な内容じゃないかと。
・いきなり2年飛んでる
・フレンドリーな畑口
・創作でもやらないであろうぶっ飛んだ話
etc…
エピローグをどうしようか、どこから書くべきか、と色々悩んだ末、ここから書き始めました。(エピローグのテーマは予告?)
内容もかなりぶっ飛んでいて「意味分かんね~よ。何だ、この創作は!」と思われる方もいるでしょうが、こんな嘘みたいな話がリアルだったりします。
「色々あって、業界を完全にぶっ壊す為に海外料率の保険を簡保で発売する話を水面下でかなりの所まで進めていた」
これ、詳しくは独立後の話で書くと思いますが、限りなく実現手前までいってました。海外料率で日本市場を~という先は、現在も日本に普通にある外資、そのつては自分のIFAの師匠経由。(ただ、後から聞いたところによると、実はあまり乗り気ではなかった、と。リスクが大きすぎるから~と、さりげな~くオフショア金融へシフトさせていったとか言ってましたかね)
そして、偶然ですが郵政関連の雑誌に連載する事となり、狭い業界ですがその中で随一の人気を誇る事となり、とある方との面談約束まで。当時を知る人ならば、とある方のお墨付きがどれ程の意味を持つか、はっきりと分かるでしょう。X Japanなんか、その恩恵を最大限に受けてましたよね。
で、簡保側としても民営化という事で強烈なネタを欲していたところだよ、と。良くも悪くも常識をぶっ壊すが信条のとある方と組み合わされば、限りなく可能性は高まるよね、と。
そして、ダメ押しで某金融雑誌のコネでドカンと記事を連続掲載とかまで。(数千万程度の広告費をぶち込むという話まで水面下で)
ま、どこまで実現したかどうかは分からんですが、少なくとも「時の人」にはなれていたでしょうな。
……この「創作でもここまでのシンデレラストーリーはやらないぜ」という様な話、結果的に蹴ってます。色々理由はありますが、素直に書くと「畑口に止められたから」というのが真相だったり……
「全然意味分かんね~よ! これだけの話を蹴る程の価値があるのかよ、その畑口に!」
な~んてツッコミをいれる人も多々いるかもですが、ま……元はといえば、畑口の願いを叶える為だけに退職後2年は動いてましたからね。
「さらに意味分かんね~よ! 話飛ばし過ぎもいい所だろが!」
と、更なるツッコミを呼びそうなので、この辺で。
ま……エピローグを全て読めば、ある程度の疑問は解消される……かな?
我ながら、こんな導入でうまくまとまるか全く分からないですが、気合で書いていきます、はい。
こうご期待をば。
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