たくみの営業暴露日記

たくみの営業暴露日記 エピローグ #3 伊織と美幸(2)

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#3 伊織と美幸(2)

 美幸と姉妹の盃を交わし3年ちょっと一緒に住んでいたという畑口。びっくりする加藤にしてやったりの満足な表情を浮かべ、そして少し笑顔を浮かべながら静かに話しを続けた。

「たくみちゃん、前の美幸の住んでたマンションの間取り覚えてる?」

「え、えっと……確か3LDKでしたっけ」

「カップルが2人で住むには広すぎると思わなかった?」

「い、いや……立地の割に格安な賃貸料金だからと聞いていたので深く考えた事はなかったですが……ま、まさか……」

「フフッ……そのまさかよ。あそこは元々私達夫婦が住んでた場所だから。色々あって一緒に住む事になったのよ」

「え、えっと……同棲してる彼氏の話は……」

「そう言わせておけば、変な虫がつかないでしょ。あの子はずっとフリーだったわよ」

「うぅぅ……色々遠慮してた俺、バカみたいじゃないですか……そうと知っていればもっと早く──」

「駆け出しの頃のたくみちゃんの手に負える筈ないでしょ。そもそもあれだけの事をした後で1年以上も手を出さなかった男が何言ってるのよ!」

「ま、まぁそこ突っ込まれると何も言い返せないですが……よ、よく美幸、フリーでいられましたね。夜の街にいてあれだけ美人だったらさぞかし色んな話があったろうに……」

「そりゃ、私が散々男のいろはを叩き込んだからね」

「ま、まさかと思いますが、俺がやった例のみのりちゃんと同じ事を……?」

「当時はテレクラやダイヤルQ2だったけどね」

「???」

「説明は略すけど、要するに今も昔も男の頭の中はどす黒い欲望でできてるって事よ。ま、そんな経験を数ヶ月もさせれば、ね♡」

「うぅぅ……なんて酷い事を……そんな事したら、絶対男性不信になるに決まってるじゃないですか……」

「男に幻想抱くよりは数倍マシでしょ? それにしても私に感謝しなさいよ~、あんな上玉が誰の手垢もつく事なかったのは、紛れもなく私の教育の賜物だからね」

「──?! な、何を……言って……?」

「ん? 美幸はたくみちゃんが初めての男って話だけど、まさか知らなかったの?」

「し、知る筈ないじゃないですか! 今日の今日まで美幸は彼氏と数年同棲してたって認識してましたから。それに初めてそういう関係になった時、普通にリードされてましたよ、俺」

「あ、相変わらずたくみちゃんは私の想像の斜め上を……男性経験のない美幸に誘惑されるだけに留まらず、まさかリードまでさせるなんて……流石、稀代の変態……」

「い、いや……変態以前に、伊織さんの話が本当だったら、俺、究極に情けない男になりません?」

「wwwwww」

「うぅぅ……今更ながら、穴があったら入りたい気分ですよ……」

「何言ってるの? たくみちゃんらしさが溢れてる素晴らしいエピソードじゃない。末代まで自慢できる話だから、これ」

「ど、どこがですか……お、俺は本来もっと男らしく──」

「たくみちゃんは全然男らしくないところが、女性からみて非常に魅力的なんだよ?」

「──?!」

「多分だけど、さっき話してた、たくみちゃんに色々声をかけてきたり力を貸してくれた人達──どうせみんな女性でしょ?」

「──?! な、何で……?」

「ほ~ら、やっぱり。ホント、もしたくみちゃんがホストやってたら、絶対伝説になってたわよ」

「い、意味分かりません……」

「どんな女性に対してもイニシアチブ取られる男なんて、たくみちゃんくらいだから」

「い、いや……そんな事ないですって。俺だって──」

「美子ちゃんや幸子ちゃんにすら尻に敷かれてた男が何言ってるのよ」

「──?! ホ、ホントに美幸と伊織さん、仲良かったんですね……そんな事まで話してるとは……」

「こんな事で嘘言う筈ないでしょ! で、話を戻すけど、あんな引っ込み思案の年下の子達に尻に敷かれてコキ使われる男なんて、世の中広しといえども、たくみちゃんくらいしかいないから」

「うぅぅ……そんなバカにしなくても……」

「何言ってるの? 褒めてるに決まってるじゃない。女性というだけで見下される現代社会において、たくみちゃんは女性の希望そのものだから」

「──?!」

「日本社会にはびこる男尊女卑の闇は深いからね。そんな現代社会に対しアンチテーゼを唱える女性は決して少なくないから」

「──?!」

「結婚したら女性は家に入るべきという考え方自体がナンセンスなのよ! 私達は男共の家政婦になる為に生まれてきたんじゃないんだから!」

「──?!」

「女性だって社会進出したいのよ! 第一線で活躍したいのよ! 女性だけが結婚したら出世街道から外れる現代社会のシステム、おかしいと思わない?」

「い、いや……仰る通りだと思いますが……な、何の話でしたっけ?」

「世の男が皆たくみちゃんみたいになればいいって話よ」

「い、意味分かりません……」

「これからの時代、男性が女性を選ぶんじゃなくて、女性が男性を選ぶべきよ!」

「──?!」

「今までの女性が3高男性を望んで婚活した様に、これからは男性が3高女性の為に花婿修業するべきよ──たくみちゃんみたいにね!」

「い、いや……俺、そんな事した記憶ないんですが……」

「そこらのホストが裸足で逃げ出す程の接客術、それに加えてそこらの専業主婦では太刀打ちできない程の家事能力、そしてそこらの僧侶が霞む程の滅私奉公の精神……完璧じゃない! 修行の成果出てるじゃない!」

「い、いや……俺、専業主夫を目指してこうなった訳じゃないんですが……」

「それでもって、時には誰よりも男らしい面も見せてくれて驚かせてくれる……これが私の求める男の理想像よ!」

「い、いや……伊織さんの男の理想像は分かりましたが、何か話逸れてません? え、えっと……そうそう、美幸と姉妹の盃を交わしたという話は?」

「ん? 別に大した話じゃないし。ルームシェアで一緒に住む事くらい、普通の話でしょ?」

「い、いや……旦那さんいる家に同居させて3人で暮らすのは全然普通じゃないと思いますけど……」

「だから姉妹の盃を交わして私の妹って事にしたんじゃない。別に珍しい話でもないでしょ?」

「い、いや……そもそもどうして一緒に住む事になったんです? 何か衝撃的な出会いがあったり……とか?」

「ん? たまたまバーで飲んでた時に意気投合してカラオケ行って、流れで一緒に住もうかってなっただけだけど?」

「か、軽いっすね……もっとこう、運命的な出会いとかドラマティックな話とか──」

「小説やドラマじゃないんだから、そんな話ある筈ないじゃない。強いて言うなら、ちょっとだけ自暴自棄になりかけてたから、私ができる事をしてあげようかな~ってね」

「……こういう事、さらりとやっちゃう伊織さん、やっぱりカッコいいです。普通だったら、同情するだけで何もしないでしょうし、仮に何かしたとしても恩着せがましくしそうなのに……」

「ま、美幸のおかげでお店も繁盛したから、結局は持ちつ持たれつの関係だったけどね。……誰かさんのおかげでその関係もなくなって店は散々な目にあったけどw」

「ご、ごめんなさい……当時は俺、そこまで頭回らなくて……や、やっぱり恨んでますよね……」

「そりゃ、ね。今まで欲しいままにしてきた夜の街でのステータスや豊かな生活を捨てて普通の質素な生活なんて満足する筈ないじゃない、何て事をしてくれたんだ、社会の厳しさも何も知らないこの青二才が! ってね」

「…………」

「でも……同時にまた悔しさも……ね」

「──え?」

「何で私がたくみちゃんのした事を思いつかなかったのだろう……何で私がやってあげられなかったのだろう……何で私はもっと勉強してこなかったのだろう……って、今までの私の人生を全否定された気持ちに……ね」

「…………」

「私が美幸と過ごした3年間は一体何だったんだろう? あの子の時間を奪っただけじゃないだろうか? 私といなければアレキシサイミアやアレキシソミアにならなかったんじゃないだろうか? ……私が美幸を苦しめてたんじゃないか……って」

「…………」

「最後の最後まで何も言われなかったけど、きっと内心、私の事かなり恨んでただろうな~……」

「……それは絶対ないですよ……この世で一番誇れるお姉さんがいるって散々聞いてましたし」

「www そんな気を遣わなくていいから。きっとあの世で私の悪口言ってるに決まって──」

「新婚旅行、万座のスキー場に行く予定だったんですよ」

「……え?」

「俺と美幸……だけじゃなく、美子ちゃんや幸子ちゃん、豪君……それにもう1人、お姉さんを招待して」

「……え?」

「私が今までで一番楽しかった思い出の場所だからって。そこに、私が大好きなみんなと一緒にいけたらどれだけ幸せだろうって言ってましたから……」

「…………」

「最後の最後まで、伊織さんは美幸の大好きなお姉さんでしたよ」

「……────ッ」

「あれ? まさか泣いてるんです? 何があっても涙を見せなかった鉄の女の伊織さんが?」

「────ッ」

「伊織さんがした事は、全然無駄じゃありませんでしたから。伊織さんがいたからこそ……美幸は闇落ちする事なく、最後の最後まで笑顔で……ホント……ありがとうございました!」

「……私を泣かせようとしたって、そうはいかないから……!」

「www もう大泣きしてるじゃないですか」

「してないわよ! これはちょっと目にゴミが入っただけだから!」

「www そういう強がりな伊織さん、可愛らしくて俺、好きですよ?」

「わ、私をからかうなんて百年早いわよ! 本当に怒るわよ!」

「www いくらでも怒って下さい。俺、伊織さんの怒った顔も、大好きで──」

「────♡」

「/// ……え、えっと……今の……は?」

「ほ~ら、やっぱり動揺した。からかうっていうのはこうやってやるのよ」

「い、いやいや、それ反則じゃないですか。いきなりそんな事されたら誰だって動揺するに決まってるじゃないですか」

「たくみちゃんが悪いのよ。私を泣かせるような事、言うから」

「あ、やっぱり泣いてたんじゃないですかw」

「ち、違うって言ってるでしょ! 大体ね~、たくみちゃんは────」

「そういう伊織さんだって────」

……という具合に、脱線も交えながら、長い長い畑口の話は続いていった。

挿話?

引き続き、切りのいいところで区切りました。

ダラダラと話題がちょくちょく明後日の方にいきながら続いていますが、これでもある程度は物語仕様にまとめている方だったりします。リアルだと、「何でこの話になったんだ? よく分かんね……」という程、コロコロ話題が変わる人でしたから、畑口は。

「え、えっと……エピローグ、全く意味分かんないんだけど……?」

というツッコミ、あるでしょうが、ま……最後まで読んでみて下さい。そしたら、「はえ~」となる……かな?

次回あたり、意味不明な話を挟んで、その次くらいから核心へと。

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