第25話:娘とみのりちゃんと……
娘
「はぁ~~~~……」
「ん? どうしたんですか~?」
「いや、私事なんだけどね……さっき娘から大学落ちたって連絡あってね……」
「──?! 娘さん、そんなに大きかったんですか?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 妻子持ちだよ、って」
「いや、聞いてましたけど、ジュンさんの年齢からいってせいぜい中学生くらいかと思ってました。私と年齢殆ど変わらないじゃん。どんな子です? 名前は何って言うんですか?」
「まー、普通の子だよ──って、名前聞いて何する気?」
「いや、Facebook探ってどんな子か見ようかな~って」
「ま、いいけど。名前は●●ね」
「えーっと、●●ちゃんは、と。──きゃはは、これだ♪」
「──流石こういうのは早いね」
「そりゃ私、まだ若いですから♪ ……へぇ~、●●ちゃん、受験生だったのに彼氏いるんだ~」
「──?! な、何それ? 彼氏いるなんて初耳だし、そもそもどうやって分かったの?」
「簡単ですよ~、Facebookを本名でやってるからTwitterもそうかな~と思って探ったら簡単に見つけれました。ほら、このTwitterの投稿に彼氏と一緒なう、って♪」
「──! 2月に旅行いってるじゃん……友達の家で最後の追い込みとか言ってたのに……」
「ほら、●●ちゃん、この写真なんか完全に恋する乙女になってるよ。あ~あ、●●ちゃん、親泣かせの子だね……」
「ホント、受験生にとって大事な時にな~にやってたんだか。ま、いーけどね……」
「ん~~、大学落ちて落ち込んでるかな~、お姉さんが●●ちゃんを慰めてあげようかしら。……エイッ!(ポチ)」
「──え? い、今、何したの?」
「いや~、Facebookの友達申請してみました♪ 友達になってお姉さんが色々現実を教えてあげようかな~って♪」
「やめてーーーー!!」
「wwwwww」
娘とみのりちゃん
「フフッ♪ (ササー、ササササー)」(みのり嬢スマホ弄りの図)
「お、何か楽しそうだねー。友達とLINEでもやってるの?」
「(チラッ ニヤリ)フフフフー♪(ササー、ササササー)」(こちらをチラリと見てニヤリとした後、スマホ弄りを続けるみのり嬢の図)
「ん? その意味深な笑顔、怖いな~。まーた何か手取りが確定する前に爆買いでもした?」
「い~え、違います♪ 何だと思います~? フフッ♪」
「えっと……嫌な予感しかしないんだけど──」
「フッフッフ♪ ジャーン!!」(不気味な笑顔と共にスマホを見せるみのり嬢の図)
「──?! な、何で娘とLINEやってるの?」
「簡単でしたよ、Facebook経由で友達申請からTwitterでそれとなく写真や記事に”いいね”して、それからメッセージ送って友達になってLINE教えて貰って現在に至りまーす♪」
「うわ……やめてーー!!」
「いーじゃないですか~、娘さんの事、もっと知りたいと思いません? 親の知らない娘さんをわたくし、みのりお姉さんが教えてあげます♪」
「……取りあえず俺の事は言わないでね、お願いだから……」
「えー、どうしよっかな~^^ あーお腹すいたな~、喉も乾いたな~(ニヤリ)」
「えぇ、買ってきますよ、ドリンクも持ってきますよ。だから、お手柔らかに、ね……」
「あ、そんなつもりじゃなかったんですけどね~、ありがとうございまーす(ニヤニヤ)」
──10分後、買い物を終えて──
「あ、お帰りなさーい♪ 色々成果ありますよ~(ニヤリ)」
「……ま、聞こうか……」
「まずは~、彼氏は予備校で知り合って2歳年上の二浪の人だって。12月から付き合ったって言ってたよ~」
「……一番ダメな時期じゃん。ホント何やってたんだか……」
「後ね~、卒業旅行で彼氏と海外旅行にいくって。友達と行くって親には言う予定とか言ってたよ~」
「うぅぅぅ……今時の子は皆こうなのか。こうやって大人になっていくのか……」
「でね~、合格祝いにぷち整形代出して欲しいって言ってたよ♪ 一重を二重にしたいんだって。今日卒業旅行と合格祝いの話を親にするって言ってたよ~」
「!!!」
「ふふふ、お父さんも大変だ~♪」
──人の家庭のプライバシーに土足でズカズカ上がり込むみのりちゃんでした。
娘の彼氏とみのりちゃん
──翌日
「ジュンさん♪ 娘さんの彼氏、どんな人か知ってます?」
「……そもそも娘から一言も彼氏いるって聞いてないし、知る筈ないじゃん……」
「フッフッフ♪ ジャーン!!」(満面の笑顔と共にスマホを見せるみのり嬢の図)
「うわ──やっぱり探し出したんだ……」
「えぇ、私の手にかかればこの程度は容易いです♪」
「ま……もう驚かないけどね。で──これか。……何かチャラいなぁ……」
「えぇ、私も何か気に食わないんです。調子に乗ってるというか女好きというか。ほら、この成人式の時の写真なんて女の子と次々肩組んでニヤけてるし……」
「……成人式ってセンター試験前後くらいの時期じゃん。そりゃ大学落ちるわ。それ以前に、娘という彼女がいながら他の女とこんな事してるなんて……男として腹立つな……」
「でしょ? 私も●●ちゃんの味方だから、この男の裏垢教えてあげたの。ちょっとショックだったみたい♪」
「(その裏垢をダダッと見て)──なるほど、二股かけてたんだ、このバカ男。ま、娘も早めに男の素性知れて良かったわな──それにしてもこのバカ男、ムカつくなぁ。天罰が下らないかな……」
「そう言うと思ってましたよ。──フッフッフ♪ ジャーン!!」(得意げな表情と共にスマホを見せるみのり嬢の図)
「うわ、やっぱり……! バカ男と既にLINEしてるし、この暇人」
「ちょ……! わ、私は別に暇人じゃありません! 寝る間も惜しんでやったんです! ほら、ちゃんと内容も見て下さい!」
「はいはい、見ま……──!! アポ取ってるじゃん、しかも今日、これから?! 内容は──うわ、足フェチなんだ、このバカ男」
「フッフッフ♪ これが私の徹夜の努力の結晶です( ̄¨ ̄)」
「こ、ここまでやるとは……! 想像の斜め上いってたよ」
「ね、この男、天罰が下りそうでしょ?」
「……天罰というか人誅だけどね」
「wwwwww あ、来ました! じゃ、いってきまーす。ちゃーんと写メも撮っておきますね。お楽しみに♪」
──努力と才能の無駄遣いという言葉がぴったりのみのりちゃんでした。
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