Epilogue Risa #1 神様に祈った夜
──畑口が他界した1年5ヶ月後の11月19日 0:00
■かつてのいきつけのカラオケ屋近くの公園
(あれ? 何でこんな所に来たんだ? 訳分かんね……しかもこんな深夜に……相変わらず記憶飛ぶな~……何となくココ、良く知ってる気するけど……ま、いいや……今日はここで一晩過ごすか、お酒でも飲んで)
「……やっぱりここに来たね……久しぶり」
「…………」
「……誕生日、おめでと」
(……あれ? 幻聴? とうとうここまで来たか、俺。意識あるのに……リサの声が聞こえるや……ま、いいか……)
「とうとう……30歳になったね」
(……やけにリアルな幻だなぁ……姿までくっきり見えるし……ま……いいや。幻でも何でもいいから……話相手になって貰おうかな……)
「今は……誰か一緒の人……いる?」
「ハッ! 見たら分かるでしょ? いる筈ないじゃん。いたら1人でこんな所で酒飲んでないって」
「……あすかちゃんは?」
「お? 懐かしい名前だなぁ。全く連絡ないね。旦那と上手くやってるんじゃないの? 俺の事なんかすっかり忘れて立派な主婦やってるって~」
「……あれから……ずっと1人で……やってるの?」
「ん? 当たり前じゃん。伊織さんとの約束、果たさなくちゃいけないからね~。ワクワクする話、たんまりしてあげないと。伊織さんを満足させられる男、きっと俺くらいしかいないから」
「…………」
「それにしても伊織さん、どこほっつき歩いてるんだろうね。いつの間にか退院しちゃって、さ。リサ、何か聞いてない?」
「な、何言ってる……の……?」
「なんか店に行ってもとっくの昔に辞めたって言われるしさ~、どのなじみの店に行っても来てないって言われるしさ~。……みんな口裏合わせた様にもういないって……俺、伊織さんにNG出されてるのかな……」
「…………」
「そうそう、こないだ看護師の美香さんがさ~、伊織さんのいる場所に連れてってくれるって言うからさ、着いていったら……寺でやんの。ホント、悪ふざけ酷いよね……」
「……────ッ」
「ん? どうした、リサ。何か嫌な事、あった? もしかして斎藤さんと上手くいってない? ったく、あの人は……な~にやってるんだよ……新婚早々、リサを泣かせるなんて……」
「────ッ」
「そういや、貧しい生活を送らせたくないからって本業以外に夜のバイトを掛け持ちするって言ってたっけ……って、リサに寂しい思いさせちゃ、本末転倒じゃんね。俺が斎藤さんに文句言っといてやろうか?」
「────ッ」
「あ……そっか、これ幻だったっけ。やけにリアルだから思わず本物と勘違いしちゃってたよ。……現実では泣いてる筈ないわな……疫病神との縁が切れて、きっと幸せになってるだろうし……」
「────ッ」
「あれ? 何の話してたっけ? ……ま、いいや。取りあえず、家に帰って仕事しなきゃ……あれ? どうやって帰るんだったっけ? どこだったっけ……? ……あれ?」
「────ッ」
「ハハッ……最近こんなんばっかだよ。……記憶がちょくちょく飛んじゃってさ……このままいったら、自分の名前すら分からなくなっちゃうかも……って、その前に野垂れ死ぬか。ハハッ……いい気味でしょ、ざまーみろって……笑ってよ」
「────ッ」
「そんなに……泣かないでよ。笑っててよ、幻だったら……さ……俺、リサの笑った顔、見るのが好きだったから……さ……」
「────ッ」
「ハハッ……俺、何言ってるんだろ、幻相手に……ま、いいや……これが夢だったら、さ……少しだけでいいから……俺を抱きしめてよ……ちょっとだけでいいから……頑張ったねって……褒めてよ……泣かせてよ……って無理──」
「────」(強い抱擁)
「あ……れ? 本当に抱きしめられている感触……が? ……何……で?」
「……こんなになるまで……バカ────ッ」
「ハハッ……最近の幻って……触れるんだ……温かいんだ……まるで本物みたいじゃん……」
「……────ッ」
「俺……頑張ったでしょ? ……よくやったでしょ? ……よく我慢したでしょ? ……褒めてよ、ちょっとでいいから……さ」
「……────ッ」
「ハハッ……リサってこんな胸大きかったんだ……何か落ち着くし……もう少し強く……抱きしめてよ……」
「────ッ」
「……幻でも……何でもいいからさ……もう消えないでよ……お願いだから……夢なら夢でいいからさ……一生醒めないでよ……もう……1人にしないでよ……神様……お願いします……お願いします!」
「もう……大丈夫だから……ずっと傍にいてあげるから……私が……一生面倒みてあげるから」
「……────────ッ」
「取りあえず……ホテルで休もっか……身も心も……私が癒してあげるから……満たしてあげるから……」
「お願いします……お願いします……お願いします……お願い──」
「────」(強い抱擁)
あれから約1年9カ月──加藤はキレイに壊れていた。この時、仮に医師に診断を受けたならばどの様な病名を付けられていたであろう? 統合失調症、睡眠時遊行症、鬱、記憶障害etc… 順調に心身とも壊れていた。現実か夢か幻か……まどろみの中であれだけ恨んでいた神様に祈っていた。何度も何度も……何度も。
補足?
このリサとの話はどちらかというと独立後の話・絡みになるので略そうかと思いましたが、これを書いておかないとEpilogue Asukaがあまりにも意味不明になるが為、付け足す事にしました。
連載終了後、時系列的にEpilogue Asukaの前に移動させる予定です。
このリサという女性・・・エピローグでもエンディングでも軽く登場させて「誰だよ!」と思った人も多いでしょうが、実は前に軽く登場しています。
ここの最後の方に、さらりと・・・笑
ま、中途はばっさりと略しますが、結論から書くと「彼女がいなかったら、かなりの高確率で30歳の時に野垂れ死んでいた」でしょう。九重や畑口と同等、下手するとそれ以上に自分にとって重要な人物になります。
えぇ、ホントこの頃は酷い状態で・・・軽く以前にIT病の絡みで症状書いてますが、それ以外にもこんな感じで「おい、ここどこだよ!」と、気が付いたら訳分からん場所にいる~とか、しょっちゅう・・・幻覚もしょっちゅうで、よく誰もいない空間に向かって話かけてたり・・・正確には、何が現実で何が夢だか分かんね~よ、みたいな感じでしたかね。
そんな自分を救ってくれたのが、このリサでした。
このエピローグを読めば、、、色々と???だった部分が少しは解消する・・・かな?
畑口及び九重のエピローグと違い、そこまでのインパクトはないかもしれません。ま、ラストは少々モヤモヤ感が残る・・・かもですが。
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