たくみの営業暴露日記

たくみの営業暴露日記~最後の210日~第15話:男心・・・?(後半)

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第15話:男心・・・?(後半)

ネカマデビュー・・・?

 加藤の致命的弱点である「男心」を指摘し、徹底的に教え込むとやる気満々の畑口。「たくみちゃんは女の子に変身よ! 今日からたくみちゃんの名前はみのりちゃんよ!」という意味不明な事を言う彼女。その真意は果たして……?

(前回の続き)

「え、えっと……俺、とうとう女装デビューさせられるって事ですか?」

「(チッチッチッ)……違うわ。……本当の女の子になるのよ!」

「え、えっと……まさかと思いますが、タイに飛んで手術受けてこい! って事ですか? ちょ、ちょっと考える時間貰っていいですか?」

「違うわよ、そこまでしなくても女の子になれる場所があるでしょ」

「え、えっと……サウナ場とか成人映画館……カップル喫茶とかですか? ちょ、ちょっと勇気要りますね。……できたら、俺がやられてる時、伊織さん……俺の手を握ってて貰えません?」

「……それも面白そうで興味あるけど、そこまでしないわよ。九重ちゃんに殺されたくないからね。……そんな事しなくても簡単に女の子になりきれる場所、あるでしょ? 例えば……ネット上とか」

「──あ! な、なるほど……要するにネカマになれ! って事ですね?」

「正解! 取りあえずは10人くらい、みのりちゃんとして男の人とメールでやり取り続けてみよっか。10往復できれば、取りあえずクリアよ」

「りょ、了解。で、みのりちゃんって何ですか?」

「みのりちゃんは──かつて数多の男を惑わし虜にしてきた永遠の18歳、私のかつての源氏名よ!」

「──?!」

「プロフィールは──短大1年生の18歳、155Cmで体重は43Kgのスレンダー体系の清楚系お嬢様タイプで、ちょっと高飛車で生意気な点もあるけど基本明るくて元気な天真爛漫な不思議っ子よ!」

「──?!」

「5年の月日を経て、平成の妲己と呼ばれた小悪魔みのりちゃん……ここに復活よ!」

「──?!」

「私の築き上げたブランド、汚したら承知しないからね! 責任重大だから!」

「……まさかと思いますが、今まで化粧や女装の練習をはじめ、変態知識や女心の勉強は……このみのりちゃんを引き継ぐ……為?」

「フフフッ……この3ヶ月の集大成が……みのりちゃんよ!」

「……うぅぅ、俺はどれだけ無駄な時間を過ごしてしまったんだ……プロファイリングを身に着ける為と思ってたのに、まさかネカマになる為だったとは……騙された……」

「何言ってるの? 全てたくみちゃんの為に決まってるじゃない。みのりちゃんの経験は、確実にたくみちゃんを次のステージへステップアップさせるから」

「意味分かりません……」

「四の五の言わず、やりなさいよ! 文句は後でいくらでも聞くから!」

「わ、分かりましたよ……やってやりますよ! ネカマでも何でも! どうせごねたところで絶対やらされる未来が見えますし。……やるからには、徹底的にやりますよ!」

「ほ~ら、私の性格分析よりちゃんと先読みできる様になってるじゃない。成果出てるじゃない。その調子よ」

「…………」

……という事で、ネカマデビュー決定。

秘めたる才能の開花

「フフッ流石稀代の変態……私が教えるまでもなく女の子の文章になってるじゃない」

「……俺という一人称を私に変えただけですけどね……」

「たくみちゃんの場合、声の低さと俺という一人称がなければおかまが裸足で逃げ出す程の女の子気質があるからね。それが……アンバランスの正体よ!」

「い、いや……外見と声質的に普通に話すと威圧感与えるかな~と思って、なるべくマイルドに話す様に心掛けていただけですが……」

「後、そこらのキャバ嬢が裸足で逃げ出す程のさり気ない気遣い、そして手つき。この私ですら思わず唸る程の接客テク……流石、天然小悪魔……」

「訳分からん事言わないで下さいよ……新人の頃、勝野さんに叩き込まれただけですって。グラスの持ち方やビールの注ぎ方、料理のよそい方とか……後、毎晩の様に九重の世話させられてますし……」

「そして……子供すら裸足で逃げ出す程の純粋無垢な性格……善にも悪にも染まってしまいそうな危うさ……たくみちゃんは……若い頃に私がイメージした理想的小悪魔な女の子そのものよ!」

「……多分、褒められていると思いますが、全然嬉しくないです……俺、男の中の男とか、芯が強い男とか目指しているんですが……」

「前に言ったでしょ! たくみちゃんには無理だって。たくみちゃんは……坂本龍馬を目指すべきよ!」

「……おぉ! 何かカッコイイですね。死ぬ時はたとえどぶの中でも前向きに倒れて死ね、とか世の中の人は何とでも言え、我がなす事は我のみぞ知るとか、男の中の男って感じですよね」

「違うわよ! 坂本龍馬は稀代の女たらしで男たらしでもあったんだから! 見方を変えれば常識知らずで天真爛漫の小悪魔な女の子そのものよ!」

「……聞く人が聞いたら、怒り狂いそうな事言いますね……」

「とにかく! たくみちゃんはみのりちゃんをやっていけば坂本龍馬になれるから! ほら、つべこべ言ってる間に凄いメール来てるじゃない。さっさと返信しなさいよ! 私が添削してあげるから」

「りょ、了解……」

……という感じで強引に言いくるめられ、ネカマ続行。

──とある出会い系掲示板に書き込み募集した後

「え、えっと……何か意味不明な暗号みたいな事書いてあるんですけど、どういう意味です?」

「ホ別というのはホテル代別っていう意味で、NNというのはゴムなし中出しという意味ね。で、苺というのは1.5万の略よ。要するに、ホテル代別で1.5万払うから、中出しHさせて、という意味ね」

「えっと……生でしてできたらどうするんですか、この人。万が一だってあるじゃないですか」

「そんなもの、やり逃げするに決まってるでしょ。常識よ、そんなの」

「……屑ですね……まだ短大1年生のみのりちゃんの未来を何だと思ってるんですかね」

「男なんてそんなものだから」

「え、えっと……今度は履いてるパンストを5kで譲ってくれないかって聞かれたんですが……5kって何ですか?」

「1Kは1000円の意味ね。要するに5000円で履いてるパンストを譲ってくれって事よ」

「……全く意味不明です。何でそんなものが欲しいんですか?」

「それがフェチの世界だからね。だからブルセラショップが成り立つのよ」

「な、なるほど……そもそも、何で年上の彼氏募集って書いてるのにこんな訳分からんメールばかり来るんです? コイツ達、日本語読めないんです?」

「これが大半の男の正体だから」

「あ! そ、そうか……きっと肉体労働者や低学歴の人がこんな感じ──」

「むしろ逆よ。普段真面目そうな人に限って、こんなだから」

「ま、まさか~……いくら何でも──」

「この人のアドレスに注目してみて。go.jpってなってるでしょ? これ、政府機関のアドレスだから。後、この人はトヨタで、この人は電力会社ね」

「──?! よ、世の中狂ってますね。そもそも今ってまだ勤務中の時間ですよね。一部とはいえ、仕事するフリしてこんな事してる人がいるなんて……」

「一部じゃなくて大半と考えるべきだから。接待っていったら、女の子がいる店っていうのが定番でしょ?」

「い、言われてみれば……」

「とある大企業の採用基準は学歴ではなく外見が重要視されるっていうのは知ってるよね? その理由は考えた事ある?」

「……他の男性社員のやる気促進、及び政略結婚の如く会社に縛り付ける……為?」

「表立っては絶対そんな事言わないけど、それが現実よ」

「そして……女性の人もまんざらでもない……少しでもステータスの高い男の人を狙ってるよ……と」

「ランクの高い企業に入れば、必然的にランクの高い人との出会いも増えるからね」

「……そんな歪んだ世の中だから、心が満たされない人も多いよ、と」

「だから、既婚者の遊びや不倫が後を絶たないのよね」

「逆に……今の世の中の仕組みを気持ち悪いと思っている人も中にはいる訳ですよね……俺みたいに。じゃ、そのマイノリティの人達を集めれば……後、意外にネット上で占いとか需要がある? 正確には占いを入口とした話相手? プロファイリングの練習になりそうですし……」

「流石、稀代の変態たくみちゃん……みのりちゃんを2時間やっただけでこんな話に発展するなんて……」

「ネットの世界は……人の心が……如実に表れる媒体なんだ……だから、現実社会で聞くような上辺だけの綺麗ごとなんか望まないんだ」

「だから2ちゃんねるとか大人気なのよね」

「逆に……これだけ心をさらけ出している場所だから、やり様によっては会う以上に人の心を掴む事が出来る?」

「──?!」

「仮想現実とリンクさせていけば、一度も会った事ない人でも数百万くらいいける?」

「た、たくみちゃん? ま、また危ない事考えてる?」

「いや……まだ朧気ですが、俺の人格を100%文字に乗せる事ができれば……想像力も相まって面白い事になるかな、と……伊織さんは、この事を俺に伝えたかったんですね! ありがとうございます!」

「い、いや……ま、まぁ……そうよ!」

「よ~し、そうと分かったら……みのりちゃん頑張るぞ~。絶対100人惚れさせてやる! 目指せ、現代の坂本龍馬ですね!」

「……流石、稀代の変態……」

その後、加藤は2月までの間に「みのりちゃん」として暇を見つけては数多の男とやり取りを繰り返し──2代目みのりちゃんの役目を十二分に果たす結果を残す事となる。

そして……

──応用力(発想力)の化け物

加藤の秘めたる才能が──大きく目覚めようとしていた。……こんな事がきっかけで。

11月19日

「たくみ君、お願いごと1つだけ聞いてあげる、何がいい?」

「え~っと、どういう事?」

「今日誕生日でしょ? 私からのプレゼント♡」

「ん? 別にいいって~、気持ちだけで十分だって~」

「遠慮しないで言ってみてよ。ね、何がいい?」

「……俺、凄いとんでもない事言うかもしれないよ? 後悔しても知らないよ?」

「い、いいわよ! 何よ!」

「じゃ、さ……────」

「──?!」

──寝室の布団

「うぅぅ……何でこんな事に……普通、あれだけの事でここまでして貰おうと思う?」

「www 俺、元々空気読めないから」

「結婚するまで毎晩添い寝しろなんて……一体どういう神経してるのよ!」

「だから言ったじゃん、別に約束守らなくても構わないからって。聞いてあげるっていう事は叶えてあげるっていう意味じゃないともいえるし」

「そんなペテン師みたいな事、私のプライドが許さないから! それにしても……うぅぅ……私は何をやってるんだろう……」

「ま、いいじゃん、花嫁修業だと思えば。それに人肌って意外に寝やすいから、質の高い睡眠取れて美肌効果もあってラッキーじゃん」

「添い寝なんて、フィアンセとすらした事ないわよ! このバカ!」

「別に結婚したら嫌でも毎日一緒に寝る訳だから、ま、いいじゃん。俺が寝るまで……30分だけでいいから。俺、1人でロクに寝れないし……悪夢や幻聴ですぐ目が覚めちゃうから、身体が持つように……って、流石に迷惑かけすぎか、ごめん。やっぱいい──」

「やるって言ってるでしょ! 何度も言わせないで! こうなったら徹底的にやるわよ! 枕は1つでいいから!」

「い、いや……流石にそこまで望んでないから。それに腕枕って案外腕が疲れ──」

「さ……おいで!」

「……は?」

「私が腕枕して抱きしめてあげるから! 早く頭寄こしなさいよ!」

「お、お前……バカ? どこの世界にフィアンセがいて他の男を抱きしめて寝るヤツがいるんだよ……もしバレたら──」

「そんな私に毎晩添い寝しろっていう人が、よくそんな事言えるわね! そもそも一緒に住んでる事がバレたら一環の終わりでしょ! だったらいっその事、美肌効果の為と思ってとことん付き合うわよ!」

「わ、分かったよ……けど、俺に手を出さないで──」

「それは私の台詞でしょ! ったく、もうこの男は……(ブツブツブツ……)」

──添い寝TIME

「……気分はどう?」

「い、意外に悪くないけど……やっぱ逆だって……なんか女の子になった気分だよ……」

「www たくみ君は今、みのりちゃんでしょ? だからあってるじゃん」

「……俺、こんな事してたらホントにオネエになっちゃいそうだよ……」

「www なればいいじゃん。そしたら、私が結婚した後でも会えるじゃん」

「……本気で考えよっかな」

「www じゃ、私、お姉さんになってあげるね」

「い、いや……妹だろ、俺より2歳年下──」

「みのりちゃんは18歳でしょ? だったら私のが年上だから私がお姉さんであってるじゃん」

「……意味分からん……」

「そういえば、たくみ君……まだ仕送りしてるの?」

「ん? 当たり前じゃん。何言ってるの?」

「ホント、よくやるよね。自分の人生、台無しにする気?」

「いや~、そんな事ないよ? 俺だっていい人がいたら付き合いたいし、機会があれば遊びたい──」

「とか言いながら、私が知ってるだけでも何人も断ってたじゃん。中には私からみても勿体ないと思う子まで」

「いや~、俺、甲斐性ないし、将来性もないから。あすかだって言ってたじゃん、波乱万丈の俺と一緒になるのはリスキー過ぎるって。……俺自身、そう思うし……」

「……あんな振り方しなくてもいいじゃん。あれじゃ、みんなに嫌われちゃうよ?」

「ま……嫌われた方が変に後に引かなくていいじゃん。下手に尾を引いたら……それこそ申し訳ないし……」

「仕事……ホントに辞める気なの? 後悔しないの?」

「ま……決めた事だから」

「……せめて外資系でもいって営業やればいいじゃん。誘われてたんでしょ? 勿体ないじゃん、こんなに成績取れてるのに」

「ロウソクが消える前の何とかってヤツに過ぎないって。お前も言ってたじゃん、俺、営業向きじゃないって。俺もそう思うし……身体の事もあるし」

「トレーナーなら出来てるじゃん。小橋さんも勧めてくれて──」

「完全に燃え尽きるまでに、FPやらなきゃ。お前も勧めてくれたし……彼女がやりたがってた事だから、せめて俺が叶えてあげないとね」

「せめて代理店になるとかすればいいじゃん」

「それじゃ、彼女が言ってた完全中立の独立系FPにならないから」

「……上手くいく見込みあるの?」

「さぁ……独立系FPで成功している人、少なくとも俺は知らないし。いたとしても日本に数人いるかいないかじゃない? ま、やれるだけやってみるよ」

「そんなんじゃ……野垂れ死んじゃうよ? ホントに」

「ま、そうなる可能性のが高いだろうね。けど……やらなきゃ」

「たくみ君……ホント、バカだね」

「俺でもそう思うよ……プライベートも仕事も、もっとうまい事やればいいじゃんって。けど……俺、こういうヤツだから」

「だけど……ホントいい男だね」

「……ありがと。あすかもいい女だよ」

「冗談じゃなくって! ……バカ!」

「本音だよ……だから、せめてお前だけでも、俺の生き様、近くで見ててよ。サクセスストーリーを見せる事は多分できないけど、それなりに楽しませられると思うから」

「……分かった。一生……近くでたくみ君の事、見ててあげるから。私だけでも……一生理解者でいてあげるから」

「……ありがと。そう言ってくれると思ってたよ」

「けど……今の、一歩間違えたらプロポーズそのものじゃん……何考えてるのよ……」

「そういうあすかだって……ノリノリでパーフェクトな回答してるじゃん……何考えてるんだよ……」

「wwwwww」

「wwwwww」

挿話?

ネカマについて。

4ヶ月くらい、暇を見つけてはやってましたね。当時は簡易な掲示板が主流でした。どれくらいの人数を相手したでしょうか……軽く4桁はいったと思います。結果……色々な事を学びました。ホント、どうでもいい隠語をはじめ、人の下心やら汚さetc…

よく自分のメール文章は独特だ、マネしようにもできない、等よく言われる事なのですが……そのルーツはこのネカマ経験が元になっているというのが真実だったりします。文字に性格を如何に乗せるかをイメージ、とか。(ま、こんな事を考えてメールする人はそうそういないでしょう)

どこまで畑口が意図したかは分からんですが・・・結果的にその後の基礎的力がこの時につけれた事が、、、後の大成に結びついたものと自己分析しています。

ホント、ありがとうございました!

九重に関しては……もうちょい後でまとめて書きます。

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