たくみの営業暴露日記

たくみの営業暴露日記 第三部 第25話:外資系生保からの誘い

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第25話:外資系生保からの誘い

──3月上旬

「おぅ、加藤君。丁度いい所に来た。こちら、外資の桃田さんだ」

北さんの所へ馴染み活動にいった加藤に対し、北さんは突然こともあろうに外資の桃田さんを加藤に紹介してきた。

※北さんは以下参照。

「え……あ、ど、どういう事ですか?」

「いやぁ、案外外資さんっていいよ。加藤君、もしかして転職しないかな、と思ってな、ははは。一度話を聞いてみたらどうよ?」

冗談交りに話す北さん。
恐らく1年前ならば二つ返事で「結構です」と言い放ったであろうが、正直かなり会社の居心地が悪くなっていた加藤にとっては、新たな職場という選択肢を見てみるのもいいか、と思っていた所であった。

「まぁ、いいですけど……仮に俺が転職したとして、北さんどう思います?」

「ん? 俺? 別に加藤君の会社が気にいって入っている訳じゃなくて、加藤君が気にいって入ってる訳だし、逆にいい商品扱っている所にいてくれた方が俺は嬉しいなぁ」

なんだかくすぐったくなるような事を言われ、照れながら、桃田という人物と名刺交換をする。名刺交換をし、予想外の言葉を加藤は聞く事になる。

「あれ? 君があの加藤君? いやぁ、御会い出来て光栄だよ」

あの加藤君と言われても全く心当たりがない加藤は、どういう事なのか聞き直した。

「あぁ、君の名前は案外聞くんだよ、お客さん達からね。どれだけの人から「加藤君に入っているから」と断わられた事か。本来なら国内生保からの切り返しは難しい事ではないんだけど、君の契約は中々切り返しが難しくて、ね。一体どういう営業をしてるのか、どういう人なのかというのは前々から見てみたかったんだよ」

なんだか茫然とする気持ちになる加藤。追い討ちをかけるように、桃田が続ける。

「で、色々なツテで調べてみたら、予想通り凄い成果をあげてきている人物だと分かってね。たまたま北さんと話をしてたら、君と親しいというから、是非紹介して欲しいと頼んでいた所なんだよ。単刀直入にいうと、君、うちに来ない?」

「──え?」

突然の話に、一瞬加藤の思考回路が停止する。それを見計らったように、桃田がさらに続ける。

「善は急げ、だ。さ、これから色々説明させてもらうから、近くの喫茶店にいこうか」

「え? え??」

絶妙なタイミングで加藤を誘いだし、ホント気がついたらソコにいた……という表現がピッタリな程、いつのまにか喫茶福井にてコーヒーを頼み、目の前には桃田がいた。

「改めて初めまして、桃田といいます。こう見えても君の会社でいう営業部長をやってます」

と言われ、とっさに先程貰った名刺をまじまじと見てみる。確かに肩書きはそのような名が書いてある。

「で……君なら理解出来ると思うから、まずはうちの商品を見て欲しい」

といい、各種設計書とノートパソコンを取り出し、加藤に見せる。正直、この外資の名は聞いた事があったが、商品の詳細を見た事はなかった。結論からいうと──唖然とした。加藤のいる会社と比べて圧倒的に細かい設計が可能な点、何よりも商品力の圧倒的な差。思わず加藤はボソっとつぶやく。

「……こんな商品、設計出来たら……販売もさぞかしラク……でしょうね」

いわば、心の叫びに近かった。
一昨年まではあまり感じなかったが、去年あたりからは特に「主力商品を売れ」「如何に主力商品に結び付けるか」というような体制に変わっていたが為、加藤が設計した商品を販売したとしても、逆に怒られるぐらいになっていた。

しかも、会社の方針なのか、主力商品以外の手数料は激減しており、実質一昨年と同じ販売数をしたとして、収入は2/3程度になってしまう状態となっていた。そんな現状であるが為、加藤には外資の商品力にただただ唖然、非常に眩しく映った。

「まぁ、商品力もそうだけど、手数料も違う訳なんだな、これが」

と、続いてノートパソコンを叩き、手数料を見せる。ここでも加藤は愕然とする。加藤のいる会社と比べ、少なく見ても倍は違う収入体系となっていたのである。さらに桃田が続ける。

「君の事は、個人的に非常に買ってるんだよ。当然、今すぐ返事をしてくれとは言わないが、考えてみてくれ。君が来てくれるなら、特別に謝礼金だって払う用意をしてあるんだ。正直、うちの社員は皆若くて、経験がそれ程ない奴ばかりだ。君はうちの社員にとっても、いい刺激・存在になると思うんだよな」

「…………」

この時、加藤は流れそうになる涙を堪えるのに必死であった。どれくらいぶりだろうか、この様な前向きな話を聞いたのは……評価されたのは……必要とされたのは……

会社でのいじめに近い扱いを半年以上受けていて、辞める決意を固めていた加藤にとって桃田の言葉、誘いはまるで別世界の様に眩しく感じた。

一旦喫茶福井を出て桃田と別れた後、加藤は再び喫茶福井の事務所に籠り、ゆっくりと話を整理した。何か知れないが、自分の噂を嘘かホントかは分からないが聞いていて、自分を買ってくれている。お世辞でも悪い気はしない。商品力、設計は格段に上。収入も格段に上。……条件はかなりいい。

が、いざリアルで転職となると、今の会社の事が頭を過ぎる。今でこそこんな事になっているが、右も左も分からない自分を育ててくれたのは、この会社な訳で……恩を一切感じていないといえば嘘になる訳で……

この様に色々頭の中でグルグル思考を巡らせていると、ふと喫茶店のカウンターの方よりちょっとした談笑が聞こえてきた。

(あれ? 珍しいな。この時間はいつもお客さんいない筈なのに。……あれ? 美幸? 今日は休みの筈なのに……)

さらに談笑は続く。見知らぬ男との談笑に何とも面白くない思いがこみ上げてきて、加藤は思わずその様子をこっそり覗こうと思っていた時──

「あ、たくみ君、いたんだ~。ちょっとおいでよ、丁度たくみ君の話してたところだから」

と美幸の声が。何か自分の心を見透かされたかの様に感じ、何ともばつが悪そうに出ていく加藤。美幸と楽しそうに談笑している男と視線が合う前に、今度は男の声。

「おぉ、加藤君。30分ぶり!」

……先ほどの桃田であった。いまいち状況が掴めず、ポカーンとしてカウンター席の桃田の隣に座ると、桃田が喋り出した。

「いや~、さっき喫茶店出て別れた後、またここに戻ってくる加藤君が見えてね。もう一押し話し込もうかどうか入口で迷っていたらウエイトレスの彼女に声かけられてね。ちょっと話したら、加藤君と親しい関係者って事が分かったから、それで今まで話込んでたんだよ」

「──?!」

「たくみ君、良かったじゃん、速攻で転職先見つかって。これで専業主夫やらなくて済むね♪」

「え? あ、い、いや……さっき話聞いたばかりで、まだ転職すると決めた訳じゃ──」

「じゃ、うちの人、来月からよろしくお願いします」

「任せて下さい。私がしっかり指導・管理していきますので。先ほど伝えたポストを用意して待ってますので」

「──?! お、俺……今、転職する事になったの? 来月? い、色々と意味分かんないんだけど……」

「ん? 願ってもない話じゃん。支度金まで用意してくれるっていうし。どうせ転職するんだから、善は急げだよ」

「……ま、こういうのは勢いが大事だよね、確かに。……じゃ、今の会社辞めて……来月からお世話になります!」

「おぉ! それは願ってもない話だよ。まぁ、何があったか……はあえて聞かないけど、お疲れさんだったね。君は多くのお客さんを抱えてると思うから、お客さんに挨拶だけでも回っておいた方がいいよ。それが社会のマナーだから、退職はそれが終わった後にした方がいいよ。だから……最短でも再来月かな? ま、今度飲みにいこうよ、前祝いにさ、ははは」

退職を決意したわずか2日後、まるで予めこうなる事が決まっていたかの様に転職の話が舞い込んできて、ほぼ即決で次の進路を決定した加藤。

──これで……全てが上手くいく。順風満帆な人生がこれから待っている。

こう信じて疑わなかった加藤──残酷で過酷な運命がこれから待っている事を知る由もなかった。

聖母

──その日の夜、寝室にて

「……美幸、今日はありがと」

「ん? 何が?」

「美幸が喫茶店に来てくれなかったら、今日転職決めれなかった筈だから。……ホント、助かったよ」

「どう致しまして♪」

「ところで……何で今日喫茶店来たの? しかもあんな時間に。今日火曜日でシフト入ってなかったじゃん」

「ん? 言ったじゃん、ママさんに頼んで多く入るって。だから、昨日頼んで入る時間増やしたんじゃん」

「──?! も、もう動いたの? え、えっと……俺、今日転職決めなかったら──」

「明日から専業主夫だったね♪ けど、それも幻になっちゃったね。……たくみ君の手料理も食べてみたかったな~」

「……明日から、予定通り幸子ちゃんに指導して貰うよ」

「──え?」

「美幸だって外に出て仕事してるからね。……共働きだから、お互い家事もやらないとね。ちょっと先になると思うけど、俺も料理覚えるから」

「キャー、ありがと──♡」(思いっきり抱きつきの図)

「ちょ!/// 顔をそんな胸に押し付けれたら……またスイッチ入っちゃうって///」

「いいよ……しよ♡ 新婚旅行の時までに新しい家族……作ろ♡」

「……────」

「♡────」

──ピロートーク

「……たくみ君、ホント良かったね。……一杯苦労したもんね。ホント……今までお疲れ様」

「ちょ! 不意打ちでそんな優しい言葉言わないでよ。思わず涙出そうになったじゃん」

「www ……いいよ。……おいで……また思いっきり抱きしめてあげるから」

「……ぅぅぅ────ッ」

「……どうした~、たくみ君~、そんなに泣いちゃって~」

「俺……認められて……褒められて……久しぶりに……──ッ」

「うん……」

「今までずっと……透明人間だったから……どれだけ契約とっても……──ッ」

「そっか……」

「嬉しくて……嬉しくて……────ッ」

「ホント……良かったね……」

「けど……不安で……怖くて……また同じ……だったら──ッ」

「今度は……きっと大丈夫だから……ね」

「うぅぅ……────ッ」

「大丈夫……何度でも助けてあげるから……ね」

「……────ッ」

「今日もこのまま……寝よっか。……おやすみ、たくみ君」

「……zzz」

──美幸の聖母の様な優しさに包まれ、それに甘えきってしまっていたこの頃。一体どれだけ美幸に救われただろう、助けられたであろう。同時に、どれだけ負担をかけていたのだろう……運命を狂わせていたのだろう……悲劇の幕開けは、すぐそこまで迫っていた。

挿話

今回も本編をぶち込みました。

外資の条件は……日生と比べてベラボウによかったですね。ちなみに支度金50万だったかな? その他不思議な銭までつけてくれるとの事だったし(笑)

物語では限りなく即決になっていますが、リアルでは話を聞いて3カ月してから返事した記憶があります。

リアルでは誘いを受けた時、本当に転職する事になるとはまだ夢にも思いませんでしたね。これも一つのやめるキッカケだったんだよな、と後に振り返って思ったりもします。

昔、メルマガで何て書いたかなぁ、辞めた理由。

・会社への不満の数々
・高度障害保険金絡み
・外資からの誘い

こんな感じだったと思いますが、一番大きな理由は……次回の出来事でしたかね。

次回の話は……キツイです。

ホント、心が弱い人や引っ張られやすい人は飛ばす事、オススメします。

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