第17話 11月戦~見込がなくて白紙!~
──11月戦。
みんな第一報をそれぞれ準備しなければいけないのだが……この生保営業の仕事は非常に波がある仕事である。とれる、とれない、運がいい、悪いetc…
うちのチームもリーダーが先頭をきって鼻息を荒くしている。
小橋「もうすぐ11月戦よ。もちろんうちのチームは全員実動よ!!」
……みんな顔色が冴えない。ネタがないのだ。
そして第一報の日がやってきた。……契約がとれなかった。みんなもとれてなかった。
(うわぁ~怒られる……)
内心そう思っていた。
「のり子、どう?とれた?」
「いえ、すいません……」
「そう、まぁ契約は思った様にはとれないからね」
(怒られると思ってたのでホッとした)
「でも0件の報告は出来ないわね、ちょっとこっちにおいで。──今後とれそうなお客さんは誰? 教えて!」
(なんだろう? 見込み客の整理やアドバイスしてくれるのかなぁ)
「それじゃ、○○さんを成約入力しましょう!」
「──え? だってまだ返事も聞いてないんですよ」
「いいの、後でちゃんと申込書もらってこれば。こうすると精神的にとても楽になるでしょ?大丈夫、私もみんなもそうしてるから」
成約入力、それは保険の新規加入した事を会社の機械に入力する事である。当然これは申込書を頂いた段階でするものである。
が、うちのチームや他の人たちも支部の圧力で白紙の成約入力をやむなくしていた。こんな架空の契約なんて、後味が悪いだけなのに……
……私は胃が痛くてその日は眠れなかった。
(○○さんに返事をもらわなくては、しかもYesという返事を……)
……悪い事は重なるもので、返事はNoだった……
不備解決がまだの人は毎日いつ解決するか朝礼中に営業部長に聞かれる。『設楽さん』という呼び声を聞く度にドキッとする。
……だってその契約は元々ない契約なのだから……
そんな心に後ろめたさをもった状況では他の契約もうまくとれないものである。結果、11月にも関わらず、初めて『0件』となってしまった。
小橋リーダーはというと、20件近くの成績。すごいなぁと関心してた。
──ところが……
締め切りが終わってからも不備解決の確認(いつまでにやるか)を毎朝する。私も『申込書はいつもらってくるんだ』と聞かれた。
設楽「すいません、それダメです」
部長「じゃ、後で来い」
(ふぅ、やっとこの苦痛から解放される……)
部長「小橋さん、○○さんと○○さん(他17名程)の申込書はいつでる?」
小橋「今月中にとってきます!」
(──え? 今いったの11月にとったお客さんみんなじゃん。全部白紙だったの???)
明らかにみんな疑問を抱いていた。
……白紙だったら誰だってとれるわ!!
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