第16話 宗教への訪問
──晴天の土曜日。
仕事が休みでゆっくり話がきけるからということで二人で出かけていった。すぐ近くの薄暗いマンションをエレベーターで8階まで上がると、そのマンションの外装にとても似つかわない豪華な大理石ばりの部屋に通された。
何やら変わった音楽というか呪文が聞こえてくる。
……あ、怪しい……
少し恐くなって足がすくんでしまった私の背中を小橋リーダーがポンと叩いた。中には女2人・男1人の信者らしき方がいて、意味深な笑顔を浮かべていた。そのうちの一人がこちらへやってきた。
「小橋さん、こんにちわ。この方がこの前電話でお話されていた方ですね。どうぞ、こちらへ……」
(どうやらこの人が幹部らしい)
「突然ですが、あなたは宗教的なお話は聞いたことありますか?」
「いえ、ないです。なんか怪しいと思っていましたから……」
「そうですか、それは幸運でしたね。私がこれからお話する事だけが本当の真実ですから」
(うわぁ~、なんかいかにも怪しそうじゃない……)
──15分間、怪しい話を色々と──
「──それで御霊を浄化するという事は、あなたの先祖からの間違った行いを正し、正しい方向へ導くという事です。とりあえずあなたから浄化してもらって、親や兄弟も順番に浄化していただいてはどうでしょうか?」
「……(話を聞いてなく、ボーっとしていた)」
「──さん、設楽さん! 聞いてますか?」
「(ハッと我に返り)は、はい、分かりました」
「そうですか。ただしこの浄化は無料ではないのです。1回3万です。でもこの浄化を受けておくと色々な特典があるのです。例えば神社に御参りにいった時なんですが、あれだけの人数がいっぺんに色々な願いをしても、神様が全部聞き入れてくれないんですよ。でも、私達の会員に入れば、会員だけにスポットライトが天からおりてきて──なんと! 神様がお願いを聞いてくれるのです! それに────」
……まぁよく話は覚えてないけど、何をするにでも金、金、金……しかも自分がこの宗教(?)を人に何人か紹介したら自分のステージが上がって見返りがある(お金が発生)様になるとの事。
……これって、非常に悪質なカルトじゃないの? 小橋さんはこの御霊の浄化によって自分が保険をとれる様になったと思い込んでいるみたいだし……
まぁ『神頼み』という気持ちもわからないでもないけど、小橋リーダーも何もこんな怪しい宗教にハマる事ないのに……
……なんか帰り際に変なテープを聞かされた。そのテープを聞いて信者たち(含小橋リーダー)は体を震わせ、遠い目をしていた。
(うわぁ~、目がいっちゃってるよぉ~~~)
その後? 当然キッパリと断わりましたよ。だけど、あんな所に魅入られる人、分かんないなぁ……
マルチといい、宗教といい、本当に多趣味(?)な小橋リーダーでした。
*彼女は現在もこれを続けており、新人が入るたびにここに連れ込んでいるらしい。
コメント