たくみの営業暴露日記雑誌のボツネタ

第9話 その後

たくみの営業暴露日記
スポンサーリンク

第9話 その後

その後の事

 この話は前回の前田さん(高度保険金がおりた人)の続き、結末であり、実際にはもう少し後の事も含まれている。

 数週間後。先日高度障害保険金が出て保険加入して頂いた前田さんの所へ挨拶に寄ってみた。

「こんにちは、加藤です。近くまで寄ったので挨拶に来ました」

「あらぁ、加藤さん、どうも~。さ、どうぞ入ってよ」

 前回同様、やけに明るい対応に頭のどこかで違和感を覚える。 部屋に入ってみると、ダンボールが数点あるだけで、家具の殆どがなくなっている。明日にでも引越しするかのようである。

「あれ? 引越しでもされるのですか?」

「えぇ、こないだの保険金でマンション決めて来たのよ。3日後には引越しするのよ。ここも長い間住んでて愛着でもあるかなぁと思ったけど、新しい場所見たらもう一日も早くここを出たくてしょうがないわ。そうそう、一括で払って来たのよ。ビックリしてたわ、営業の人。もう家具も買い揃えたから、古い家具は殆ど捨てちゃった」

「え……タンスとか冷蔵庫とか、全部買い揃えたんです?」

「えぇ! だって、新しい所にあわないもの。全部立派な家具で揃えたのよ」

「──え?」

 マンションの衝動買いまでは100歩譲っていいとして、家具を一新してしまう点あたりから少々違和感を感じていた。

(いくら保険金がかなり多く入ったからといって、ちょっとお金を遣い過ぎではないのか? このままいったら……すぐお金なくなってしまうのでは?)

「何かねぇ、これだけのお金があると、どれだけ遣っても残高が減らない気になるねぇ。いやぁ、今が人生で一番楽しいわ、私」

 明らかに前田さんの「何か」が壊れたように加藤は感じた。 その予感は──適中する事となる。

 その後の前田さんのお金を遣うスピードは尋常ではなかった。車の買い替え(中古国内車から新車外車へ)、家具の一層(値段を聞くのが恐いくらいな、家具に関しては素人の自分ですらそう感じる家具がズラリと)。 家政婦を雇い、旦那さんの世話を任せ、毎日豪遊。 着る服もブランド品ばかりetc…

 まぁよくもここまでお金をつかえるなぁとある意味感心してしまう程の使いっぷり。 月に優に200万は遣っていたのでは。

 億を超す財産、実に3年ちょっとで底をついたと風の噂で聞く事になる。 人間とは不思議なもので、一度お金を沢山使う生活をしてしまうと、中々元には戻らないようで。前田さん、いつ頃からか借金をして裕福な生活を維持しようとしていたとの事。

 ここで少々曖昧な表現をしているのは、豪遊をするようになってからは前田さんと中々会わなくなってしまっていたからである。(会わなくなった、というより相手にして貰えなくなったといった方がいいか)

 多額のお金を手にした事で、前田さん自身の人格というか性格がガラっと変わってしまったから。 なんていうか、ごう慢になったと表現したらいいのか。 前は非常に謙虚な方で話していて気持ちのいい方だったのだが……

 保険金を受取って4年経過したくらいに、前田さんと数年ぶりに会う機会があり、話をした。なんと、借金が増えに増え、自己破産をするとの事。 その時に漏らした一言がまた印象的だった。

「こんな事なら保険金なんて受取らない方が良かったよ……」

 非常に、皮肉な結末に。
 本来遺族の幸せを維持するが為の保険が、結果的に人をさらに不幸にする事になるなんて……

 この出来事以降、加藤は保険金を受取ってお金遣いが荒くなる・ごう慢になる人とはその後は付き合いをする事をやめた。 人が自らの手によって落ちていく姿、見たくはないから。

挿話

これもボツネタ。

保険とは何ぞや? 万が一の際、人に喜ばれる為のものじゃないのか? という根本的問題を様々と見せられた……そんなケースの一つでした。高額保障を受け取ったら……自らの許容範囲以上となると……身を亡ぼすきっかけにすらなる……この事は加入する立場の人だけではなく販売する側においても是非とも知っておいて貰いたい点ではないか、と。

この講座の元の出来事ですね、これも。

前の話 目次  次の話 

コメント

  1. […] 前の話 目次  […]

タイトルとURLをコピーしました