#22 シスコンとブラコン
──10月下旬
──ピンポーン
「は~い、どちらさんです──お、お兄ちゃん……」
「……ごめん、空気読まずまた来てしまって……迷惑だと思うけど……無理を承知で……俺を助けて……下さい。また一緒に住まわせて……下さい。お願い……します!」
「……ずっと……待ってたんだから────ッ」
「美子……ちゃん。俺……ここで美子ちゃん達と生きていきたい……です。また家族にして……下さい! お兄ちゃんでいさせて……下さい!」
「いいに……決まってるじゃん! バカ────ッ」(ギュ~ッ)
「ちょ、ちょっと美子ちゃん……そんなに抱きつかないで……ちょ、ちょっと反応しちゃうから」
「────♡」
「ちょ!/// いつもと展開違うじゃん。ホントにスイッチ入っちゃうから」
「────♡」
「///ちょっ! ま──」
「────♡」
「(ハァハァ)美子ちゃん/// ダ、ダメだって……」
「……しよ♡」
「それはホントに不味いって……一線を超えたら兄妹でいられない──」
「別に普通だって。仲の良い兄妹だったらみんな──」
「絶対やってないって! いくら俺でもそれくらい分かるって!」
「お兄ちゃん、分かってないな~。今の少子化問題、若者の未婚率が高い原因は世の中にシスコン・ブラコンの兄妹がそれだけ増えたっていう証拠だよ?」
「──?!」
「遊園地とか夜のイルミネーション、毎年カップルでごった返してるでしょ? カップルの数が減ってないのに婚姻率や出生率が下がってるのっておかしいと思わない?」
「──?!」
「日本国憲法第24条が何よりの証拠だよ。『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立』とあって、近親者間の性交自体を法律上禁止していないし。近親者間の事実婚認定もOKだし、ね。もし兄妹での婚姻を認めたら、あっという間に少子化問題も婚姻率低下問題も解決するって言われてるし、ね」
「そ、そうなの? し、知らなかった……」
「──♡」
「じゃぁ……幸子ちゃんともした方がいいのかな」
「──え?」
「幸子ちゃんも何か兄妹仲を深めたい感あるし……だったらそれに応えた方が……美子ちゃんの話だと、そういう事になるよね?」
「あ、い、いや……」
「あ……よく考えたら美子ちゃん程は幸子ちゃんと仲良くなってないから……ここで住まわせて貰う為にはむしろ幸子ちゃんと──」
「ダメに決まってるじゃない! ホント、バッカじゃないの?」
「──え? どうして?」
「民法732条に”配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。”ってあるから。もし重婚したら、刑法184条にある重婚罪で2年以下の懲役が科せられるんだからね! 2人はダメなの!」
「そ、そうなんだ……知らなかった……仲良し兄妹というのは1人限定なんだ……」
「そ、そんなの誰でも知ってる常識だよ! 日本は法治国家なんだから、法律は守らないとね!」
「な、なるほど……そっか、幸子ちゃんとはしちゃダメなんだ……」
「……何、残念そうな声出してるのよ! そんなに幸子としたかったの?」
「あ、い、いや……そんな事、ないです。美子ちゃんだけで十分です」
「……だったら、証明してみせてよ」
「え? ど、どうやって?」
「……しよ♡」
「え? い、いや……まだ心の準備が──」
「ここは元気じゃん♡ ────」
「ちょ! ちょっと待って────」
──ピロートーク
「──くぅ! ひと運動して飲むビールの味は格別だな~」
「うぅぅ……美子ちゃんと……とうとう一線超えちゃった……せっかく守ってきた操が……」
「www お兄ちゃん、絶倫だね」
「──! 美子ちゃんが半ば強引に──」
「普通、そんなに出来ないから。……そんなに私、良かった?」
「……メチャクチャ……ね///」
「♡ また……する?」
「い、いや……も、もう勘弁を……」
「冗談だよ~。私も流石に限界だから。……また、夜に、ね♡」
「えっと……今更こんな事、聞くのは遅すぎる気がするんだけど……よくよく考えたら何で美子ちゃん、ここにいるの? 結婚して旦那さんの所で一緒に住んでるんじゃ……?」
「今日、お兄ちゃん帰ってくる予感したから♡」
「……ま、それはいいとして……今更なんだけど……兄妹で身体の関係はよくある事として、それ以前に……結婚した美子ちゃんに手を──」
「思いっきり出しちゃったよね~。しかも何回も何回も。世間ではこういう事を不貞行為、不倫って言うんだよ。私、最悪新婚早々離婚されちゃって路頭に迷っちゃうかも」
「ご、ごめん! ホント、美子ちゃんに何て事を……もしこれが原因で離婚する事になっちゃったら、俺が一生責任持って面倒みるから」
「……それ、ホント? お兄ちゃん、一生面倒みてくれるの?」
「も、もちろん! どんな事でもして償うよ! 責任取るよ!」
「……そこまで熱烈に言われたら、応えない訳にはいかないな~。しょうがないな~、離婚して一生面倒みさせてあげる♡」
「……あ……れ? 何か微妙に話が変わっている様な……」
「取りあえず籍入れるのは世間体とか考えたら1年後くらいが妥当だと思うけど、それでいい?」
「──え? 結……婚?」
「それにしてもお兄ちゃん、意外に大胆だよね~。新婚の私にアプローチして堕として略奪愛を成功させるなんて」
「……略……奪……愛?」
「強烈なプロポーズだったよ。離婚して俺と一緒になってくれ! 一生面倒みるからって♡」
「……プロ……ポーズ?」
「私をその気にさせたんだから、責任持って私を幸せにしてよね。私もお兄ちゃんを幸せにしてあげるから」
「え、えっと……ちょっと展開についていけないんだけど……もしかして、これで俺と美子ちゃん、1年後に結婚する事になったの?」
「ん? そだよ。今この瞬間から私はお兄ちゃんの婚約者だよ♡」
「えっと……マジで?」
「そだよ。冗談でこんな事言う筈ないじゃん」
「け、けど兄妹じゃ結婚できないじゃん。さっき言ってたじゃん、日本で未婚率や出産率が低いのはシスコン・ブラコンの兄妹が増えたせいだって。俺ら兄妹じゃん」
「お兄ちゃんと私は本当の兄妹じゃないから、何の問題もなく結婚できるじゃん」
「あ……れ? 言われてみれば……」
「お兄ちゃん、私達と家族になりたいって言ってたよね? だったら私と結婚すれば正真正銘の家族になれるじゃん」
「た、確かに……結婚すれば法的にも本当の家族になれるね……」
「じゃ、完璧じゃん。大好きな妹と結婚できるなんて、シスコン界の憧れの的じゃん」
「シスコン界ってのはよく分からんけど……お、俺、シスコンだったの?」
「何言ってるの? お兄ちゃんは誰の目から見ても疑いようのない立派なシスコンだよ。シスコン界ランキングの3本の指に入るよ、きっと」
「……ま、いいや。……なるほど、結婚すれば不自然なく一緒に住み続けられる訳か……言われてみたら当たり前の話だけど、何か目から鱗だよ」
「でしょ♡ 兄妹を演じて一緒に暮らしていくより、よっぽどか現実的だよ」
「な、何かキツネにつままれた気分なんだけど……あれ? なんか昔、こんな強引な展開を経験した様な……デジャヴ?」
「────♡」
「ま……これも運命ってヤツかね。……流石、美幸の妹(ボソッ)」
「──え? 何?」
「何でもないよ。……美子ちゃんこそ、離婚して俺と結婚する事になって、それでいいの?」
「いいに決まってるじゃん」
「……何で?」
「だって、私、ブラコンだもん。大好きなお兄ちゃんと結婚できるなんて、ブラコン界の憧れの的だから♡」
「……美子ちゃん、ブラコンだったんだ……」
「そだよ。ブラコン界ランキングの3本の指に入るくらいにね。……一緒にランキング1位目指そうね♡」
「……参考までに、どうやったらランキング上がるの?」
「そ・れ・は・ね……────♡」
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