第10話:第三の拠点~花屋~
──初回訪問から3日後
「こ、こんにちは~。ホントに来ちゃいました~」
「あ、加藤さん。お待ちしておりました♪」
「あ……これ、会社の粗品パクって来ました。メモ帳とラムネ一袋……いります?」
「ありがとうございます♪ 丁度メモ帳欲しかった所だったんです。ラムネも大好きです♬」
「(ボ────)」
「??? どうなさったんですか?」
「あ……い、いえ……思わず日高さんの顔、魅入っちゃってました///」
「(クスッ)私の顔で宜しければ、いくらでも魅入って下さい♪」
「い、いや/// そう言われると逆に見にくいなぁ……」
「(クスッ)加藤さんって素直な方ですね♪」
「いや、日高さんを目の前にしたら男の人はみんなこうなるでしょ」
「そんな事ないですよ。こういう事言って下さる方は、加藤さんが初めてです。普段も他の女性の方にこのような事、仰ってるんですか?」
「い、言ってないですよ! 日高さんが初めてですよ。普段はこんな事、絶対言いません。それほど、日高さんのキレイさは衝撃なんです!」
「www ありがとうございます♪ こうやって口説かれるのも悪くないものですね♬」
「いや、口説いてないって!」
「wwwwww」
──1ヶ月後、7月初旬
「こんにちは~。また来ました~」
「あ、お待ちしてました♪ 今、冷たい麦茶入れますね♬」
「ありがと! あ、コレ……会社の粗品をパクって来たよ。何故か八ツ橋あったんで……嫌いだった?」
「あ、大好きです♪ それにしても良く来ますね。そんなに保険の営業のお仕事はお暇なんですか?」
「いや、忙しいよ~。気合で時間を作ってココに通ってるからね。日高ちゃんとの会合が今の俺の生き甲斐だから」
「www だったらもっと会いに来て下さいよ。私も加藤さんに会える日を楽しみに仕事してますので♪」
「相変わらず男を悦ばせる事、言ってくれるね~。本気にしちゃうよ? ホントに頻度あげちゃうよ?」
「是非是非♪ あ、今日も私の顔、じっくり観察します?」
「ありがと。……ホント、この世のモノじゃないくらいキレイだな~……ここまで来ると、芸術だよね」
「www 毎回毎回、良くそこまで言えますよね。ある意味尊敬します」
「俺もビックリだよ……日高ちゃんにはスラスラ~っと思ったまま言葉に出ちゃって……当然、日高ちゃんだけだよ、こんな事言ってるのは」
「www そういう事にしておいてあげます♪」
──7月中旬
「こんにちは~」
「そろそろ来られると思ってました♪ 丁度お茶いれたところです、はい♡」
「おぉ……ありがと。あ、今日はお中元の缶ビールが余ってたから、そのまま持って来たよ。日高ちゃん、ビールは飲む?」
「あ、ごめんなさい。……ビールは飲めないんです」
「と、ごめん。よく考えたら日高ちゃん、未成年だったね……ま、まぁ……お父さんかお母さんにでもあげてよ」
「いえ、せっかく持って来て下さったモノですから……ココで冷やしておきますね」
「──え?」
「今度来た時、冷えたビールお出ししますね♪」
「い、いや……仕事中に飲酒は流石に……」
「酔いが冷めるまで、ココで休んでいけばいいじゃないですか」
「け、けど……それだと2時間くらいいる事になっちゃうよ? い、いいの?」
「いいですよ♪ あ、おつまみも用意した方がいいですか?」
「あ、それは大丈夫。日高ちゃんという最高のつまみがあるからね」
「確かに、加藤さんにとってこれ以上の贅沢はないですねw」
「……言うようになったねぇ、日高ちゃん……」
「wwwwww」
──7月下旬
「こんにちは~」
「www 今週3回目ですね。ホント、良く来ますね」
「そりゃ、日高ちゃんのご要望とあらば、喜んで参上しますよ。あ、今日は羊かんね」
「ありがとうございます♪ 今日もビールでいいですか?」
「お! 気が利くじゃないですか~。一仕事終えた後はビールに限るよね」
「www まだ14時じゃないですか。もう今日のお仕事、終わったんですか?」
「今日はね……夕方から仕事が数件入ってるんだよね。恐らく22時くらいまで仕事かな……だから、それまでは日高ちゃん見て充電しないとね」
「www どうぞ、私でいくらでも癒されて下さい♪」
「ありがと。……ホント、キレイだよね、日高ちゃん。あ~、彼氏さん、羨ましいな~」
「www 彼氏はいませんよ」
「またまた~、日高ちゃんレベルなら毎日誰かに告白されるんじゃないの? 芸能人と付き合っていても俺は驚かないよ」
「www ホントにいませんから。こんな風に言うのは加藤さんだけですから」
「ま……これだけの美人さんだと、高嶺の花的存在で逆に声を掛けにくいかもね」
「www そんな私と一緒にいられる加藤さんは幸せ者ですね」
「ホント……一生分の運を使い切っちゃった気するよ。末代まで俺の家系は不幸続きかも……」
「wwwwww」
──8月初旬
「ふぅ……暑いね。あ、アイス買って来たよ。食べる?」
「ありがとうございます♪」
「あれ? ちょっと髪切った?」
「!!! よ、よく分かりましたね。後ろ髪、1センチくらいしか切ってないのに……」
「そりゃ、日高ちゃんを観察しまくってるからねぇ。少しでも変化あればすぐ分かるよ」
「ホント、良く見てますね。……そんなに私の事、見てて、よく飽きませんね」
「美人は3日で飽きるっていう言葉あるけど、それって嘘だって日高ちゃんで知ったよ。いや……日高ちゃんが規格外にキレイだから……なのかな?」
「ホント……毎回毎回違う台詞、よく思いつきますね。どれだけレパートリーあるんですか。ここまでくると、凄いです」
「そりゃ……毎晩、次言う台詞考えてるからね。予習と復習はしっかりとしないと、ね」
「wwwwww」
──8月中旬
「ただいま戻りました~」
「www お疲れ様です♪ 今日はどうでした?」
「おかげ様で1件、取れました!」
「おめでとうございます♪ 頑張った加藤さんに、ご褒美あげますね♬」
「お! 何々?」
「ちょっと免許証出してください」
「ん? いいよ。──はい」
「……(ペタッ)はい、どーぞ♡」
「──え? 日高ちゃんのプリクラの写真?」
「そうですよ♪ これでいつでも癒されて下さい♬」
「あ、ありがと///」
「もっと頑張ったら、もっと凄いご褒美あげますね♪」
「うぅ……ある意味会社の上司より鬼かも、日高ちゃん。こんな事言われたら、倒れるまで動かざるを得ないじゃん」
「一生懸命頑張っている加藤さん、素敵ですよ♡」
「……その言葉に乗せられて、もうひと頑張りしてこようかな……じゃ、いってきまーす!」
「また夕方、来てくださいね♪」
一体どれだけの時間を日高ちゃんに割いたであろう。ある一時期だけを切り抜いたら、彼女と一番会っていたであろう。挨拶代わりに口説き文句、それに乘って応えてくれる日高ちゃん。何とも不思議な会合を繰り返していたら──いつの間にか彼女の花屋が第三の営業拠点となっていた。そして、こんな一見意味不明なやりとりが……加藤の営業スキルを大幅にアップさせ、成果を挙げ続けるきっかけとなっていった。
挿話?
はい、作風すら変わってますね笑
リアルそのもの、モロ黒歴史に近いです。
一番酷い時なんかは、13時から19時まで入り浸ってくっちゃべってましたね。
通いまくればそれなりに(?)仲良くなるものでして、いつしか自分専用の椅子、それに書類棚まで用意、冗談抜きに簡単な事務所機能まで持つ拠点になっていました。
一仕事終えた時、とびっきりの美女が笑顔で出迎えてくれる──これだけで俄然仕事のモチベーションって上がるんですよね。
また、冗談抜きに口説き文句やシャレ話を前日に考え実践を繰り返していたら、普通の営業時にも応用が利いて、特にアプローチ能力が飛躍的に上昇していったという・・・
基本、自分の指導者は勝野になりますが、本当の意味での指導者はこの子だった・・・といっても過言ではないです。
次回、さらにぶっ飛びます笑
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