#23 2人の妹
思念伝達
──その日の夜
「お兄ちゃん……お帰り。ホント、よく戻ってきてくれたね」
「……zzz」
「あすかさんとの旅はどうだった? 一杯あすかさんの事、思い出して辛かったでしょ」
「……zzz」
「あすかさんとは会えた? 話できた? 元気だった?」
「……zzz」
「旅の最後……死ぬ気だったでしょ? あすかさんと同じ場所で……けど、できなかったんだね」
「……zzz」
「最後、あすかさんに止められたんでしょ? こっちに来ちゃダメって。あすかさんがお兄ちゃんの死を望む筈ないもんね」
「……zzz」
「あすかさん、怒ってなかったでしょ? 感謝してたでしょ? ……お兄ちゃんがやってきた事、想い……ちゃんと伝わってたでしょ?」
「……zzz」
「あすかさんなら大丈夫だって。きっと天国で伊織さんやお姉ちゃんと楽しく過ごしてるから。心配しないでいいよ」
「……zzz」
「お兄ちゃんは……これから幸せにならなきゃ。お姉ちゃん達の分まで……精一杯生きていかなきゃ」
「……zzz」
「お兄ちゃんが幸せになれるまで、私は精一杯応援するから。それまでは……兄妹でいようね」
「……zzz」
「私は……お兄ちゃんが幸せになってからでいいから。大丈夫! 私、意外にモテるから、その気になったら相手の1人や2人くらい簡単に見つけれるから」
「……zzz」
「ただ……もし、お兄ちゃんが40歳になるまで独り身だったら、その時は私が……ね」
「……zzz」
「あ……昼間の約束は気にしないでいいよ? あれは冗談だから。……今後、結婚迫ったりしないから、また私としてね? 私はそれで全然構わないから」
「……」
「あ……もしよかったら、幸子としてもいいよ? 幸子もきっと望んでる筈だから。……ただ、もしする時は、私に分からない様に……ね。……ちょっと辛いから」
「……」
「お兄ちゃん……凄い幸せモノなんだよ? こ~んな若くて可愛い子に好かれてさ~。一緒に住んで面倒みて貰えるなんて、さ。少しは自覚した事ある?」
「……」
「そりゃ、お姉ちゃん達と比べたら私なんて見劣りするに決まってるけどさ……やっぱり私なんかじゃ……────ッ」
「……そんな事ないから。美子ちゃんは……誰よりも魅力的だから」
「……え?」
「とっくの昔に……俺の中で美子ちゃんが1番になってたから。美幸や伊織さん……あすか以上の存在になってるから」
「……お兄ちゃん……聞いてた……の? いつ……から?」
「前からずっと……気付いてたよ。毎晩毎晩……俺に語りかけてくれてたよね。……ちゃんと、伝わってたから。……ここまでしてくれて、好きにならない筈ないじゃん」
「…………」
「昼間の事……冗談なんて言わないでよ。応援するなんて言わないでよ。俺は美子ちゃんと幸せになりたいんだから」
「で、でも……私……」
「離婚して……俺と結婚して……本当の家族になってよ……この券、何でも願い事、聞いてくれるんでしょ?」
「ホ、ホントに……いいの? 私なんかで……後悔しない? お兄ちゃんだったらきっともっと──」
「俺は美子ちゃんがいいの!」
「……しょうがないな~、なんでも券に免じて……お兄ちゃんの願い、叶えてあげる。重度のシスコンで1人で寝られないお兄ちゃんの面倒見れるの、私くらいしかいないしね。……ホント、感謝してよね!」
「……分かった」
「幸せにしなかったら承知しないから!」
「……分かった」
「誓える?」
「天国にいる美幸や伊織さん、あすかに誓って、必ず……!」
「……バカ────ッ」
「美子ちゃ……美子、愛してる」
「もっと……言って!」
「美子、愛してる」
「もっと!」
「愛してる」
「────♡」
バトンタッチ……?
──翌日の日中のお茶の間
「あ、お兄さん、座りながら寝るんだったら、お布団で寝た方がいいですよ」
「ん……ん~……」
「……もう、じゃ、このまま横になって下さい。お布団かけてあげますから」
「ん……ん~……zzz」
「あ……寝ちゃった……よっぽど疲れてたんですね」
「……zzz」
「お兄さん……お帰りなさい。ずっと……待ってましたよ」
「……zzz」
「お兄さんがいない間、ホント大変だったんですから。……お姉ちゃん、引きこもりみたいになって殆ど家から出なかったし……抜け殻みたいになってたんですから」
「……zzz」
「昨日の夜、聞こえてましたよ。お兄さん、お姉ちゃんを選んでくれて……ありがとうございます」
「……zzz」
「お姉ちゃん、昨日までが嘘の様に顔色良くなって元気になって……お兄さんのおかげです」
「……zzz」
「お姉ちゃんは……ちょっと変な所もあるけど、天真爛漫で明るいから、お兄さんも一緒にいて楽しいと思いますよ」
「……zzz」
「それにお姉ちゃん、ああ見えても案外しっかり者ですし、家庭的ですから……きっとお兄さんのいいお嫁さんになりますよ。私が保証します」
「……zzz」
「きっと……誰もが羨む夫婦になって、暖かい家庭を築いていけますから」
「……zzz」
「結婚したら……私は邪魔ものになっちゃいますから……家、出ていきますね。あ、気にしないで下さい、私、1人暮らし、してみたかったですから」
「…………」
「たまには……ここに遊びに帰ってきていいですか? 逆に、たまには遊びに来て下さいね。それくらいはいいですよね? 私、本当の妹になるんですから」
「…………」
「けど……もうちょっと……3人で一緒に住みたかったな。お兄さんのお世話……したかったな……」
「…………」
「お姉ちゃんみたいに自分の気持ちに素直に……なれたらな。お兄さんとの違う未来もあったのかな……って、それはないか。私なんて──」
「そんな事……ないよ。幸子ちゃんは十分魅力的だよ」
「──?! お兄……さん……い、いつから気付いて……」
「前から知ってたよ、幸子ちゃんも俺に優しく語りかけてくれてたって……」
「……//////」
「俺……美子の事、好きだよ。一緒になりたいと思ってるよ。ただ……幸子ちゃんがイヤだったら、美子との結婚、やめるよ。ずっと3人で……兄妹で暮らしていくのも──」
「そんな事、冗談でも言ってはダメですからね! 私、怒りますよ!」
「あ、い、いや……ごめん。ただ、それだけ幸子ちゃんも同じくらい大事な人だから、俺にとって……」
「一つだけ教えて下さい。もし……お姉ちゃんがいなかったら……私を選んで……くれました?」
「……きっと、ね」
「じゃ……約束して下さい。もし……お姉ちゃんが天国に旅立ったら……その時は私と……」
「……え?」
「あ……じょ、冗談ですよ/// い、今言った事は忘れて──」
「いいよ。万が一そんな事になった時、その時まだ幸子ちゃんが1人でいて、そう思ってくれるなら……俺からお願いするよ。……約束するよ」
「じょ、冗談って言ったじゃないですか……//////」
「ご、ごめん///」
「……私、一生独身を覚悟しなくちゃ(ボソッ)」
「え? 何か言った?」
「何でもないです。……じゃ、このまま一緒に昼寝しましょうか♡」
「……え? そ、それは──」
「私だって本当の妹になる訳ですから、兄妹で一緒に寝るのは別に問題ないですよね?」
「そ、そっか……別に兄妹で一緒に寝るのは不自然じゃないか。幸子ちゃんが言うなら間違いないね」
「♪ 腕枕して下さい♡」
「──こうでいい?」
「♪ もっとギュッってして下さい♡」
「///──こうでいい?」
「────♡」
コメント