#2 ムーンチャイルド
「ふと、気付いたんだけど──」
「え? 何ですか?」
「ほら、海外旅行いっても部屋でぼーっと過ごすとか言ってたじゃん」
「はい、その通りですよ」
「……ぶっちゃけ、泳げないんじゃない?」
「……金づちですよ、確かに」
「浮き輪とかも、もしかしたらダメ?」
「……ワキからズルっと抜けちゃいます」
「ワキで浮き輪を抱えられないって事?」
「はい」
「で、水の中だと息苦しくて目の前真っ暗になるとか?」
「はい、ズバリです」
「……だったらバリ島とか行かなきゃいいじゃん、海に出てナンボの場所だし」
「けど、海の色や匂い、波の音は好きなんです。ホントはビーチボードでぼーっと横になって波に揺られてみたいですけどね。ただ、ホント泳げないので命懸けなんです。直射日光も基本ダメですし……」
「──ん? 日焼けがイヤとかじゃないの?」
「もちろん日焼けはイヤですけど、それ以前に腫れちゃうんです、日光浴びすぎると」
「ますます沢尻エリカじゃん! XP、夜しか活動出来ない~とか」
「タイヨウのうたでしたっけ? そこまで酷くないですよ~。そもそも今やってるの、昼間じゃないですか。それに何度もアポで外に行かされたじゃないですか、駐車場とか」
「そういえばそうだったね。──ちぇ、どうせだったら沢尻エリカのドラマみたいに夜しか活動出来ないとかだったらカッコ良かったのに……」
「ちょ! 私がもっと重症だったら良かったって、どういう事ですか! 日光浴び続けて肌が腫れるだけでも十分大変なんです! 日焼け止めクリームも安くないですし、だから私はいっつも貧乏なんです!」
「……夜の散財や爆買いに比べれば些細じゃん、日焼け止めクリームなんて」
「──! じゃぁ、今後、日焼け止めクリーム買ってくださいよ!」
「ま、それくらいならいいけど、いくら?」
「えーっと、1日1本……1万!」
「……そこにあるの、資生堂の1,950円って値札貼ってるじゃん……」
「ちょ、な、何見てるんですか! エッチーーーー!」
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