第11話:サイバーポリス、酒癖悪いみのりちゃん、そして……
──6月、とある日の夜遅く
「(ブーッブーッブーッ……)」(スマホのバイブ音)
(……チッ、なんだよ、こんな夜中に、誰だよ! ホントに……)
「はい、どなた?」
「あ、繋がった……ジュンさん?」
「──?! ちょ、ちょっと待って……」
「んー? どうしたの?」(寝室から嫁)
「あ、いや……ちょっとタバコ切れたからコンビニ行ってくるよ」
「ん……気を付けてね」
──2分後、家の駐車場の車の中──
「(ハァハァ) と、待たせてごめん。抜け出してきた。どうした? こんな真夜中に電話してきて」
「……(グスッ)どうしよう……(電話越しに聴こえるパトカーのサイレンの音)」
「──?! 警察に捕まったの?」
「はい……今、警察署から出てきました……」
「ちょっと話、聞こうか……」
「……ジュンさん帰った後、ちょっと新規欲しくて……気合で募集かけて1人でやってたんです。そしたらそのうちの1人がサイバーポリスで……それで警察署まで連れてかれました」
「あちゃー……」
「待ち合わせの場所にいって、手渡しのパンツを出した瞬間、4人の警察官に囲まれてそのままパトカー乗せられて……」
「ぅわぁ‥‥…」
「そして警察署の取り調べ室に連行され……幸いな事に、先日誕生日を迎えて20歳になったばかりだったので、未成年じゃないからという事で今回は厳重注意だけですみましたけど……私、不安で心臓とまるかと思いました……」
「まぁ、何と言ったらいいのか。……厳重注意ですんで良かったじゃん。ただ、暫くは控えた方がいいかもね……」
「……親や学校に通報いかないですよね。もし、そうなったら……私……(すすり泣き)」
「まぁ、大丈夫──」
「ぅわーーん(大泣き)」
「通報されな──」
「うぅぅぅ(大泣き)」
「……取りあえず、迎えに行こうか?」
「(グスッ)……最初に会ったあの喫茶店で待ってます……」
──30分後、喫茶店(夜はバー)──
「ふぅ、お待たせ」
「……奥さん、大丈夫ですか?」
「ま……後が怖いけど、流石に今日のみのりちゃんを放っておけないからね……ま、何とかなるでしょ……」
「……ありがとうございます」
「って、この喫茶店って夜はバーになってるんだ。──何か飲む?」
「……では少しだけ──」
──1時間後──
「だーかーらー、あの婦警がムカつくんですよ!」
「あー、はいはい。って、この話、3回目だし……少しだけって言いながらワイン凄い勢いで飲んでもう3本空けてるし……既にべろんべろんだし」
「いーえ、私は酔っぱらってません! それより聞いて下さいよ~。私の事、何って言ったと思います、その婦警。もっと自分を大切にしなさい、だって! だったら私の代わりにやって下さいって話ですよね~、ホント!」
「あー、そうだね。──とりあえず、水飲む?」
「あ、もう空になっちゃったんだ~。すいませーん、これと同じの、もう1本持って来てくださーい♪」
「──?! まだ飲むの?」
「えぇ、今日はとことん飲みましょう! はい、かんぱーい♪ それで、ね──」
──さらに数時間後──
「……お会計はこちらになります──ありがとうございました」(営業時間終了で追い出される図)
「──ほら、みのりちゃん。ちゃんと立って。家送るよ。俺も少し飲んだから車じゃなくてタクシー呼ぶから」
「なーに言ってるんれすかー、夜はこれかられすよー。次、いきましょー、つーぎー!」
「って、もうやってる店、ないって……新聞配達のバイク、走ってるし……雀の鳴き声してるし……夜が微妙に明けてるし……」
「…………ありがとうございます。今日付き合ってくれて」
「ん? まーいいけど……もう落ち着いた?」
「はい、ちょっと頭クラクラしますけど、もうシラフです」
「そりゃ良かった。じゃ、タクシー呼ぶよ?」
「いえ、そのまま取ってるビジネスホテルに行ってそこでちょっと寝ます」
「──?! いつホテル予約したの?」
「え? ジュンさんに電話する前に♪」
「要するに……今日は家に帰る気はなかったよ、と。夜が明けるまで飲み明かすつもりだったよ、と。全て計画通りだったよ、と」
「はい♪ 最初からその予定でした。ジュンさん、きっと来てくれる確信ありましたし♡」
「──?! まぁ何と言ったらいいのか……ハァァーー、どうしよ、家庭崩壊しちゃうかも……」
「あ、大丈夫ですよ。ちゃーんと私が事の成り行き説明しますから♪」
「えーっと、日中女子大生の子の援交の手伝いしていて、その子が深夜に警察に連行されて落ち込んでて放っておけないから迎えに行って慰めてたよ、と?」
「いえ、正確には20歳になったばかりの女子大生の子とネットカフェのカップルシートに日中入り浸って援交幇助していて、それだけに留まらずに真夜中抜け出してその子と一緒に一晩中飲み明かした、が正解です。ちゃんと説明すれば分かって貰えますってー」
「これで納得する人、世界中探してもいないって! こんな説明されたらそれこそ確実に家庭崩壊するわ!」
「wwwwww」
「……ま、取りあえず元気になって良かったよ。それじゃ──」
「あ、ホテル来ます? 別にいいですよ、ジュンさんなら」
「──え?」
「──あ、……ただ~、今日の私は酷いですよ~。これだけ飲んだ後だから、おしっこも凄いするでしょうし、嘔吐だって凄いしそうです。きっと、過去最高の地獄絵図になると思います。それでもよければ♪」
「絶対嫌! うわ、想像しただけで吐き気がしてきた、オェッ!」
「wwwwww ……冗談ですよ♪ ではおやすみなさーい^^」
「あぁ、ゆっくり休んでね」
──みのりちゃんと飲んだのはこれが最初で最後でした。
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