第43話:陽の当たる場所
「そういえば撮影で顔有りだけの依頼あったけど、どうする? 服着たままの普通の撮影だって。HPのモデルで使いたいって」
「えーっと──HPで公開するんですよね。……断っておいて下さい」
「ん? ギャラも時給1万以上で悪くないと思うけど、なんで?」
「私、14歳から今まで、凄いたくさんの男の人と出会って来たんです。 何がきっかけで今の生活が崩壊するか分からないので、なるべく表には些細な事でも出たくないんです……」
「んーーー、なんか勿体無いねぇ」
「私、静かにひっそり自由に暮らしたいんです。たまーにスカウトさんから不思議な話、あるんですけど、裏の仕事やってなくても断ります」
「まぁ、確かに有名人になっちゃうと、下手にショッピングとか飲みにもいけないだろうしね」
「はい、プライバシーは守りたいんです。 そういう点で裏の社会は都合がいいんです。 名前だって本名伝えなくていいですし」
「なるほどねぇ」
「ただ、ホント多くの人と出会い過ぎちゃったので将来普通のOLさん出来るか不安です。 私の裏の顔、知られたらまず会社に居られないでしょうし……」
「んーーー、確かにちょっと不安かもね。 遠い街にでも行かない限りね」
「そのことも考えて、大学を地元から変わろうかなって。 で、近いうちに遠方に行こうかなって」
「──!」
「みのりちゃん達はこの街のみで、社会人になったら卒業します。 遠い街の何処かで、陽の当たる場所でひっそりと生きていきます、私」
「……そっか~、みのりちゃんが卒業か~……この街も少し寂しくなるかもね。寂しい男どもの天使がいなくなったら──さ」
「……って、もう少し後ですけどね♪ それまでに1000万の貯蓄と、月30万くらいの不労所得を確保したいです。 よろしくお願いします♡」
「──ん? 途中まで異様にカッコ良かったけど、最後がなんか良く聞き取れなかったんだけど……よろしくってどういう意味?」
「だ・か・ら♪ この私が後2年くらいで1000万の貯蓄出来るようにしっかりマネージャーして下さいって事ですよ。ついでにHPでもその間作って、それで月30万くらいになるような仕組み、どうにかして下さい♪」
「……今月貯蓄出来た?」
「えーっと──今財布に2,000円あります♪」
「要するに、散財しちゃったよ、と。あれだけのお金を……」
「はい、きれーーーーになくなっちゃいました♪」
「……このお金遣いの荒さを治さずに、1000万?」
「はい♪ 今のまま、お金を貯めたいです」
「ん~……要するに今の倍収入あったら貯められた……かな?」
「いえ、倍あったら倍使い切る自信あります♪」
「いやいやいや、それじゃ絶対無理だって。月25万、これだけ絶対残す事!」
「え~~、出来るかなぁ……」
「……一つ買い物我慢するだけだから」
「はーい、頑張りまーす♪」
「後、思いっきり忘れてるみたいだけど──土日の収益少しは残しておいてね」
「──?! い、いやだなぁ。ちゃーんと覚えてますよー。今まではたまたまですって~」
「ま、まぁ……あまりアテにはしてないけどね、正直」
「私は思いっきりアテにしてますので、よろしくです♪」
──普通にOLをやってひっそり静かに暮らしたい、少し遠い目で語るみのりちゃん。この時は今までの言動もあってとても信じられなかったが、実はこれが本心である事を近い将来、思いがけない出来事で知る事になる。
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