第10話:弘法筆を選ばず
風俗待機室で受験勉強?
「ふと、みのりちゃん、◎◎大学いってるじゃん? ここ、推薦でいったの?」
「あ、いえ、一般受験ですよ。どうしてです?」
「いや、かなり偏差値高い大学だから、どうやっていったのかなーって思ってね。やっぱ高校3年生の時は今のお仕事休んで受験勉強してたの?」
「ん~、お仕事を休んだのは受験月の2月くらいですね。後はふつーにお仕事してました」
「ほぉ……予備校とかいって、その合間にやってたの?」
「いえ、この時は主にお店行ってまして、そこでガーってやってました」
「──は? どういう事?」
「店長さんに事情話したら、私専用の待機部屋兼プレイ部屋用意してくれて、お客さんいない時はそこで受験勉強してました」
「あれ? 普通お店ってマジックミラーとかでフリーのお客さんに選んで貰うとかじゃないの?」
「たまーにマジックミラーでフリーのお客さん相手もしましたが、私は主に指名で来る人が多かったですから」
「……HPにも掲載してなかったんじゃない? 確か」
「お店に写真はありましたし、常連さん多かったですし、ね」
「……要するに専用個室が出来るくらい、売り上げあったよ、と」
「はい。基本、私が予定決めてお客さん入れてましたから、それ以外の時間は有意義に使えました。だから図書館代わりに入り浸ってましたね、あの頃は」
「……世の中広しといえども、風俗店の個室で受験勉強して一流大学に受かる子なんて……他にいないかもね」
「いやぁ、快適でしたよ。学校では、図書館に入り浸っている事にしてありましたけどね♪ バイト禁止の高校でしたし、バレたら流石にヤバいですからね~」
「……仮にバレてたら、テレビでニュースになってても不思議じゃないね……」
「え? バイトがバレるだけでニュースになります?」
「……バイト先が違法風俗店じゃ、色んな意味でアウトだよ……」
「ま、バレなかった訳ですし、結果オーライですよ♪」
──弘法筆を選ばず、というこれ以上ない実例として後世に名が残っても不思議じゃないみのりちゃんでした。
風俗+勉強=文武両道?
「そういえば予備校とか行かなかったんだ」
「当たり前じゃないですか。予備校行って私にお金入ります? そもそも勉強は1人でするものですし」
「ま、まぁ、そりゃそうだけど……自宅ですればいいじゃん、わざわざお店いかなくても」
「自宅だと誘惑が多いじゃないですか、色々と。図書館や予備校の自習室だと人の目が気になるしリラックスした格好出来ないじゃないですか。その点、お店だとラフな格好で出来ますし、何かと好都合だったんです」
「……なるほど。って、高3で風俗店で受験勉強して一流大学に合格してしまうのは何か間違っている様な──」
「文武両道ってヤツですよ♪ ほら、勉強効率は適度な運動が好ましいって言うじゃないですか。だから私のやり方は正解なんです( ̄^ ̄) 」
「適度な運動って……手だけ動かしてるだけじゃん」
「──! 意外に大変なんです! 立ってする時もありますし、足でやる事もありますし、変なポーズ取る時もありますし、案外体力使うんです! きっと卓球部より体力使ってます!」
「……卓球部の人、これ聞いたら怒るって──」
「いーえ! 私の同級生で卓球部だった子、みーんな私より太ってました。私が痩せてるのは卓球部の子達よりハードな運動していたからです!」
「前に家系の体質って言ってたじゃん……」
「──?! た、体質もありますけど、ハードな運動をしてカロリー消費しているから私は痩せているんです!」
「あー、はいはい……」
「……やってみて下さいよ」
「──え?」
「今度会う常連の人、ちょっとドMで目隠しプレイよくしますので、代わりに手でやってみて下さいよ!」
「ちょ……な、何言ってるの?」
「その人、3回連続で逝く人だから、大変だよー。あ、そうか! 今後ドMの人相手はみーんな目隠ししてジュンさんに代わりにやって貰えば──」
「ごめんなさい!!」
「ん! 分かればよろしい♪」
──と、強引に言いくるめるみのりちゃんでした。
みのりちゃんはホントのお嬢様
「ふぅ、今日はこれで終わりだね。これからどうする?」
「あ、今日は家に帰ります」
「んじゃ、車で送っていくよ」
「きゃー、ありがとうございます♪」
──車で移動中──
「確か……この駅の近くって言ってたよね」
「あ、はい。もうちょっと遠くになりますので、家までお願いします」
「了解、ナビお願いね」
「はーい♪ この道、暫くまっすぐいって下さい」
──15分後──
「……なんか駅から異様に遠いけど……ここ、どこ?」
「あ、もうすぐです。ここ左で~」
──5分後──
「……なんか山登ってるような──」
「もうすぐです。あ、これ私がいってた⚫▲中学です」
「ん? ここって名前聞いた事あるような──」
「地元で1番進学率高いっぽいですね。まぁ、この地域は見ての通り、お金持ちばっかですから」
「確かに……異様にデカい家多いね、ここら辺」
「この辺じゃ私の家が1番貧乏なくらいです、マンションですし」
「って、マンションって──もうちょい行った所にあるあのご立派な建物?」
「あ、はい、アレです♪ ありがとうございましたー♡」
「……ホントみのりちゃん、お嬢様じゃん!」
「はい、過保護に育てられましたよ♪」
「バイオリンとか習って──それはないか」
「いえ、普通に習わされてましたよ、後は乗馬とかも♪」
「──?!」
「だ・か・ら、私は贅沢が当たり前なんですよ♪ じゃ、また明日にー!」
──育った環境からして、庶民とかけ離れたホントの英才教育を受けていたみのりお嬢様でした、と。
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