序章(春休み) 第1話:初日
「おはよーございまーす。今日から暫くお願いしまーす^^」
「あぁ、おはよう──っていう時間じゃないけどね」
「いやー、この業界じゃ昼過ぎは十分朝ですよー^^」
「ま、いいけどね。で、ネカフェの席はどうする? 別々の席取って定期的にどこかで打ち合わせ?」
「それだと効率悪いですから、カップルシートに入りましょ♪」
「──え? 一緒の席?」
「そうですよー。嫌なんですか?」
「いや、そういう訳じゃないけど、何か緊張するな~」
「な~に今更言ってるんですかww じゃ、行きましょう♪」
────ネカフェ店内にて────
「予定、どれくらい入りました?」
「あ、ちょっと分かりにくいけど、これね」
「うわ……確定で40件? それにしても、ホント来るんですかね? 未だに半信半疑ですよ」
「ま、みんな来るかどうかは分からないけど、半分くらいは来るんじゃない?」
「まぁ……そんなに甘くないと思いますけどね。後でやり取り見せて下さい。教えれる事もあると思いますので」
「了解」
「ホント、1人くらい来るといいですけどね」
「──! 来た! 部屋番号21だって。そこいってみて」
「──! ホ、ホントに来ましたね。パンツ生脱ぎでしたね。じゃ、チャチャっと着替えます(ズル)」
「──え? ちょ、ちょっと!/// こ、ここでパンツ履き替えるの? トイレで着替えれば──」
「時間が勿体ないです。時間は有限ですから♪ 慣れて下さい!」
「りょ、了解」
「じゃ、いってきまーす」
───数分後───
「……ホントに7,000円で売れました。こんなにラクしてお金貰っていいんです?」
「ま、需要と供給だからね。需要あるからいいんじゃない? あ、次からコレ使って」
「んと、コレ何ですか?」
「あぁ、さっき忘れてたけど先日買ってきた秘密兵器♪ ちょっとスプレーして嗅いでみて」
「(クンクン)……!! うわ、くっさーい」
「女子高生の股間の匂いを忠実に再現したスプレーだって。ほら、みのりちゃんの設定は清楚系だけど新陳代謝が良すぎて体臭を気にする子だから。設定に忠実じゃないと、ね♪」
「……えー、冗談で言ってたんじゃないんですか? ホントにこれ、つけろって言うんですか?」
「その通ーり!」
「うぅ、みのりちゃん、こんなに可愛くて清楚系なのに、実際こんな体臭だったら辛いだろうな……生きていけないだろうな……」
「いや、そのギャップがいいっていう男の人って案外多いって。現場仕事の知り合いなんて、1週間お風呂に入ってない女性こそ至高だ! みたいな事、言ってたし」
「分からない、男の人が分からない……」
「ま、人の好みはそれぞれだから──と、また来たみたい。今度は……手もして欲しいって。もし直に嗅ぎたいって言ったら3,000円プラスって言ってみて? まず出すと思うから。はい、スプレー♪」
「うぅぅ……わ、クサ!」
「www」
「ちょっと! 笑ってないで、嗅いでみて下さいよ、ほら!」
「…!! うっ…クッ……!」
「ほら、ねw じゃ、いってきまーす♪」
───約10分後───
「……お金、17,000円も貰いました。最初に直に嗅ぎたいって言ってきたので3,000円プラスって言ったらホントにプラスしてくれました。なんで、でしょう?」
「ま、やっぱ需要があるからじゃない? 人によってはゴミみたいなものでも、人によっては宝物になるんだよ、きっと。ブランドバッグとか時計とか異様に高いじゃん。それと似たようなものだよ、多分」
「こんな事にお金遣って……その人、大丈夫なんです?」
「ま、男というのは趣味にお金遣うものだから。ユキさんが好きなブランド品にお金遣うのと同じだよ、多分」
「!──そっか! 了解! 次いきましょ、次!」
「お、やる気だねぇ。理解したんだ」
「ま、なんとなく。要するにフェチさんが想像以上にオイシイって事は分かりました。私、パネライの腕時計買いたいから、頑張りマス♪」
「ま、やる気になったのはいいけど、参考までにそれいくら?」
「え? 60万くらいですけど?」
「──?! わ、分からん……」
「私、まだ若いのでw、物欲は底なし沼です♪ 要するに私の趣味みたいなもの、ですよね、フェチさんというのは」
「そ、そうだね。……あ、また来たみたい」
「はーい、(プシュー) んじゃ行ってきま-す♪」
(想像以上に末恐ろしい子だ……)
「……何がですか?」
「い、いや、別に」
(……テレパシー能力でもあるのか?)
「……そんなものありません! ジュンさんが考えそうな事くらい分かるだけです!」
「!!!」
何歳からやってるんだよ!
「クッ、この人来ないのか……これだけやり取りしたのに、何故──?」
「ちょっと見せて下さい。……あー、こういう人います、います! この人絶対来ないですよ」
「……なんで?」
「ちょくちょくいるんです、こういうやり取りしただけで満足しちゃう人」
「……どういう事?」
「分かりやすく言うと、やり取りするだけで自分でしちゃって満足しちゃうって事…なんでしょうね」
「──! へぇ~」
「だから、えーっと、……この人とこの人、後この人も来ないですね」
「流石だねぇ。同じ男として、この発想はなかった……」
「だから最初から写メとか送らない方がいいんです、それで満足しちゃう人ばかりですから。統計的に来た人は数パーセントしかいませんでしたから♪」
「統計って……今まで何人くらいやり取りしたの?」
「んー、詳しく数えた事ないけど、10万くらいはしたかな?」
「じゅ、10万って……何歳からやってたの?」
「んー、みのりちゃんよりもうちょっと若い時くらいから♪」
「えっと……1日200件で年間100日やったとして2万件だから…‥あれ? 何かヤバイ数字が出てきたんだけど、15さ──」
「細かい年齢は計算しないでね♪」
「……色んな意味で恐ろしい……そして、このそこらの営業マンが裸足で逃げ出す程のこの努力、どこから産まれるんだろう……」
「だから、若いから物欲は底なし沼なんですって^ ^」
(この子、普通の会社で営業やったら全国レベル余裕だろうな……)
「……それにしても、これらの満足しちゃった人達、実際はこのネカマおじさんに抜かされたと考えると…ぷぷぷッ」
「wwwwww」
「wwwwww」
業者かどうか簡単に知る方法
「えっと、問い合わせでプロフ聞かれるんだけど、どうやって伝えてる?」
「私は157cmの43kg、清楚系のお嬢様タイプと伝えてますよ」
「了解。後、3サイズとかよく聞かれるんだけど……」
「あ、3サイズは私自身も分からないですよ。測った事ないから分からないって応えて下さい」
「ん? そういうものなの? よく出会い系とか見ると3サイズ書いてる子いるじゃん」
「あ、それは99%業者です。普通の女の子で3サイズを測って知ってる子なんていませんから」
「へぇ~、それは知らなかった」
「ついでに、バストのサイズとかよく聞かれる事ありますが、バスト85cmとかそういうのではなく、C65とかそういうのが正しいです」
「???」
「トップとアンダーの差が本来正しいバストサイズの表記なんです。私の場合はトップ80でアンダー65になりますので、差は15cmになります。この差がカップ数になるのですね。バストの大きさで巨乳かどうかを判断しようとする人いますが、それだとバスト100cmとあったとして、それだと単なるデブかもしれないじゃないですか」
「ほぉ~、なるほど」
「男の人はこの事を知らない人が非常に多いので、業者さんかどうか判断するのにアンダーいくつで何カップ? と聞くのは非常に有効ですね。ま、そこまでしなくても3サイズ書いてあったり聞いて返ってくる子は、十中八九業者かセミプロの子です」
「ほぉ~、勉強になるなぁ。それに当てはめると……ワクワクやハピメ、殆ど業者やセミプロっていう事になるじゃん……」
「何言ってるんですか~、そんなの常識ですよ~。まさかと思いますが、そういう所にホントの素人の子がいると思っているんですか?」
「い、いや……業者の子も多いとは思ってたけど、少しくらいはいるんじゃないかな~って──」
「あ、いる事にはいますよ? ただし、滅茶苦茶デブかドブスか年配の子とかでよろしければ♪」
「──! これ、素人っぽくない? 20代後半でちょいポチャって」
「ど~れ──あぁ、これを読み換えると、30代後半から40代前半、激ポチャが正解ですね。試しにアプローチしてみて会ってみたら分かりますよ。きっと後悔しますから♬」
「うぅ……夢も希望もあったもんじゃない……」
「これが現実ですよ♪ ま、私みたいな子に出会える人は滅茶苦茶運がいいって事ですよ♬」
「……下手な業者真っ青のセミプロじゃん……」
「い~え! 私は素人の子以上に素人の子を演じる事出来るんです! 愛想もいいですし~、対応もいいですし~、可愛いですし~♪」
「……素人の子がオプションでおしっこなんて絶対しないって……」
「い~え、そんな事ありません! 素人の子でもこれくらいは絶対します! 私からしたら、フェラとか平気でする子の方がおかしいと思いますよ。いいですか────」
──最後のおしっこ談義は置いといて、異様に有意義な情報を教えてくれたユキさんでした。
初日の成果
「ふぅ、これで今日はもう来ないかな……」
「そうですね、じゃ、清算しましょー!」
「ん! 1・2・3・4……12.6万か。思ってたよりは少なかったな……来なかった人も案外いたし」
「いえ、そんな事ないですよ〜、初めてにしては上出来です♪」
「いやいや、これじゃ、君個人でやってた方が実入り多くない?」
「いえ、ジュンさん将来性見込めますし、一番大きいのは私がストレス殆どなかった、という事です♬」
「ま、そう言って貰えると嬉しいよ。じゃ、遠慮なく半分っこね」
「はい! うふふふっ諭吉ちゃーん、会いたかったよー♡」
(何やってるんだ、コイツ)
「──! 今、私の事、変だと思ったでしょー。そういう人には秘密兵器で懲らしめなきゃ。シュッシュッ」
「うわ、直には勘弁、ごめん、ゴメンナサイ」
「www 分かればよろしい♪ じゃ、また今度お願いしまーす」
「ラジャ、また今度」
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