たくみの営業暴露日記

たくみの営業暴露日記 Last Epilogue #3 運命の少女(3)

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たくみの営業暴露日記 Last Epilogue #3 運命の少女(3)

「じゃ、明日、また来ますね♡」

「いや……明日はもう俺、いないから」

「──え? どうして?」

「え~っと……今は丁度0時か。……今から5時間27分後、このビルの屋上からダイブする予定だから」

「えっと……なんで?」

「……ここで死んだ彼女と一緒に地縛霊になろうかな~って。アイツ、1人で寂しいだろうから」

「wwwwwwwww」(大爆笑)

「い、いや……笑い話じゃないから……本気だから……」

「wwwwwwwww」(大爆笑)

「……ま、いいんだけどね、どう思われたって。ま、そういう訳だから、もう二度と会う事ないよ」

「何で死んだら地縛霊になるんです? 証拠ってあるんです?」

「あ、い、いや……自殺っていったら、地獄に堕ちるか地縛霊っていうのが定番──」

「それって誰が決めたんですか? じゃ、捨身成道した人も地縛霊になるんです?」

「──え?」

「即身仏になった僧侶とか、どう解釈するんです?」

「そ、それは……」

「安楽死した人とかもみんな地縛霊になるんですか? それっておかしくないです?」

「……た、確かに……」

「要するに、大事な彼女が死んじゃって生きる希望が見出せないって事ですよね?」

「……略しすぎな気もするけど、ま、まぁ……そんな所……かな?」

「じゃ、もう解決した様なものじゃないですか」

「──は?」

「だって、私の為に生きればいいじゃないですか」

「──は? な、何で君の為……に?」

「え? 私に言ったじゃないですか。太く短く生きればいいって。人の3倍の速度で生きればいいって。この私をその気にさせたんですから、責任取って下さいよ」

「──え? な、何の責任?」

「私が立派に生きてるって事を見届ける責任ですよ。私はやりますよ~、優等生やりながら彼氏だって何人も作りますし、お金だって稼ぎまくりますし。裏の顔と表の顔を使い分けて、誰もが羨む人生歩んでみせますから」

「……強いね……」

「ただ~、私1人だと挫けちゃうかもしれないじゃないですか~。だから、私の成長を見守っていて下さいよ~」

「……中々強引だね。ただ……正直そこまで生き続ける気ないよ」

「あ、よく考えたら自己紹介まだでしたね」

「いや……別に聞かなくてもいい──」

「私、幸せと書いてユキって言います。……ホントは13歳になりたての中学1年生です♪」

「──?! ユ……キ?」

「あ、やっぱりおかしいですよね。幸でユキっていうのは。よく男の子の名前と間違えられるんです。コウちゃんって呼ぶ友達もいるくらいです♪ ちなみに血液型はB型で誕生日は10月16日です♬」

「──?! B型で……10月……16日?」

「ん? そんなに驚く所ですか?」

「あ……い、いや……」

「ま、いいですけど。で、おじさんの名前は?」

「……コウと読む漢字でたくみ……来月32歳で……今は……無職かな」

「たくみ……さんですね。あ……同じ名前の友達いるんですけど、その子の事、私、たくみちゃんって呼んでるんです。みんなはたくみ君って呼んでますけど、こう呼んだ方が特別感あって良くないです?」

「ぁ……」

「どうしたんですか? さっきから。あ……もしかして~、私、たくみさんの大事だった人に似てたりしてw」

「そ、そんな……」

「……だったら私の言う事、聞けますよね。私の為に……生きて下さい」

「……一つだけ……お願い聞いて貰っていい……かな?」

「え? 何ですか?」

「ちょっとだけ……膝枕して貰って……いい……?」

「え~? 膝枕ですか~? ……ま、いいですけど。──はい、どーぞ」

「……────ッ」

「ちょ! な、何泣いて──いいですよ、気が済むまで泣いて。……死んじゃダメですよ」

「────ッ」

「私を……見ていて下さいね。私はもう絶対下を向きませんから。……最期まで笑っていますから」

「────ッ」

「これから一杯勉強して〇×高校入って……優等生やりながら、裏の顔も持って……彼氏も何人も作って、大学にも行って、大好きな彼氏と結婚して……子供も2人は作って……絶対幸せな人生歩んでみせますから」

「────ッ」

「何てったって、私の名前、幸ですからね。幸せになるに決まってるじゃないですか」

「────ッ」

「たくみさんも……今度会う時までにビックリするような魅力ある大人の男性に……なっていて下さい」

「────ッ」

「5年後……このビルの向かいの喫茶店で。私はきっとウエイトレスとして働いていますから」

「────ッ」

「きっと私、びっくりするくらいキレイになっていますよ。……楽しみにしていて下さい。私も……楽しみにしていますので」

「────ッ」

「だから……生きて下さい、私の為に。約束ですよ?」

「────ッ」

 少し肌寒い真夜中のビルの下の路地で……加藤を絶望から救ってくれたのは、わずか13歳の少女であった。何時間も加藤の頭を優しく撫でながら膝枕してくれた少女の名は……ユキと言った。偶然にも誕生日も血液型も……名前も一緒で、どこか懐かしい匂いがして、声がして……そして面影があって──

──たくみ君、ありがとね、私の為に色々してくれて。けど、まだこっち来ちゃダメだからね。

──……あすか? やっぱココにいたの? だったら俺も──

──いないよ~。今、伊織さんと美幸さんと一緒にいて楽しくやってるから。

──……伊織さんに……美幸?

──たくみ君~、久しぶり~。元気~?

──あ……

──美子達の面倒見てくれてありがとね~。後、仕事も私の代わりにありがとね~。

──み、美幸……身体、大丈夫?

──ん? 私はいっつも元気だよ~。あすかちゃんも伊織さんも元気だよ~。毎日楽しく過ごしてるよ~。

──……良かった~。……俺も混ぜてよ。

──ん~、たくみちゃんがこっち来るのはねぇ、もう少し後だよ。まだイベント残ってるからね。

──い、伊織さん? え? どういう事です? そんな事が分かるんです?

──フフッ……たくみ君、この未来は絶対驚くよ~。だって私の──

──伊織さん! 美幸さん! ダメだって、言っちゃ! 思わず言いたい気持ちは分かるけど!

──え、えっとあすか……どういう事?

──そういう決まりだから。けど、近いうちに凄い事が起きる、とだけ言っておくね。

──よ、よく分からんけど、了解。あ……もしかして、ユキって子、伊織さん達が俺に見させた幻? それとも現実?

──フフッ……さぁ、どうだと思う? たくみちゃん。

──何ですか、その含みのある笑みは……怖いなぁ……

──あ……ヤバイ、そろそろ行かなきゃ。……たくみちゃん、あの子の事、よろしくね。

──たくみ君、またね~。美子の事、よろしくね~。

──伊織さん! 美幸さん! ダメだって!

──え? それって──

──……

「──さん、たくみさん」

「あ……れ? あすか? 美幸? 伊織さん?」

「寝ぼけてるんですか? 私はユキですよ」

「あ……ご、ごめん! もしかして寝ちゃってた? 何時間も……ありがと」

「じゃ、私、そろそろ帰りますね……家に」

「あ……そ、そっか……もう……ここに来ちゃダメだよ」

「たくみさんも……ここにいちゃダメですよ」

「……ユキ、頑張れ!」

「はい♪ たくみさんも、約束守って下さいね♡」

「……あぁ」

 気が付いたら朝日がビルの合間から顔をのぞかせていた。優しい光に包まれ満面の笑みを浮かべて手を振る少女は……天使そのものだった。

──俺は……まだ生きなければ……見守る為に……何をしてでも……禁を犯してでも……!

──ユキと別れて数時間後

「……ごめん、空気読まずまた来てしまって……迷惑だと思うけど……無理を承知で……俺を助けて……下さい。また一緒に住まわせて……下さい。お願い……します!」

「……ずっと……待ってたんだから──ッ」

 絶望のどん底から這い上がる為、訪れた場所はある意味一番訪れてはいけない場所だった。心の底から望んだ場所……それは──

 そして月日は流れ──

補足?

はい、今までで一番「これ、絶対創作だろ!」という話ですね。

ま、夢のくだりやら台詞やら(正確には覚えていない)かなり脚色していますが、ユキとの出会いは紛れもない事実です。いや、正確にはこの時は確証持てなかったですがね・・・冗談抜きに夢か幻か、現実か・・・区別つきませんでしたから。。

次回、いよいよエピローグ含め本当の最終回。

異様に時間が飛びますが、ある意味衝撃のラストになるでしょう。

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