第20話:合コン対決・・・?
──いつものカラオケ店
「たくみちゃん……最近いい気になってるわね。この私にたてつこうなんて……100年早いわよ!」
「い、いや……そんな気さらさらないですって。……こないだの事、まだ根に持ってるんですか? そろそろ許して下さいよ……何でもしますから」
「なら、今日は……対決よ! 私とたくみちゃん、どちらが上か……はっきり分からせてあげるわ!」
「──?!」
「調子に乗ってる不貞の弟子の鼻を折るのも師の務め……完膚なきまで叩き潰してあげるわ!」
「ま、まぁいいですけど……対決って何する気ですか?」
「これを見て! これで……勝負よ!」
「──?! 合コンイベントの……チラシ? ま、まさか──」
「フッ、流石は稀代の変態、たくみちゃん。一瞬で私の意図を理解した様ね」
「……最終的に何人に告白させるか……競う……って事です? って、対象年齢30歳以上って書いてあるじゃないですか。モロ対象外ですよ、俺も伊織さんも……」
「私は誤差レベル、たくみちゃんは元々老け顔、どうとでもなるわ! キラーキングと平成のキャッツアイ……いや、初代みのりちゃんと二代目みのりちゃんの夢の頂上決戦……きっと、歴史に残る素晴らしい名勝負になるわ!」
「……出禁喰らうのがオチですって……」
「とにかく! 今日の18時! お互いのプライドをかけて──勝負よ!」
「……やるからには手加減しないですよ? 伊織さん」
「えぇ、望むところよ、たくみちゃん」
「俺の本気、見せてあげますよ。そして──伊織さんに敗北を味あわせて……JKの制服着て遊園地デートして貰いますよ……!」
「ハッ、たくみちゃんこそ──今までみてきた私が全てだと思わない事ね。圧倒的な実力の差、見せつけてあげるわ! そして……完璧に女装して一緒にラルクのライブいくからね!」
元々意味の分からない事をしていた2人が更なる斜め上の方向へ……何故かプライドをかけて対決する事になった2人。勝負の行方は果たして──?
合コンで激しい頭脳戦・・・?
■合コンイベント会場前
「……やはり来たわね、たくみちゃん。逃げずに来た事だけは褒めてあげるわ」
「伊織さんこそ、よく来ましたね。そんなにJKの制服着て遊園地行きたくなりました?」
「フッ、言うわね。たくみちゃん、ハンデ付けてあげてもいいわよ? たくみちゃんの変態っぷりは認めるけれど、それだけでは私に絶対勝てないから」
「確かに、伊織さんの代名詞……その美貌から放たれる魔性のキャッツアイは脅威ですけど……俺には秘策がありますから。少なくとも退屈させない事だけは約束しますよ」
「……お手並み拝見するわ。じゃ、いくわよ!」
「──あぁ!」
──1時間後、フリータイム開始1分後
「フフッ……たくみちゃんを除く19名全ての男を魅了してきたわ。見たところ、他の参加女性は……雑魚! 実質パーフェクトを狙える筈よ。たくみちゃん、あなたはどうかしら?」
「……俺はせいぜい2名程度……さ、流石は伊織さん……俺の想像の遥か上をいっていたのは認めますよ。ただ……ここまでで伊織さんに圧差をつけられてるのは……想定内……! これからが俺の秘策が炸裂する時間ですから。……今から伊織さんの唖然とする顔が容易に想像出来ますよ」
「これだけの実力差を見せつけられて、よく言えるわね。……たくみちゃん、降伏するなら今よ。土下座して謝ったら、女装だけは許してあげる」
「伊織さんこそいいんです? これから起きる事は伊織さんにとって二度と立ち直れない程のトラウマになる筈ですよ」
「な、何──?」
「予言してあげますよ。これから1時間、伊織さんの能力は完全に無効化される。俺が魔法をかけますら」
「(ゾクッ!)わ、私が冷や汗? ……その言葉、決して強がりでもハッタリでもない様ね……いいわ、たくみちゃんの魔法とやら、たっぷり見せてもらうわ!」
「30分後、いつもみたいに動いてみて下さい。俺の言った事が現実になっていますから」
「……面白い。やれるものならやってごらんなさい。そんな魔法は私には通用しないって事、想い知らせてあげるわ!」
「後悔しても知らないですよ。──じゃ、俺はいきますよ!」
■フリータイム5分後
──な、何?! たくみちゃん、何を考えているの? 女性陣の所に向かわず男性の所に行くなんて……わ、分からない……たくみちゃんが何をしているのか……
■フリータイム30分後
──30分全てを女性陣の所に行かずに男性の所に行くなんて、ホント意味が分からない……残り時間は後30分……たくみちゃんの動きは気になるけど、私もそろそろ動かなくては……!
「Aさんとどうしても話をしたくて、来ちゃいました♡」
「……あ、俺……ちょっと……」(去っていく男)
──こ、この私が……まさかのアプローチ失敗? た、たまたまよ……
「Bさんとどうしても──」
「あ……失礼……」(去っていく男)
──こ、この私が……2人連続で……? な、何が起きてるの?
「Cさん♡ 来ちゃいました」
「あ……ごめんなさい……」(去っていく男)
──し、信じられない……こ、この私が3人連続で断られるなんて……! はっ! も、もしや──
──フッ……ようやく伊織さんも気づいたかな? 俺が何故限られた1時間のうち30分も費やして男達と話をしていたか……
──し、信じられない……こ、こんな戦法を取ってくるなんて……わ、私の悪評を流したのね。けれど、あの短時間で一体何を……
──そうさ、俺は伊織さんの悪評を流す事に全力を費やしたのさ。が、ここまで気付けてまだ50%……! 俺が何を言ったかを当てない限り、伊織さんは挽回不可能さ……
──このままでは……負ける? こ、この私が……? そんな事は私、認めない! この奥の手だけは使いたくなかったけど……!
──な、何? 男性陣へのアプローチを止め、女性の所へ? い、一体伊織さんは、な、何を……あっ! し、しまった! そ、その手があったか!
──……気付いた様ね、私の狙いが。そう! 男性陣がダメなら女性陣! 異性でなくてはダメというルールはない筈だわ! 私のすぐに同姓と仲良くなれるという特性を活かせば……!
対戦結果
「いや~、こういう合コンって意外に難しいものですね。俺、結果ゼロでしたよ。勝負は……伊織さんもゼロで引き分けですね」
「あんな手で来るなんて、ズルいわよ!」
「だって、まともにやって俺が伊織さんに勝てる筈ないじゃないですか。それくらいは分かりますよ」
「……たくみちゃん、何で本気でやらなかったの?」
「え? 本気でしたよ? 単に俺がモテなかっただけですから」
「嘘! たくみちゃんの事、ずっと見てたけど、フリータイムの時に女性陣の誰とも話してなかったじゃない!」
「……見てたんだ……」
「まともにやれば1人くらいはいけたかもしれないのに、私に勝てたかもしれないのに……何で?」
「……正直、勝ち負けに興味なかったですから……万が一誰かにモテて、伊織さんを悲しませたくなかったですし……かといって伊織さんがモテるのも見たくなかったですし……ごめんなさい、こんな手、使っちゃって……」
「……この勝負、たくみちゃんの勝ちよ。合コンの常識を根底から覆して私を抑えるという奇抜な作戦力、さらに私を傷付けないという配慮まで……完璧よ。……ごめん、私、少し大人気なかったわ。ホント……たくみちゃん、見直したわ♡」
「いや……俺の負けですよ。男性陣がダメだと分かった途端に女性陣にターゲットを変えるという合コンの常識をさらに覆す斜め上の発想は俺には思い付かなかったですし。もし同姓OKだったら……確実に伊織さんに票が入ってた訳ですし……伊織さんの勝負に対する執念は素直に尊敬します」
「……やっぱり今日は引き分けにしとこっか。……ありがとね、たくみちゃん。今日は私の我儘に付き合って貰っちゃって」
「いや、別にいいですよ、意外に楽しかったですし。ただ……もうこういう勝負はやめましょうね。どっちが勝っても嬉しくないですし……」
「そうね。……最後に……1つだけ、教えて?」
「ん? 何です?」
「……あの短時間でどうやって私の悪評を流したの? 皆を納得させたの? それだけがどう考えても分からなくて……」
「……怒らないです?」
「今更怒らないわよ……だから、教えて」
「……簡単ですよ。あの女、実は男でホモで病気持ちなんだよ、って言い回っただけですから」
「……やっぱりバカー! 何て事いうのよ!」
「いや、伊織さんだって────」
「そういう、たくみちゃんだって────!」
いつもにも増して、訳の分からない事をする2人……ホント一体何をやっているんだろう……こんなアホみたいな事を繰り返しつつ、何故か絆が深くなっていく2人であった。
なお、後日談になるが、約束との事で制服姿の畑口と本当に遊園地デートにいく事となったが、本当にどうでもいい話なので略とする。
挿話?
前回といい、今回といい・・・ホント、営業物語の欠片すら残ってない内容だな、と我ながら・・・
畑口との狂ったエピソードはかなりありますが、その中でも1,2を争うのが前回及び今回の内容でしょうか。この頃は、ホント、毎日の様に訳分からん事していたものです。仲は・・・ご覧の通りという感じ・・・結論を書くと、正式に付き合っていた訳でもないのですが、多くの人は誤解していたでしょう。
では九重は? というと・・・畑口の事だけは容認してましたね。
「九重と同棲していながら、公認で畑口とも仲良くしていた」
・・・一文でまとめると・・・中々のクズっぷりですね。。
正直、前回及び今回は省いてもいい様な気もしましたが、最後部分の方を書いていてちょ~っと説得力が弱くなるな、という事で、あえてキングオブ黒歴史の内容をぶち込みました。
次回は・・・今までで一番クズ的な内容かな?
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