たくみの営業暴露日記

たくみの営業暴露日記~最後の210日~第6話:loving look

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第6話:loving look

「マーシャルの~匂いで~飛んじゃって~大変~さ♪」

「イエーイ! 九重ちゃん、いいね~!」

(何で……こんな事になってるんだ? ここは一体どこ?)

時は9月末──加藤はいつものカラオケ店……ではなく、レジャーホテルの一室で九重のカラオケを聞いていた──畑口と一緒に。

場面は今朝に遡る。

先日の出来事により九重の真実に触れた加藤は、一つの決心をしていた。今後、畑口との昼間の指導という名のカラオケ店での会合はもうやめよう、と。これからは九重が退職するまでの間はなるべく日中も彼女のそばにいてあげよう、寂しい思いをさせないように、と。

──伊織さん、ごめん。九重は放っておけないから……指導を途中で放棄する形になっちゃうけど、伊織さんなら俺なんかいなくても絶対うまくやっていけるから……いや、もうちょっと上手い言い方ないかな……どうシミュレーションしても、不快な思いさせちゃう結果になるな……かといって、今まで通りにしては九重が……ん~、何か妙案はないだろうか……

……等と朝礼中から延々と考えていると──

「──ちゃん、たくみちゃん、どうしたの? 難しい顔して」

いつの間にか朝礼は終わり、加藤の隣に畑口が。考えがまとまらないまま、畑口登場で思わず頭が真っ白加藤。何やら畑口は話をしているが、全く頭に入らない。生返事を繰り返していると……やがて話は終わり、畑口は去っていった。

(よく分からないけど、取りあえず今日はカラオケなしになった……でいいのかな? 何か気の抜けた生返事ばかりで気分悪くさせちゃったかな? ま、結果オーライか……)

等と考えていると、再び畑口が登場。そして、畑口の口から今までで一番意味不明な言葉が飛び出した。

「九重ちゃん、OKだって。じゃ、今からホテル行こっか」

「──?!」

「何驚いてるの? さっき言ったじゃん。ほら、時間が勿体ないからいくよ!」

「ちょ、ちょっと──」

そして1時間後──加藤は九重と2人でベッドに座り、畑口のシャワーを浴びる音を聞いていた。

ここはどこ……?

──ホテルの部屋

意味が分からないまま加藤と九重はシャワーを浴びる事となり、ホテルに備え付けのバスローブに着替えたところで──畑口が持ち込んだワインで飲み会が始まった。最初こそ意味が分からず固まっていた加藤と九重ではあったが、ワインボトルを2本開けた頃にはすっかりどうでも良くなり──ホテルの備え付けのカラオケで盛り上がっていた。

そして場面は冒頭より少し時間が進む。

九重は非常に楽しそうだった。子供みたいに無邪気に笑い、そして良く喋って良く歌って……どれくらいの時間が経過したであろうか、気が付いたら九重は疲れ果ててベッドで眠ってしまっていた。

「あ~、九重ちゃん、寝ちゃったね。ちょっと飲ませすぎちゃったかな」

「伊織さん……今日は本当にありがとうございました。あんな楽しそうなあす……九重を見るの、初めてでしたから……あ、あの……良かったらこれからも九重と遊んでもらっていいですか? コイツ、友達が少ない……というかいないんですよ……」

「www いいよ。それにしてもたくみちゃん、ホント九重ちゃんの事、大事なんだね」

「は、はい……俺には勿体ないくらい……いい女です」

「……ホントに一緒になればいいのに」

「──?!」

「九重ちゃん、もうすぐ結婚するんでしょ? ホントにそれでいいの?」

「な、何で……いや、伊織さんならそれくらい分かっちゃっても不思議じゃないですね。……お気づきの通り、俺と九重は仮初の恋人でしかありませんし、同棲といってもルームシェアに近いです。九重にはフィアンセがいて……12月に結婚予定です。それが……九重にとって一番ですから。俺は……親友として、コイツが幸せになるのを遠くから見れたら……それで十分ですから」

「九重ちゃん、たくみちゃんが望めばきっと──」

「俺の傍にいてくれるでしょうね……知ってます。コイツ、ホントいいヤツですから。このままコイツと面白おかしく生きていけたらどれだけ幸せか……なんて考えちゃう弱い自分もいます。けど……」

「たくみちゃんだって幸せになっていいんだよ? 九重ちゃんだってきっとたくみちゃんの事──」

「恋愛と結婚は……別物ですから。俺なんかの為に、数年無駄にしちゃったら……それだけ不利になっちゃいますから」

「……後悔しても知らないよ?」

「きっと後悔しますよ、もの凄く。ただ……俺のせいで九重が不幸になったら……それこそ後悔してもしきれません。俺がこれから行く道は……いばらの道そのものですから……」

「……ホント、変態ドMだね、たくみちゃん」

「www 俺は孤高の変態異常者ですから。大きな声では言えないですけどね」

「wwwwww」

「wwwwww」

挿話?

取りあえず九重と畑口はそこそこ仲良しだったよ、きっかけはこんな感じだったよ、という回です。

人によっては「えっと、何でラブホテル? 全然理解不能なんだけど……」となるでしょうが、最近の若者達なら「あぁ、実は穴場だよね。昼間のフリータイムって意外に安いし、カラオケ店よりリラックスできて快適だよね。横にもなれるし、ビデオもゲームもあるし」と、ある一定の理解を得られる……かな?

場所が場所なだけに、大いに誤解されたりしましたが……ビックリするくらい何もなかったですね。この組み合わせで何回か同じ事しましたが。。。

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