#7 兄妹旅行
■有馬温泉の某温泉宿(1日目)
「──ふぅ、いいお湯だったね。お兄ちゃん、待った?」
「あ、今出たところだよ。じゃ、部屋に戻ろっか」
「うん♪」
──部屋
「あ……れ? 布団1組しかないじゃん」
「あ……中居さん、勘違いしたんだ……私達の事……」
「……ちゃんと兄妹って記入したのに……勘違いしようがないじゃん」
「兄妹で危ない関係だと思ったんだ……で、気を利かせたつもりなんだ……」
「意味分からん……取りあえず今から文句言って──」
「ま、いいじゃん。一緒に寝れば」
「い、いやいや……いくら何でもそれは──」
「早くお布団に入って寝ないと、湯冷めしちゃうでしょ?」
「でも──」
「いいから! 早くお布団に入って!」
「は、はい!」
「良し♪ じゃ、電気消すよ? おやすみ~」
「…………」
「…………」
「お、お兄ちゃん。き、緊張しすぎ~。滅茶苦茶身体に力入ってるじゃん」
「み、美子ちゃんだって。微妙に身体震えてるし、生唾何回も飲んでるし」
「わ、私は……ちょっと寒いだけだから。ちょ、ちょっと身体ひっつけてもいい?」
「え? あ、あぁ……いいよ///」
「……///」
「……///」
「お、お兄ちゃん……な、何か喋ってよ」
「み、美子ちゃんこそ……」
「お兄ちゃん、心臓ドクドクいってるよ」
「そ、それは当然でしょ。ドキドキするって、そりゃ……」
「私だって──ほら、ね♡」
「──! む、胸を顔に押し付けなくて……も……────ッ」
「……え? な、何でこの流れで泣くの?」
「……昔、思い出しちゃって。シチュエーションは違うけど……あすかと同じやり取り……したな~……って……────ッ」
「……そっか……」
「あの時、あすかの気持ちに気付いていれば……今思い返せばあんな分かりやすいサインだったのに……どうして…………あ、あれ?」
「ん? どうしたの? 今度はいきなり我に返って」
「い、いや……俺、こういう事、滅茶苦茶鈍感だから間違ってるかもしれないけど……今までの経験に当てはめると……信じられない答えが出ちゃうんだけど」
「ん? 何?」
「あ……い、いや……な、何でもない……です」
「??? 変なの。あ、私の胸の感触どう? 感想は? 興奮した? する?」
「……バカ!」
「wwwwww」
「ったく……変に考えた俺がバカだったよ……」
「……気、紛れた?」
「ん? 何が?」
「あすかさんの事。……泣いてたじゃん」
「あ……そういえば……あ、ありがと、美子ちゃん」
「どう致しまして♪ ……お兄ちゃん、腕枕して♡」
「……はい、これでいい?」
「──♡ お兄ちゃん、ありがとね……旅行連れてきてくれて……」
「いや……お礼を言うのは俺の方だよ。どれだけ美子ちゃんに助けられた事か……俺の為に留年まで──」
「zzz……」
「……って、速攻で寝てるし……ちょっと意識した俺、バカみたいじゃん。……ま、そんな事ある筈ないか、俺はお兄ちゃんだし。美子ちゃんの為に……お兄ちゃんに徹しなきゃ……理想の……お兄……ちゃん……に……zzz」
■下呂温泉某温泉宿(2日目)
「──や、やっと着いた……疲れた……」
「ぅわ~、キレー。ほら、お兄ちゃん、窓から中庭見えるよ! 雪も残ってて凄いよ! お兄──」
「……スー……スー……」
「あ……座ったまま寝ちゃった……ほら、お兄ちゃん、そんな所で寝ちゃダメだって……しょうがないな~、膝枕してあげるから。……はい、ここに寝て」
「ん……ん~……」
「連日の長距離運転お疲れ様、お兄ちゃん。ありがとね、こんな遠くまで連れてきてくれて……」
「……zzz」
「後でゆっくり温泉入ろうね……」
「……zzz」
「また今日も一緒に寝ようね。……また癒してあげるから」
「……zzz」
「私は妹だし。お兄ちゃんの為に……妹に徹しなきゃ……理想の……妹……に……zzz」
■草津温泉・温泉街(3日目)
「ぅわ~、キレー。キャンドルの灯りと湯けむり、そして粉雪……凄い幻想的~」
「……けど、浴衣で歩くには……寒すぎるよ……」
「TPOだよ、お兄ちゃん。温泉街に浴衣姿はドレスコードみたいなものだよ」
「そ、そう? 初めて聞いたけど……」
「今の時代の常識だから。(ブルッ)うぅぅ……寒い~……お兄ちゃん、肩抱いて~」
「──え? そ、それは……」
「お兄ちゃんだって寒いでしょ? 肩抱けばお兄ちゃんも暖かいじゃん」
「そ、そうだけど……それは不味い様な……」
「仲の良い兄妹なら誰でもしてるから。……私達も……ね」
「わ、分かった……(ギュッ)」
「────♡」
■草津温泉某温泉宿の部屋・夜
「……3泊4日の旅行も明日で終わりか……ある程度予想出来てたけど、かな~りキツかったな。……殆ど運転していた様な……もうちょっとゆっくりしたかったな……」
「www じゃ、もう少しゆっくりしていこうよ」
「──え?」
「別に3泊4日って決めてた訳じゃないし、もう1-2泊くらいしてもいいじゃん。……いいでしょ?」
「……そうだね。……ちょ~っとだけ嬉しいかも。……俺も、もうちょっと旅行したかった気分だし」
「……そんなに私と一緒に寝たいの?」
「あ……い、いや……そ、そういう訳では……」
「あ、そう。……じゃ、今日は別々に寝よっか。今日は布団も2組あるし、わざわざ一緒に寝る必要もないしね~」
「え……あ……そ、そうだね……」
「www そんな残念そうな声出さないでよ~。……今日もこうやって一緒に寝たいんでしょ?」
「あ……い、いや……は、はい……けど、変な意味じゃなくって──」
「www 言い訳しないでいいから。兄妹愛を深めたいんでしょ?」
「……///」
「もっと、も~っと仲深めようね。……誰もが羨む、世界一の兄妹に……ね」
「……そうだね……」
「お兄ちゃん……だ~い好き」
「俺も……美子ちゃんの事、大好きだよ」
「────♡」
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