#3 慟哭
──3日後
「ただいま~……あれ? お兄……さん?」
「あ、お帰り~。幸子がいない間、ちょっと……ね」
「久しぶり、幸子ちゃん。……さてと、幸子ちゃんも帰って来た事だし、俺、帰るわ」
「……どこに帰るの?」
「え? 決まってるじゃん、家だよ。……あすかも待ってるし」
「……あすかさん、もういないじゃん」
「いや、ちょっと喧嘩して出てっただけだから。……そろそろ戻ってくる筈だから。……俺が全面的に悪いから、謝らなきゃ」
「……あすかさん、二度と帰ってこないから」
「いや、それはないって。アイツ……行くところ他にないから。友達もいないし、実家とも疎遠だし……そろそろ帰ってくるって。愚痴や嫌味、聞いてあげなきゃ」
「……あすかさん、壊れてて話せない……じゃん」
「い、いや……ちょっと拗ねてるだけだから。俺、あすかの元に行くの、遅くなっちゃったから。中々機嫌治してくれないけど……喋ってくれないけど……いつかは……」
「……あすかさん、死んじゃった……じゃん」
「ちょ! 縁起でもない事言わないで! いくら美子ちゃんでも怒るよ? アイツが……あすかが死ぬなんて……ある筈……ないじゃん。俺がどうにか──」
「お兄ちゃん! 現実、受け止めなきゃ。ホントは……分かってるんでしょ?」
「だって……まだ……何も出来てない……俺が諦めちゃ……俺だけでも信じなきゃ……」
「どうにもならない事だって世の中、いくらでもあるから! どんなに願ったって……あすかさんは生き返らないから! お姉ちゃんだってそうだったでしょ!」
「……ぁぁぁああああ──」
「…………」
「俺のせいで──俺がクソだから──クズだから──結局また何も出来ず……ぁぁぁああああああ──」
「お兄ちゃんのせいじゃないから。……あすかさんの運命だったから」
「ぅわぁぁあああ────」
「心が押しつぶされそうだよね……目の前が真っ暗に見えるよね……凄い息苦しいよね……辛いよね……悲しいよね……分かるよ。……お兄ちゃん、おいで。慰めてあげるから……私の胸の中で……ね。少しはラクになるから……」
「……────ッ」
「ようやく……シラフで泣けたね。吐き出せたね。……気が済むまで泣いていいから。ずっと抱きしめてあげてるから……」
「────ッ」
「お兄ちゃん……大変だったね……辛かったね……頑張ったね……」
「────ッ」
「無駄じゃなかったから……あすかさん、きっと幸せだったから……お兄ちゃんは悪くないから……」
「────ッ」
「お兄ちゃんの気持ち……想い……絶対通じてたから。幸せのまま……天国に逝けたから……」
「────ッ」
「お兄ちゃん……大変だったね……辛かったね……頑張ったね……」
「────ッ」
──1時間後
「……あ、お兄ちゃん……泣き疲れて寝ちゃった? じゃ……このまま横になろっか。お布団かけてあげるね」
「……zzz」
「……お姉ちゃん、これは……どういう事?」
「ん? 見ての通りだよ? どうやらあすかさん、死んじゃったみたい」
「……え? な、何で……?」
「まだちゃんと聞けてないけど……どうやら自殺しちゃったみたい。精神も病んでて……最期まで一言も会話出来なかったみたい」
「な、何それ……それじゃお兄さんは……」
「自分のせいで自殺したと思ってる……だろうね」
「ダメじゃん! ちゃんと真実教えてあげないと──」
「今は……無理だよ。よけい錯乱させるだけだよ。……今は……現実と向き合うだけで精一杯の筈だから。……あすかさんは死んだんだって……」
「…………」
「時間はかかるかもだけど、お兄ちゃんの心の穴……埋めてあげなきゃ。居場所を作ってあげなきゃ。……本当の家族にならなきゃ……」
「……うん」
「私達が……お兄ちゃんを救ってあげるよ!」
「……うん!」
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