第17話:同棲
11月初旬、退院した加藤は意味も分からないまま田中の家に向かっていた。田中はこれから一緒に住む家族になるんだから、と意味不明な事を嬉しそうに話している。が、実際は同居はないと加藤は確信していた。それは田中の現在の住処の間取りを知っていたからである。
田中の現在の住処の間取りは6畳のお茶の間に4畳半の部屋2つ。そこに田中と妹2人に弟1人の計4人が住んでいる。どう考えても加藤の住むスペースはない筈である。
(何かぶっ飛んだ事言ってるけど、ちょっと表現が大げさなだけで、要するに家族の様にこれから接するという意味だよな。……じゃ、ご厚意に甘えて飯だけ食って帰るか)
こう頭で考えながら、ぶっ飛んだ田中の話を余裕をもって軽く聞き流していた。が、加藤の読みは大きく外れる事となり、頭が真っ白になる事となる。
──田中の家(実家)
「お……お邪魔しま~す」
「あ、もっとくつろいでよ~。今日から一緒に住むんだから、ね♪」
「え、え~っと……ご飯だけ頂いて帰ろうかな~って思ってたんだけど……」
「な~に言ってるの? もう部屋も用意してるんだから、今更遠慮しないで、ね♪」
「え、え~っと……部屋って言われても……この家ってこのお茶の間あわせて3つだよね。……俺、どこで寝るの?」
「ん? さっき言ったでしょ? 私と一緒の部屋だよ?」
「──?! い、いや……そ、それは不味いって!」
「ん? 美子や幸子と一緒のが良かった? けど、そっちのがヤバくない? 高1と中3だし」
「い、いや……当然それは論外として、せめて豪君と──」
「あの子は1人じゃないと寝れないから」
「じゃ、玄関──」
「見て分かると思うけど、寝られる筈ないじゃん」
「……マ、マジで?」
「ちょっとだけ狭いけど、我慢してね♡」
……田中の言っていた事は紛れもない事実だった。相変わらずの展開で頭がついていかない中、夕食が終わり、そして問題の夜がやってきた。
──寝室(四畳半の美幸さんの部屋)
「──?! え、えっと……俺の布団は?」
「ん? 見ての通り、この部屋に布団2枚敷けると思う?」
「そ、それは分かるけど……俺はどこで……ま、まさか──」
「そ! 私と一緒の布団で♪」
「もしかして、枕が1つなのも──」
「私は腕枕で十分だから♪」
「む、無理だって! 俺、寝れないじゃん、絶対!」
「ん? なんで? 人肌の温もりって寝やすいよ?」
「その通りかもしれないけど! それ以前に理性が保てないって!」
「ん? 別にいいじゃん、無理に理性保たなくても。私は全然構わないから」
「で、でも──」
「取りあえず、寝よ? 電気消すよ? お休み~♡」
「(マジか……)」
「……たくみ君、あったか~い。落ち着く~」
「……お、俺は頭真っ白になってて全く落ち着かないけどね……な、何でバスタオル一枚の美幸さんとこんな事に……な、なってるのか……」
「www もう付き合ってるんだし、こないだキスだってしてるじゃん。順調にステップ踏んでるじゃん」
「い、いや……ステップ略しすぎじゃん……デートすら一度もしてないのに……頭真っ白になってるよ」
「www ほら、もっと力抜いて。で、思いっきり深呼吸して。リラックス、リラックス♪」
「(スー……ハー……)あ、あかん……風呂上りの美幸さんの匂いがモロに……あ、頭がクラクラしてきた……」
「www 最初だけだから、慣れるから。……リラックスして、そのまま目を瞑って、私の体温感じて、私の息遣いに合わせてみて。私と一体になる感覚で、ね♪」
「な、何か凄くえっちぃ気がするんだけど……」
「www 騙されたと思ってやってみて、良く寝れるから。じゃ、私もう寝るからね」
──3分後
「(スー……スー……)」
「(マ、マジで寝やがった……)」
「(……zzz)」
「(あ、寝息まで……し、信じられん……と、取りあえず言われた通りしてみるか……スー……スー……zzz)」
──翌朝
「おはよ、たくみ君♡(チュッ)」
「!!!/// え? あ、あれ? ここは? み、美幸……さん?」
「www 寝ぼけてる?」
「──! そ、そうだった……思い出した! あれ? いつの間に寝たんだろ?」
「ね? 人肌って寝やすいでしょ?」
「た、確かに……これだけ寝たのってどれくらいぶりだろう? あ……頭が凄い軽いや」
「良かったね♪ じゃ、ちょっとこの部屋で待っててね。朝ごはん、これから作るから」
「あ、ありがと……」
こうして、加藤と田中(一家)との摩訶不思議な同居生活がスタートしていった。
──はい、これからは私がしっかり管理しますので♪
これから、この意味を加藤は身を持って理解する事となる。
挿話?
ま……ここまでお読みの方はある程度耐性ができていてそう驚きもないでしょう笑
ま……よくある話だよね、ほら、芸能人なんか交際0日で籍を入れたとかあるくらいだし。一緒に寝るってったって、よくワンナイトラブとか雑誌で特集記事があるくらいだし……とでも思って下さい。
ドラマや漫画の世界じゃ、全然珍しい話でもないですよね。
……ノンフィクションですけどね、これ。。。
次回は、異様に甘~い話……かな?
もうしばらく「ラブコメ」が続きますが、今しばらくお付き合い下さいませ。
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