#18 結婚前夜
──9月9日 ~寝室~
「……こうやって一緒に寝るの、今日で最後だね」
「……zzz」
「明日起きたら……教会行ってウエディングドレス着て……結婚式だよ。信じられる?」
「……zzz」
「お兄ちゃんも他人事じゃないからね。父親役として、一緒にウエディングロード歩くんだから。責任重大だよ!」
「……zzz」
「心の準備できてる? 明日の夜にはもう私、いなくなるんだよ」
「……zzz」
「って、お兄ちゃん……結婚伝えた時、あまり驚いてなかったね。薄々気付いていたんだね。……感情が劣ってる分、色々なものが見えるって言ってたし」
「……zzz」
「最後までお兄ちゃんでいてくれて……ありがとね。8か月間、ホント、楽しかった」
「……zzz」
「それにしてもお兄ちゃん、ホント手間かかったんだからね。1人じゃ寝つき悪くてすぐ夜泣きして……一緒に寝て抱きしめてあげないと寝れないんだもん。……おかげで、寝不足の日々が続いたんだから」
「……zzz」
「お兄ちゃんが心配だから、なるべく早く家に帰る様にしてたし……たまには友達と遊びに行きたかったんだからね。後、たまには1人の時間、欲しかったんだからね」
「……zzz」
「掃除や洗濯も雑だし、食器洗いもしょっちゅうコップとか割っちゃうし、ろくに野菜も切れないし……ホント、役立たずだったんだから」
「……zzz」
「知ってた? 毎日の食事、栄養バランスを考えて作ってたんだよ。凄い手間かけてたんだよ、お兄ちゃんの為に」
「……zzz」
「ホント、まるで専業主婦みたいな日々だったんだからね」
「……zzz」
「だけど……毎日、ホント幸せだった。ずっと、ず~っと、こんな日々が続いていけばって……思ってた」
「……zzz」
「旅行もいったよね。兄妹なのに一緒の布団で寝たり、肩抱いて歩いたり、一緒に温泉入ったり、キスしたり……バカップルみたいにもなってたよね」
「……zzz」
「体操着姿で一緒に寝たり、下着姿で一緒に寝たり、裸のまま一緒に寝たり……変な子って思ってたでしょ」
「……zzz」
「けど、お兄ちゃん、嫌いじゃなかったでしょ。鼻の下、伸びてたもんね。特に体操着姿! 裸の時より元気だったよね。……ヘンタイ!」
「……zzz」
「知ってる? お兄ちゃん、私と何回もHしてるんだよ。赤ちゃんだって、ホントは──」
「……zzz」
「私、お兄ちゃんの理想の妹でいられたかな? 好きになって貰えたかな? ……世界一の妹になれたかな?」
「……zzz」
「ここでの生活、気に入ってくれたかな? 楽しくて幸せだって思ってくれたかな? やっぱり死にたくないって……ここで生きていきたいって……私が必要だって、思ってくれないかな」
「……zzz」
「お兄ちゃん……ホントに私がいなくなってもいいの? 結婚しちゃっていいの? 他の人の所にいってもいいの? もう……こうやって一緒に寝れなくなるんだよ? いいの?」
「……zzz」
「お兄ちゃん、明日、式が終わったら……出ていく気でしょ。二度とここに戻らないつもりでしょ」
「……zzz」
「俺は終わった人だから、邪魔しちゃいけないからって……あすかさんの所に逝くつもりでしょ」
「……zzz」
「どれくらいお兄ちゃんと一緒にいると思ってるのよ。それくらい分かるんだから」
「……zzz」
「後悔しても知らないからね。逃した魚は大きいって……私みたいな子なんて、絶対他にいないんだからね」
「……zzz」
「もしイヤだったら……ギュッと抱きしめてよ。言葉で言わなくていいから」
「……zzz」
「……しょうがないから、待っててあげる。お兄ちゃんが心の底から生きたいって思うまで……感謝してよね~、お兄ちゃんの為に私、人生を棒に振るかもしれないんだから」
「……zzz」
「……必ず帰ってきてね。その時は……ちゃんと素直に言ってね。私達……私と一緒に暮らしたいって……生きていきたいって。そしたら……お願い叶えてあげるから。なんでも券に免じて、ね」
「……zzz」
「お兄ちゃん……大好き。お兄ちゃんは? 同じだったら、またギュッと抱きしめて」
「……zzz」
「────♡」
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