#4 川の字
「……あ~あ、またお兄ちゃん、酔いつぶれて寝ちゃった」
「しょうがないよ……あんな事、あったんだから……今はせめてゆっくり休まないと」
「今日無理矢理キャンプ連れていったけど……ダメだったかな?」
「一見楽しそうにしてたけど……私達に気を遣ってたんだよね、きっと。無理に作り笑顔作って……明るく振舞って……見てるの辛かったな……」
「そうだよね……やっぱ迷惑だったよね……」
「……それはないよ。いい気晴らしになってる筈だし……お姉ちゃんの明るさに救われてる筈だよ、きっと」
「……だといいけど。──さてと、今日も一緒に寝ようかな」
「──?! お姉ちゃん、どういう事?」
「せめて、寝ている間だけでもいい夢見て貰いたいな~って。……こうやっていっつもお兄ちゃんを抱きしめて寝てるの♪ ほら、抱きしめ返してきた♡」
「え、え~っと……お姉ちゃん……それはちょっとやり過ぎじゃない?」
「え? 何で? 兄妹だったらこうやって寝るの、普通じゃない?」
「多分、普通じゃないよ。百歩譲って子供の頃ならともかく、大人の兄妹が抱き合って寝るなんて……万が一過ち起きたらどうするのよ……」
「ん? 過ちっていうのは?」
「え~っと~……その~……男女の関係になるって言ったらいいのかな……」
「あ~、そういう事? ……もうなってるから♡」
「……ダメじゃん。……近親相姦じゃん……」
「ん? 血が繋がってないから何の問題もないじゃん」
「……お兄さんは知ってるの?」
「ん~、知らないんじゃないかな~。夢であすかさんとしてると思ってるんじゃない?」
「……意味分かんないよ……万が一デキたらどうするのよ……」
「ん? 何が?」
「え~っと~……ストレートにいったら赤ちゃん……」
「あ~。……デキたらデキたで問題ないよ」
「ちょ! ど、どうする気なのよ!」
「ん~、結婚すればいいかな~って。……彼氏と」
「……鬼だね、お姉ちゃん……彼氏さん、可哀相……」
「そんな事ないよ~。これを機に私と結婚できるなら、彼氏だって本望じゃん」
「……もしもお兄さんがお姉ちゃんと一緒になりたいって言ってきたらどうする気?」
「ん~、ないと思うけど、その時は即答に決まってるじゃん♡ 離婚してでも一緒になるよ、絶対」
「……鬼より酷いね、お姉ちゃん……」
「お兄ちゃんの為なら、鬼でも悪魔でも何でもなるよ。私はお兄ちゃんにとってのみいい人であればいいから」
「……そこまで想ってるなら、お兄さんと一緒になればいいじゃん……」
「それは無理だよ~。だって、お兄ちゃん、私の事、ホントの妹だって思ってるから。……私も妹という立場で満足してるし。下手に恋愛感情持ち出して関係崩れるの、イヤじゃん」
「…………」
「お兄ちゃんには……父親役として一緒にバージンロード歩いて貰えたらな~って。みんなに自慢のお兄ちゃんをお披露目したいな~って。立派に育った私を見て貰いたいな~って」
「……それ、いいね」
「でしょ? 幸子も私と同じじゃん! こういう所、やっぱり姉妹だよね。あ、まさか私と同じ事した事あったりしてw」
「……//////」
「ちょ! 冗談でしょ? いつ? ま、まさか……私が友達と温泉旅行いってた時に?」
「わ、わ、私はお姉ちゃんと違ってちゃんと避妊したから!」
「……お兄ちゃん、とんでもない男だね。……3姉妹制覇した男なんて、歴史上でも数える程しかいないよ、きっと……」
「お兄さん、実は凄い女ったらしだったりして……もしホストとかやってたら歴史に名を残したかも……」
「……道を踏み外さない様に、私達が首に縄付けておかないと……だね」
「それは同感……かな」
「よし! 今日は3人で一緒に寝よ!」
「──は?」
「ほら、幸子も横になって! お兄ちゃんを後ろから抱きしめて!」
「ちょ! 意味不明だよ。万が一があったらどうするのよ!」
「……って言いながら、もう抱きついてるじゃん……ぅわ~、お兄ちゃん、幸せ者だ~。美人姉妹にサンドイッチにされて」
「……お兄さん、早く元気になって下さいね。私は……いつでもお兄さんの味方ですから」
「……幸子、もうスイッチ入ってるし……」
「お兄さんは……私達の大事な人だから……家族だから」
「……私達がお兄ちゃんの居場所、作ってあげる。一杯幸せ、あげる。お姉ちゃんや伊織さんや……あすかさんの代わりに……それ以上に……」
「……zzz」
「……zzz」
「……zzz」
コメント