第22話:異様なアポ成約率
「なになに、今待ち合わせ場所付いたって? ちょっと早いなぁ。 だったら──もう少し着くの時間かかりそうだから、先にネカフェ入っていて下さいっと」
「(じーーーっ)」(やり取りを興味深く見つめるみのりちゃん)
「なになに、いえ、待ってますので一緒に入りましょうだって? だったら──一緒に入ると店員さんに怪しまれるので、別々に入る様にしています。 それでお部屋番号お教え頂いたら、内緒でコッソリ行きます、こうするとまず怪しまれませんからね、と」
「……うわぁ、上手いですね。これなら自然とネカフェに来させる事、出来ますね」
「まぁ……慣れだね。隣のビジネスホテル前の待ち合わせだから出来る芸当だけどね。 お? 今度は駐車場着いたって人いるね。どうする? 呼び寄せてみる?」
「はい、外に出るの面倒──というかそんな時間なさそうですから」
「了解。 えーっと──ちょっと早めについてしまったので、時間潰しにネカフェに入ってしまいました。 車内よりこちらのが落ち着けますし、人目も気にならないので、良かったらコチラまで来ませんか? ちょっと転んで足ひねってしまい、そちらまで歩くのが少し辛いんです、と」
「……よくもまぁ、そんな殺し文句がスラスラ出てきますね。上手いなぁ……」
「まぁ、もう何度もやってるからね、アポ取り。そりゃ上手くなるよ。似たようなケース、何件もあったしね」
「あと、アポの精度が異様に高くなってません?」
「前日の楽しみにしてますメッセージ、朝一の確認メッセージの賜物かな? アポ取った9割くらいの人が成約に結び付いてるね」
「素晴らしいです♪ 流石、私が見込んだだけはあります♬」
「お褒めに預かり光栄です。──って、ホントこれで食べていける気してきたよ……」
「私以外、どーやってパートナー探すんです? 無理ですってー♡」
「ま、他の子を探す事はしないけどね……みのりちゃん、大学休学して週4くらいやらない? 月150万ずつ稼げ──」
「やりません! 私は普段は優秀な大学生ですから。 授業休んだら成績落ちて奨学金貰えなくなっちゃうじゃないですか!」
「ん~、やっぱ今度は夏休みかぁ。 20日くらい稼働?」
「あ、旅行もいくので15日くらいで。 この日数で100万欲しいです♪」
「ん~、1日14万ノルマかぁ。いけるかなぁ?」
「今のジュンさんのスキルなら余裕ですって♪ あ、みのりちゃんの誕生日は8月にしましょ。 誰かプレゼントくれるかも♡ それもよろしくです♬」
──みのりちゃんも伝説の域なれど、俺のアポも伝説の域に達しつつあるのであった。
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