最終話:ウエイトレスと占い師
──5年9ヶ月後
「お兄ちゃん、今日は外のお仕事?」
「ん? まぁ、ね」
「で、今日はどの名前での活動?」
「あ、今日は……上杉ね。夕方までには帰ってくるから」
「あ、今日は占いなんだ~。……へぇ~、また若い子相手に?」
「あ、い、いや……きょ、今日はおばさん相手だから……」
「へぇ~、守備範囲広いんだね~。流石、年増女キラー」
「──?! な、何を言い出すの……俺がモテる筈ないじゃん。し、仕事だから」
「本当に~? けどお兄ちゃん、エッチじゃん。タイプだったらそのままホテル行っちゃうんじゃないの~?」
「そ、そんな事しないって! 俺、そこまで強くないって! ……昨日だってしてるし!」
「じゃ、今日の夜、チェックするよ? いつもより少なかったらすぐ分かるんだからね!」
「だ、大丈夫だから。じゃ、いってくるよ」
「……日課、忘れてる!」
「あ……愛してるよ、美子。じゃ、いってきます(チュッ)」
「──♡」
■昼下がりのとある人気のない喫茶店
──この喫茶店って言ってたよな? 5年後って言ってたよな……いねーじゃん! 曜日を変えて2週間置きに1年くらい何かと理由つけて通ってるけど、全然いねーし! って、流石に5年以上前の約束なんか忘れてるか。……そもそも現実じゃなくて幻だったかもしれないし。……まぁ、後3ヶ月通って会えなかったら、もう来るのやめるか。……美子も五月蝿いし……
「……あ、あの……上杉先生ですか?」
「あ、京子さんですね? お待ちしておりました。では早速──」
──2時間後
「──幸せの形は一つではありません。きっとあなたに未来は微笑みますよ」
「うぅ、ありがとうございます、先生……またお願いします」
──5分後
「カチャカチャカチャ……フゥ~……」(タバコを吸いながらパソコンを弄っている図)
「あの~、ちょっといいですか?」
「(ビクッ!) は、はい?」
「あ、いきなり声掛けてすいません」
「あ、あぁ……ウエイトレスさんか。どうしました? あ、やはり不味かったですかね、ここで占いしてたら。コーヒー2杯で2時間もいましたし……」
「あ、やっぱり! 占いされていたんですね? そのカードって何ですか?」
「ん? タロットカードですよ。これ使って、タロット占いやってたんです」
「へぇ~~、占い師さん、初めて見ました。当たるんです?」
「ま、他の占い師よりは、かな?」
「じゃ、私を占って下さい♪ コーヒー代サービスしますので♬」
「えっと……俺の鑑定料、それじゃ足りないけど……」
「初回サービスって事でお願いします♪」
「じゃ……触りだけ、ね。ただ、接客しなくて大丈夫?」
「あ、大丈夫です♪ この時間はまずお客さん来ないですから♬」
「あ、そうなんだ……じゃ、早速やろうか」
「はい、お願いします♪」
「じゃ、占いをする前に、ちょっと質問するね」
「は~い」
「まず、ウエイトレスさんの名前と年齢教えて」
「私、幸せと書いてユキって言います。高校3年生です♪」
──fin
※4話程、グランドフィナーレ(?)で続きます。
補足?
今回で長らく続いた「たくみの営業暴露日記」は終了になります。本当はこのラストは「独立後の軌跡」に書いたものですが、九重の絡みからユキの流れまではセットみたいなものでしたので、こっちに採用しました。
本当はこの後もそこそこ続くのですが、物語的にこんな感じの再会で終わるのがキレイかな、という事で気合で略しました。(実は既に全て書き切ったものがあるので、いずれ掲載するかもですが、もう営業ともFPとも全く関係ない、かつ異様に危ない話になってくるので・・・繋げて掲載はしない予定です)
色々ツッコミがあるでしょうが・・・総評に関しては、後4つ程フィナーレ的な内容を書いたあとがきで。
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