第15話:アレキシサイミア ~失感情症~
──付き合う様になった翌日
「最近、気付いたんだけどさ~、たくみ君と私って似てるね」
「えっと……ど、どこが? あまり共通点ない様な気するんだけど」
「実はね~、私、感情が欠落しているの。喜怒哀楽の怒るという感情と哀しいという感情が分からないの♪」
「……言われてみれば、お母さん亡くなった時とか同棲している彼氏と別れた時でも、ケロっとしてたね……」
「よく分からないんだよね~、そういう感情が。楽しい、嬉しいっていうのは得意だけど♪」
「www で、俺の何が似てるの?」
「色々な感情が欠落している所♪」
「──は? い、いやいや……俺、感情持ってるって!」
「けど、よくKYって言われない? 後、感情が後からついてくるとか」
「そう言われたら……あるかも……」
「それ、アレキシサイミアって言うんだって」
「アレキ……えっと、何それ?」
「日本語だと失感情症って言うみたい。要するに感情を認知するのが苦手って言う事みたい」
「えっと……それは分かったけど……俺が?」
「あ、自覚ないんだ~。じゃ、ちょっと教えてあげるね。……多分だけど、たくみ君、今会社で孤立してるでしょ」
「──?!」
「今まで慕ってた先輩にまで酷い事、言われたりとかして」
「あ……い、いや……な、何で?」
「私は色々感情が欠如してるから、その分色々見えたりするの。続けるけど……ショックだった?」
「──え? な、何が?」
「色々あって孤立した時」
「い、いや……世の中こんなもんかな~って思って割り切ってたけど」
「多分だけどね~、普通の人はショックを引きずってそんなに簡単に割り切れないかな~って思うけど、たくみ君はどう思う?」
「そう……なのか……な?」
「ね? たくみ君も欠落しているでしょ?」
「……し、知らなかった……」
「更に言うと……それを知ってもショックって思わないんじゃない?」
「う……」
「ほら、やっぱり♪ 私と同じじゃん♬」
「い、いや……そんな嬉しそうに言われても……」
「ほら、やっぱり仲間じゃん。多分、今のままいったら、壊れちゃうよ~。私もお医者さんにそう言われたし♪」
「えっと……壊れる? どういう事?」
「感情が分からないだけで、どんどん蓄積されているんだって。で、限界まで溜まると精神が壊れちゃうみたい。後、身体に症状現れたりして、最悪死んじゃうんだって♪」
「い、いや……そんなに明るく言う内容じゃないじゃん! どうにかならないの?」
「私レベルになると、難しいみたい。なるべくストレスを減らすのがいいみたいだけど、何がストレスかって分からないし♪」
「……そっか……」
「ね、どんな風に壊れるか、ワクワクしない? いきなりなのかな~、徐々になのかな~♪」
「い、いや……ワクワクというより恐怖だよ!」
「ジェットコースターやホラー映画と同じだって。どうせなら楽しまないと、ね♪」
「な、なるほどね……」
「楽しみが共有できるって、いいよね」
「そだね……ん? もしかして、俺……も?」
「そ♪ だから、一緒に壊れよ♬ ね♡」
「……意味分かんないよ!」
「wwwwww」
■アレキシサイミア
アレキシサイミアとは、P. E. シフネオスらにより1970年代に提唱された性格特性の概念であり、ギリシャ語から作られた造語で、自分の感情を認知、自覚したり、表現したりすることを苦手とし、想像力や空想力の欠如を示す特性である。心身症発症の仕組みの説明に使われる概念だが、近年は共感能力、衝動性の欠如等、ストレス対処や対人関係との関連が研究されている。
アレキシサイミアは、心身症の患者の中でも治療が上手くいかない人に共通する特徴として提唱されたが、アレキシサイミアそのものは病気ではなく、一般の人の中にも普通に見られる性格傾向である。近年、フィンランドの大規模な疫学研究により、アレキシサイミア傾向のある人はそうでない人に比べて寿命が短いことが明らかになった。
挿話
はい、もう営業物語からかけ離れてますね笑 しかもまさかの「会話オンリー」ですし。
実はここらをすっ飛ばして最期だけ書いてみたのですが、それを読み直したら「これ……全く意味分かんないよ……なんだこれ?」となってしまったので、中途を入れる事としました。
アレキシサイミア──失感情症ですが、営業や苦情処理をやっている人あたり、程度の差はあるにしても大半の人が症状あるんじゃないかと。
いわゆる「ストレスのマヒ」というヤツですが、これって厄介なんですよね。例え強引でも、ある程度対処していかないと、どうなってしまうか? 今後の連載で実体験を元に書いていきます。
……怖いでっせ~。
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