第14話:思わぬ成果、そして……
田中が喫茶福井でバイトを始めて1カ月、気が付けば田中がバイトに入る日は喫茶店は人であふれる様になっていた。異様に美人なウェイトレスがいるという噂を聞きつけ、田中を一目見ようと訪れる客、そして田中目当てで常連になるお客は後を絶たず、喫茶福井の純利益は優に数倍になろうとしていた。
……ここまでは加藤の目論見通りであった。
が、ここから予想外の事が起きる。
──ある日
「あ、たくみ君、丁度いい所に来た。ちょっとこっち来て。この人、保険入りたいって言ってるから、説明してあげてよ」
「ん? い、いいよ……」
思わぬ成果にビックリしながらも、たまにはこういう事もあるよな……と思っていた。が、これがたまたまでない事を数日後、加藤は知る事となる。
それから2日後、また同じ様な流れで1人、そしてその翌日、また1人……
カウンターでFPの勉強をしているウェイトレスの田中、お近づきになりたいと思うお客が声をかけ、話をしているうちに保険の話になり、それで加藤を紹介──この流れが次々と。
この月、田中経由で保険に入った人数、実に13人。
一見意味不明な動きであった喫茶福井、そして田中。2つのピースが重なりあった結果──加藤は「化け物」級の成果を挙げる営業マンに変貌していた。
永遠のパートナー?
──とある夕暮れ
「えっとさ……美幸さん、冗談抜きに保険屋さんやったら? 仮に毎月10件契約とっていったら、年収優に4桁行くよ?」
「え~、別に私は今の時給でいいよ~。それに、保険屋さんになったら今みたいに好き勝手できないでしょ?」
「まぁ、そうだけど……何か凄い勿体ないな~って。……美幸さんなら、歴史上に名を残すくらいの伝説のセールスレディになれる様な……」
「ん~、別に興味ないし。私がやりたいのはあくまでも独立系FPだし。それに、たくみ君の役に立ってるでしょ?」
「正直、滅茶苦茶役に立って怖いくらいだけど、俺の懐ばかり温かくなるのは──」
「ならいいじゃん。……どうせ将来は同じ財布になるんだし」
「……は?」
「だって、私達、結婚するじゃん?」
「……い、意味分かんないんだけど。い、いつ結婚する事になったの?」
「ん? こないだ言ったじゃん。私と一緒にFPやろって。それって、そういう意味じゃん、誰が聞いたって」
「え、え~っと……100歩譲ってその話が結婚と同意味っていうのはいいとして、俺は……OKした事になってるの?」
「当たり前じゃ~ん。いつでも聞いてこいって言って、みっちり家庭教師までしてくれたじゃん。それって、俺はいつ結婚しても構わんぞ! って言ってるのと同じじゃん」
「え、え~っと……今、俺と美幸さんの関係って……どういう位置づけになってるの?」
「ん? 婚約者同士でしょ? 何言ってるの?」
「さ、参考までに、いつ結婚予定?」
「ん~、来年の3月くらい?」
「えっと……ドッキリじゃなくてマジで?」
「冗談でこんな話する筈ないじゃ~ん。ん? もっと早い方が良かった?」
「うぅぅ……話の展開が早すぎて全く頭が付いていけないよ……男女の仲はおろか、付き合ってすらいないの──」
「──♡」
「──?! い、今のは……何?」
「これで正真正銘、付き合ってる事になったでしょ? じゃ、これからもよろしくね、たくみ君♡」
「あ、あぁ……」
……これが、加藤に彼女兼婚約者(?)が出来たエピソードである。
以後、デート等を交え急速に加藤と田中は仲を深めていく事となるが、営業物語から大きく外れる内容となるのでその話は略とする。
挿話
まず、呼び込み営業について。
一歩間違えると悪徳絵画販売みたいな内容ですよね笑
ただ、こちらからアプローチを掛ける訳ではなく勝手に相手から言い寄ってくる訳ですから、別に悪徳でも何でもないですよね。
田中がウェイトレスをしていた半年間だけで、3桁近い保険契約をとっていました、これだけで。更に別枠で日高ちゃんというリーサルウェポンもいましたので、中々とんでもない成果を挙げてましたね。(他にも別枠組がいますが、文才ないので略する予定)
半年でこれだけ成果を挙げると、あれやこれや色んな人から質問責めに合う訳ですが、内訳を離すと皆「悪魔的発想の化け物」呼ばわりしてましたね、自分の事。
勝野あたりなんかは「お前、ホストの世界にいったら伝説作れるぞ・・・俺とホスト開業しないか?」等という始末・・・
まぁ、表面上だけみたら、そう言われてもしょうがないですよね。・・・当然、狙ってやったのなら正真正銘「化け物」ですが、全て偶然の産物に過ぎないという・・・
そして・・・とうとうラブコメになっちゃいました笑
この営業物語に恋愛ネタを入れる気はなかったのですが、一応自分のルーツの基礎となる出来事になるので、書かない訳にはいかないな、と。
えぇ、いきなり結婚を約束した事になって婚約者になってました。強引というか何というか・・・改めてみても意味不明ですよね。
恋愛感情・・・当時は皆無に等しかったですね。まだ日高ちゃんの方がそれに近かったくらいですから。それなのに・・・と。
ズルズル流されに流され、気が付いたら──
中途は略しますが、最期だけは書く予定です。それなりにドラスティックな人生歩んでまっせ、自分。
後数話程、「栄光時代」を書きますが、その後は「没落」へと移り変わっていきます。
こうご期待を。
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