grand finale ~永遠に……~
──ユキと再会した後の11月某日
「お兄ちゃん、どうしたの? 何か落ち込んでるみたいだけど」
「ん? 別にそんな事ないよ。ちょっと取材に疲れただけだから」
「そっか、お疲れ様。……明後日からいよいよ長期の海外旅行だね」
「……半分は仕事だからね。それ、忘れないでね」
「世界各国のカジノで荒稼ぎして……ドバイに持ちビル持つのも悪くないかも……いや、どうせならビバリーヒルズに豪邸建てて毎日ホームパーティを……ウフフッ♡」
「……ツッコミどころが多すぎてどうしたらいいか分からないよ……」
「wwwwww」
「けど、半年は日本から離れるのか……ちょ~っと寂しい気持ちになるなぁ」
「ん? 私と一緒だから寂しくないじゃん」
「ま、そうだけど、ちょ~っとね……」
「……そんなにあのウエイトレスの子と会えなくなるの、寂しいの?」
「(ドキッ)い、いや……な、な、何を言って──」
「いっつもデレ~ってなってるじゃん。可愛いもんね~、あの子」
「そ、そんなんじゃないから! ……というか、何で知ってるの? ま、まさか──」
「そりゃ、私、お兄ちゃんマニアだから♡」
「うぅぅ……まさかこっそり着いて来て監視してたとは……もう慣れたけど……」
「けど、流石にあの子には手、出さないか。まだ高校生だし」
「当たり前じゃん! それに今月で辞めるって言ってたから、もう会う事もないって」
「そっか~、それは残念だったね。……あ、お兄ちゃん、メール来てるよ。……どれどれ……」
「……当たり前の様に俺のスマホ見てるし……」
「……受験頑張ります? 大学生になってまた再会できるのを楽しみにしています? たくみさんの事、もっと知りたいです? ユキ……何これ?」
「──?! あ、い、いや……しゃ、社交辞令メールだって……深い意味ないって……」
「どんな関係なのよ! このユキって子と!」
「単なるウエイトレスと客の関係だって! ほら、書いてあるじゃん、もっと知りたいって。これ、逆に今は知らないっていう証拠でしょ?」
「ま、まぁ……その通りだけど──」
「喫茶店ていう接点がなくなる訳だし、物理的に半年以上会いようがない訳だから、これっきり会う事ないって。大学生になってたくさん遊んでるうちに、俺みたいなおっさんの事なんてすぐ忘れちゃうって」
「……私は違ったもん……」
「美子は特別でしょ?」
「……え?」
「だって、運命の人っていつも言ってたじゃん。それは俺にとっても同じ筈だから」
「……ホント?」
「だから一緒になれたんじゃん! 運命でもなければ美子と一緒になれる筈ないじゃん!」
「……何か凄い強引な気がするけど……信じてあげる♡」
「それにしても……この物語って俺の保険会社での奮闘記だった様な……」
「ん? 何言ってるの? 私が知ってるお兄ちゃんは女性関係中心に回ってたじゃん、ドロドロしまくりだったし」
「うぅぅ……主人公が誰だか分からなくなってるし……最後の方なんて全く仕事の話すらなくなったし……」
「お姉ちゃんが登場してからおかしくなっていったね。流石、お姉ちゃん!」
「うぅぅ……美子が最後ちゃっかりオイシイ所持ってってるし……俺、傍から見れば倫理無視したクズ男になってるし……」
「事実だからしょうがないじゃん」
「うぅぅ……その通りなんだけど……物語的にせめて美幸と一緒になるくらいがキレイだったよな~って……」
「お姉ちゃん死んじゃったんだから、しょうがないじゃん。それに、生きてたらもっとドロドロして人間のクズになってたと思うよ?」
「……何で?」
「もし生きてたら、高校生の私や幸子と関係持って……それこそ、ねぇ~……」
「……俺、そこまで鬼畜じゃないって……」
「お姉ちゃんだったらそこまでしたと思うよ~。伊織さんやあすかさんは強烈だけど、3対1なら勝算アリって♡」
「……意味分からん……そんな事になる筈──」
「前にも言ったけど、私も幸子も初めての相手は──」
「それ以上は言わないで! い、いくら何でも、それ、冗談でしょ?」
「え? ホントだよ? 証拠の写メ見せよっか? え~っと、どれだったかな~……」
「い、いや……それ見たら絶対ダメなヤツな気するから……」
「www あ……お姉ちゃんと伊織さんの写メだ……懐かしいな~」
「──! ちょ、ちょっと見せて。…………」
「……伊織さん、キレイだったね……お姉ちゃんに負けないくらい……」
「2人共……ね……」
「……お姉ちゃん、友達家に連れてきたのは伊織さんだけだったんだよ……唯一無二の親友でお姉さんだからって……」
「伊織さんも……そう言ってた。……この写真みたいに、天国で2人楽しくやってるかな……」
「きっと……ね。……あ、今度はあすかさんの写メも……」
「──! ちょ、ちょっと見せて。…………」
「……あすかさんも、キレイだったね……2人に負けないくらい……」
「ホントに……ね……。3人共……天国でモテまくってるだろうな~……俺が逝く頃にはもう誰かと一緒になってるだろうな……」
「それは絶対ないよ……ずっとお兄ちゃんの事、待ってる筈だよ」
「……じゃ、逝ってからのが大変そうだ……まさかの四角関係になるのか……」
「ん? それは違うよ?」
「──え?」
「だって、私も参加するから、五角関係だよ。あ、リサさんっていう人も多分……後は幸子ももしかしたら……」
「うぅぅ……想像しただけで頭が痛いよ……」
「いいじゃん、み~んな相手すれば。その為に、今から鍛えておかないと……ね♡」
「え? どういう事? ま、まさか──」
「今日こそ記録更──」
「死ぬって!」
「wwwwww」
──Fin
※次回、あとがき。
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