たくみの営業暴露日記 Epilogue Asuka #4 誕生日パーティー
──9月6日
──パーン!
「(ビクッ)」
「あすか、29歳の誕生日おめでとー!」
「…………」
「あ、びっくりさせてごめん。誕生日といえばクラッカーかな? と思って。今日は色々用意したよ。ケーキに手巻き寿司にステーキにエビチリ……和洋中何でもアリ、どうよ?」
「…………」
「って、ステーキ以外はスーパーで買って来たヤツだけどね。ホントは作りたかったけど、そこまでの料理の腕がなくて……ごめん」
「…………」
「よくよく考えたら、あすかの誕生日パーティー、やった事なかったよね。いっつもお互い忘れてて……あ、覚えてる? 俺は11月19日が誕生日だよ。今年で31歳か……もうおっさんだよね、俺」
「…………」
「で、あすかの誕生日プレゼントは~……じゃじゃーん! ヴィトンのバッグに財布にキーケースの3点セット! どうよ?」
「…………」
「え? ちょっと高価過ぎるって? ご、ごめん……そこらの感覚、未だよく分からなくって。あすか、ヴィトンシリーズ好きだったから、さ。後、ブランド品なら万が一貧乏になった時、換金できるじゃん?」
「…………」
「ま、遠慮なく使ってよ。元気になったら……服や靴もプレゼントするからさ」
「…………」
「え? 派手なドレスはいらない? 俺もそこまでバカじゃないって。ちゃ~んと学習してるから、心配しないで」
「…………」
「さ~て、取りあえずシャンパン飲もっか。……はいはい、また口移しね。い~よ~」
「ゴクン……」
「どう? 久しぶりのシャンパンは。ドンペリは飲みやすいでしょ」
「…………」
「え? お金遣い過ぎ? き、気のせいだって~。ま、まぁ、こういう特別な日くらいはちょっとくらい贅沢しても、ね?」
「…………」
「大丈夫、明日からは暫く贅沢は控えるから。今日くらいはパーッとやろ、パーッと」
「…………」
「え~っと、次はケーキにローソクつけて息吹いて消すヤツやろっか。一応29本ローソクあるけど流石に多すぎだから、9本でいいかな? はい、フーッ……」
「…………」
「あ、俺が消すよ。フーッフーッフー……」
「…………」
「ふぅ……意外に大変な作業だね……みんなこんな事やってるのかな? ……ま、いいや。じゃ、次は……ハッピバースデーでも歌っとく?」
「…………」
「ハッピバースデーあすか~♪ ハッピバースデーあすか~♪────」
「…………」
「……って、1人で歌うもんじゃないね……何か異様に恥ずかしいよ」
「…………」
「あ、ごめん。お腹空いてるよね、ちょっと待ってね。今から料理とってあげるから。──はい、あーん」
「(モグモグ)……」
「どう? 意外に旨いよね。最近のスーパーってバカにできないよね。下手な外食より旨いくらいだよ、ホント」
「…………」
「ご、ごめん……上手く盛り上げ出来なくて。こういう事、ホント慣れてなくて……来年はもうちょっと上手くやるからさ……許してね」
「…………」
あすかの最初で最後の誕生日パーティーは……この様に過ぎていった。あれから2ヶ月、何一つ変わる事は……なかった。
補足?
はい、今回も「何だこれ・・・」ですね。
これを読んでいる人の多くが、どよよーんとした気分にきっとなっているでしょう。
ま、詳しくは後に書くとして・・・
この時の誕生日会を再現しようとしたんですな。個人的に非常に心に響いた出来事で、九重にも有効なんじゃないかな~、心動かせるんじゃないかな~って。
・・・ふははは、何の効果もありませんでしたけどね。
コメント