第2話:つかの間の雑談
超優等生
「んー……ジュンさんって物理詳しいです? ちょっと学校の課題分からなくて」
「ん? 分かるかも知れないから見せて」
「これです、このケプラーの方式とかいうのです」
(プリントには意味不明な記号と公式が……)
「ごめん、全く分からん──って、みのりちゃんって理系だったっけ?」
「いえ、文系です。これ、一般教養なんです」
「い、一般教養って……そんなクソ真面目になんで一般教養やってるの?」
「私、一定以上の成績取らないといけないんです」
「んと、就職の為?」
「いえ、授業料免除の為です」
「──え?」
「うちの大学、成績優秀者は授業料免除の奨学金あるんです。入学時からそうだったんですが、一定以上の成績優秀者を維持するだけで100万弱、年間で浮きますから。ちょっと真面目に勉強するだけで学費免除ならやった方がいいに決まってるじゃないですか」
「学費免除なら親もさぞかし喜ぶだろうね」
「あ、それは学費払ってるものとして私が貰ってます。当たり前じゃないですかー」
「──え??」
「だって、わたくし、うちではバイトも殆どしていない設定のお嬢様ですから、授業料免除分が私の小遣いという事になってます♪」
「……ま、まぁ、動機はどうであれ、学業専念する大学生が中々いない中、立派だね」
「えぇ、皆さんおバカで助かりますw 競争相手いないのでかなり効率の良いバイト出来ていますから♪」
──お金を餌にするだけで異様に学力があがり、超優等生になっているみのりちゃんでした。
資格取得マニア
「ねぇねぇ、ジュンさん。今から資格取るなら宅建か行政書士どっちがいいと思います?」
「……全く分野違うじゃん。将来何したいかによるかなぁ。不動産とか興味あるの?」
「いえ、全然♪ ただ、持ってたら何かの役に立つかなーって。色々資格持ってますよー、私♪」
「TOEFLが800超だったよね。後何あるの?」
「簿記2級にー、秘書検定です♪」
「んー、どこかの企業の秘書でもしたいの? だったら生花とか着物、お茶もアリかなぁ」
「あ、別に興味ありません♪」
「……じゃ、なんで資格とってるのさ?」
「んー、暇つぶしとー、褒められるからです♪」
「──は?」
「こーんな若い子が勉強して資格とってたら、思わず褒めたくなりません? 男の人って。 多くの人、イイコイイコしてくれるんです。ま、要するにモテる為の手段の一つですね。頑張ってる私に援助してくれる人もいますし♪」
「ぅわ……小悪魔というかブラックというか……恐ろしい……」
「日々研究と努力です。だ・か・ら、わたしはモテるんです^ ^」
──理由はともあれ、結果的に理想的な優秀な大学生をしているみのりちゃんでした。
将来設計
「はぁぁ~~──……」
「ん? どうしたん?? 深い溜息なんかついちゃって」
「いえ、私って学生の割に稼いでいる方じゃないですかー」
「ま、時給換算したら全国上位だろうね、確実に」
「それなりに稼いでいる筈なのに、お金が全く貯まらないんです。どうしてかなって……」
「……どう考えても散財し過ぎだからね。いっその事、何か積み立てでもしたら?」
「はい、月5万くらい本気でやろうかなーって」
「お、凄いじゃん。仮に5万を20年やったらゼロ金利でも1200万だね」
「──?! そんなになります?」
「仮にこの商品だったら、こうなるね」
「──! こ、これは……将来子供を海外留学させて、ついでに私も世界一周くらいしてもまだ余りそうじゃないですか!」
「今から始めると……満了時まだ35歳か。いいねぇ、若いって」
「……やる! 積み立てやります!! 正直5万くらいだったら1日働けばどうにかなりますし、私みたいな人は強制的に何かとられないと貯められそうにないですし」
「ほほぉ、その日暮らしの代名詞、みのりちゃんが一体どういう風の吹き回しで?」
「わたくし、もう二十歳になるんです。 もう若くないですからね」
「まぁ……十分まだ若いと思うけど、今から金融に関心持つ事はいい事だよ。偉いねぇ、感心するよ」
「えへへ♪ あ、実はこないだ簿記2級の資格、合格しましたー!」
「おぉ、おめでとー。凄い凄い!」
「えへへへ♪」
──褒められ大好きみのりちゃん、上手く誘導すれば真人間になる日も近い……のか??
整形
「そうそう、確か、こないだ娘さん、二重の整形したんですよね」
「ん? よく覚えてたねぇ。先週してきたよ」
「で、どうでした? やっぱり変わりました?」(興味津々な笑顔)
「ま、まぁちょっと腫残ってるけど、二重になったよ」
「わー、いいなーーー! 私も整形したーーい!!」
「……どこを整形するのさ? 見た所、いじる場所なさそうじゃん」
「えー、いっぱいありますよー。目の下ちょっといじって泣き目にしてもいいですし、目尻の所いじって将来シワでないようにしたいですしー」
「整形は……特に抵抗ないんだ。健康な身体にメスいれるのって嫌じゃないの?」
「何とも思いませんよ。今よりさらに美人になったら、よりエグゼクティブに、うふふ♪」
「……いきなり変わると整形したってバレて嫌じゃないの?」
「ん? 何で嫌なんです? 整形したよーって自慢するだけです。髪形変えるのと意味合い同じですってー」
「そ、そういうものなの?」
「そういうものですよ。って、素材があってこそだとは思いますけどね♪」
──今の若者は整形はファッション同様とは……これ、ホント?
GW初日の午前中だけで……
「ふぅ、てっきり今日はおしゃべりDayになると思ってたけど、意外にバタバタしてるね。それでも色々しゃべってる気するけど」
「……一応、平日ですよね、今日は。今までの平日の一日の稼ぎを既に超えてますね……」
「久しぶりだから、かなぁ? それとも意外に午前中需要がある??」
「ちょっと分からないです。 ただ、午後は暇じゃないで──」
「これ、一応予定表。仮に皆来たらちょっとしたパニックだね……」
「……3時から5時まで10人以上ですか……それまではまだ時間余裕あり──」
「今から5分後、予定入ってるね。ここから5分休憩の分刻みのスケジュールかも……」
「え~~、お昼ご飯は~~?」
「13時15分から15分、時間空きそうだから、ここかな?」
「うぅぅ、もう少しまったりしたいのに~……」
「俺も、もう少しぼ~っとしたいけど、今日はヤケに反応が良くって、何故かアポ成約率が100%だね。 ま、3日で15万だったよね。今日で半分終わればラク出来るじゃん。ガンバロー!」
「そうですね、初日からこれだけ稼げたらラッキーですよね。えぇ、わたくし頑張りますとも^ ^」
──まるで売れっ子アイドルの如き多忙なスケジュールをこなすみのりちゃん。 が、まだこれが序の口である事をまだ知らない2人であった。
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