保険業界から一番クレームを受けた男

保険業界から一番クレームを受けた男 プロローグ ~can you celebrate?~

プロローグ ~can you celebrate?~保険業界から一番クレームを受けた男
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保険業界から一番クレームを受けた男 プロローグ ~can you celebrate?~

※~最後の210日~最終話の続きみたいなものです。

 加藤の物語は3月25日の退社をもって終わる筈だった。が──神様が、運命がそれを許してくれなかった。

(……さてと……家に戻ったら部屋の大掃除でもするか……せめて来た時と同じ状態にしないと……家具類はどうしようかな……北さんいるかな? いらないか……じゃ、買い取り業者にお願いしなくちゃな)

 このような事を考えながら、家のドアを開けた瞬間、おかえりという九重の声が聞こえた──気がした。

(ハハッ……また……か。絶対ある筈ないのに……いい加減学べよ、俺……)

 と、いつもの幻聴だと思い苦笑いしながらしゃがんで靴を脱いでいると、今度はリビングの方からパタパタというスリッパ音が近づいて来て、加藤の目の前で止まる。

(あ、あれ? 幻聴じゃない……? ま、まさか……)

 信じられない様子でゆっくり見上げると……満面の笑みを浮かべた九重の姿が目に飛び込んできた。そして……決して忘れる事のできない、非常に長い1日が始まった。

「あ、あすか……な、なんで……?」

「だって、今日たくみ君、会社最後の日でしょ? 送別会してあげなくちゃと思ってね」

「お、お前……俺と絶交したんじゃなかったっけ?」

「何言ってるの? そんな事する筈ないじゃない」

「い、いや……現にお前、俺の事ボロクソ言っておまけに強烈なビンタ食らわせて出ていったじゃん……」

「あ~、あれ? あんなの単なる喧嘩でしょ? よくある話じゃん」

「だ、だったら……何でもっと早く戻ってこなかったんだよ……」

「ん~、ちょっとしたドッキリ? いや、違うか……喧嘩して雨降って地固まるってヤツ、やってみたかったから……かな?」

「……百歩譲ってそれはそれでいいとして……俺の記憶が確かなら……お前、今日結婚式じゃ……また延期?」

「ん? してきたよ? 2次会、3次会は欠席してここに来たけどね」

「お、お前……バカ? どこの世界に結婚式当日の夜に他の男の家に来るヤツがいるんだよ! 早く戻──」

「────♡」

「ちょ! 何やってるんだよ……」

「can you celebrate? だよ」

「……は?」

「私、結婚式の夜だけはたくみ君と一晩過ごそうって前から決めてたから」

「……は?」

「いいから! このままするわよ! 今夜は寝かさないからね!」

「ちょ、ちょっと────」

 

──1時間後

Can you celebrate?

Can you kiss me tonight?

We will love long long time.

永遠ていう 言葉なんて知らなかったよね.

「──ね? 憧れるの分かるでしょ?」

「え、えっと……何が?」

「どう考えても私達みたいな関係の人の歌でしょ。結婚式の夜に結婚を複雑な心境で祝ってくれる親友に対し、結婚しても関係は変わらないよって一晩中キスして永遠を誓いあうっていう……ね♡」

「な、何……その狂った解釈は……」

「私、結婚相手がいるのに堂々と不倫宣言の曲歌ってる安室ちゃんは何て大胆でカッコいいんだろうってずっとリスペクトしてたんだ~。私も安室ちゃんみたいに生きたいって♡」

「い、いや……そんな風に思ってるの、多分日本中でお前だけだって……ま、いいや。百歩譲ってその解釈が正解だとして、どこにリスペクトする要素あるのさ。やってる事クズじゃん……」

「だから凄いんじゃない。酷い事をしてる、非難されるって分かっててそれでもやってるんだから。その後の人生が滅茶苦茶になっても構わないから、その親友と一緒にいたんだよ?」

「……自覚あってもやってる事はダメダメじゃん……」

「たくみ君、安室ちゃんに感謝しなさいよ~。この歌があったからこそ、私は今日ここに来たんだから」

「い、意味分からん……」

「────♡」

「ちょ! 今2回したばっかじゃん! もう無理だって!」

「とか言いながら、まだここは元気じゃん。今日は限界に挑戦しよ! ──♡」

「ちょ、ちょっと────」

 

──2時間後

「(ハァハァ……)」(真っ白に燃え尽きた男の図)

「(ハァハァ……)やれば……出来るじゃん……新記録、達成だね♡」

「(ハァハァ……)」(半分意識が飛んでいる男の図)

「(ハァハァ……)ただ……どうせだったら……後1回してラッキーセブンに……ね♡」

「──?!」(何を言いだすんだ、このバカ女が……と思いつつ、疲れ果てて言葉が出てこない男の図)

「♡──」

「!!!──ッ」(拒否しようにも身体が思う様に動かず、されるがままの男の図)

 と、意味が分からずただひたすら九重に犯され続ける加藤であった。

 

──ピロートーク

「──くぅ~、ひと運動した後のビールは沁みるなー♪」

「うぅぅ……未だに何でこんな事になってるのか全く理解できない……気が付いたら深夜だし……」

「言ったでしょ? Can you celebrate? だよって。……これで未来に生きるしかなくなったでしょ?」

「……は?」

「だって、ねぇ……しないであれだけしたらねぇ……♡」

「──?!」

「万が一の時は……責任取って貰わないと、ね……♡」

「──?!」

「名前……考えないと、ね……♡」

「え、えっと……これはドッキリじゃなくて……本気?」

「冗談でここまでやる筈ないでしょ! ……何よ、嫌なの?」

「い、いや……そんな事、ないけど……」

「でしょ♡ これで……本当に2人きりになったね。これからもどうぞよろしくね、たくみ君♡」

「……うぅぅ……Can you celebrate? ってこんな恐ろしい歌だったんだ……映画の卒業真っ青の内容じゃん……もうどこか逃避行するしかないじゃん……」

「……死ぬよりはマシでしょ?」

「──?! な、何を……言って……」

「それくらい分からない私だと思う? どうせ、明日か明後日にココ出て行って、そのまま静かに死のうなんて考えてたんでしょ~?」

「ど、どうして……?」

「ドンマイ♡ 失恋の一つや二つくらいでそんな事考えちゃダメだって~」

「失……恋……?」

「またすぐに見つかるって~。私もできる限り応援してあげるから、ね♡」

「え、えっと……何か違う様な……」

「失恋って事にしておこ、ね♪ それに、私がいるんだから、それで十分でしょ?」

「な、何か凄い強引な気もするけど……何か一気にラクになった気がするよ……あ、ありがと、あすか……」

「どう致しまして♪」

「それはそうと、俺とお前の関係って、これでどうなったの? まさかの婚約者?」

「www 何言ってるの? 私達は親友同士でしょ?」

「い、いや、それはそうだけど、こうなった以上責任は──」

「たくみ君は相変わらず旧人類だな~。これくらいの事で結婚がダメになる様なら、世の中誰も結婚生活送れないって」

「い、いや……全然これくらいですまされない事してる様な……」

「結婚式の夜は親友と過ごすのが今の最先端だから。それに、新婚旅行も親友といくのが定説になりつつあるしね」

「い、いや……百歩譲って結婚式の夜の話はいいとして、新婚旅行の話は絶対嘘だろ……全く聞いた事ないし」

「結婚したら中々親友と旅行にいく事できなくなるでしょ? 卒業旅行と同じ発想だよ」

「な、なるほど……確かに結婚した相手とならいつだって旅行にいける訳だから……意外にあすかの言ってる事は間違いじゃない……のか……?」

「でしょ♡ ……という事だから、早速行こっか、新婚旅行」

「──?!」

「今から出れば、富士の日の出に間に合うから!」

「──?!」

「その後、ちょちょっと世田谷の朝一でアポ取ってある会社と昼過ぎにアポとってある新宿の会社と面談して、その後はディズニーに直行だから!」

「──?!」

「次の日は大変だよ~。横浜、大阪と連続でアポ取ってるからね。その後は難波の夜を満喫するからね!」

「──?!」

「その次の日は、白浜のアドベンチャーワールドに繰り出して、夜は気合でホテル浦島へGOよ!」

「──?!」

「そして最終日は那智の滝いって、旅の疲れを癒すために榊原温泉に泊まって……フィニッシュよ!」

「な、何を言って──」

「日の出まで後5時間ちょっとしかないから、急ぐわよ!」

「お、お前……冗談だろ? 俺……もう体力残ってないって……死ぬって……」

「元々死のうとしてたんだから、これくらいどうって事ないでしょ! ほら、行くわよ!」

「ちょ、ちょっと──」

 

──大丈夫、たくみ君はこのまま終わらないから。私が……どうにかしてあげるから。

 一体どれだけ九重からこの言葉を聞いたであろう、助けられたであろう……

 失意のどん底から加藤を救ってくれたのは、またしても九重だった。この出来事がなければ、きっと加藤は歩く事をやめ、物語に終止符を打っていたであろう。が、ここで物語を終えていた方がよっぽどかマシだったのではないか、という程の出来事が今後加藤を何度も襲う事になるが……

──得たモノも非常に大きかったが、失くしたモノも非常に大きかった。

 このような……誰もが羨む様な、しかし誰もが一生経験したくない様な加藤の新たな波乱万丈の物語の最初の1ページ目の出来事がコレであった。

補足?

実はこれ、~最後の210日~のラストにする予定だった話だったりします。

が、今回読んで頂いたら分かる通り、あまりにぶっ飛び過ぎる話ですので、、、敢えて新物語のオープニングに持ってきました。

ちなみに、こんな漫画や小説でもやらない様な話が・・・紛れもないリアルだったりします。えぇ、結婚式当日に二次会以降をすっぽかして自分の所に来ましたよ、can you celebrate?と訳分からん事いって・・・それどころか、その後数日にかけて新婚旅行(???)にいきましたよ、何故か自分と・・・

この出来事だけは、「あ~、よくある話だよね~」と言う人は皆無でしょう・・・

一応補足をすると、畑口の件で失意のどん底にいる自分を助ける為にどんな事より最優先で動いてくれた・・・という話になるの・・・かな? 当時は全く意味不明でしたが、結果的に「さて、これからどうしようか」と自然となっていましたから。。

  • いつ誤解が解けたのか?(畑口を自らの野望の為に売ったという誤解の話)
  • 何故加藤が失意のどん底にいる事を九重が知っているのか?

等の部分に関しては、ま、おいおいと・・・

こうご期待をば。

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